あなたに島はありますか?

あなたの島はどこでしょう? たとえ物理的に離れていても、都会の一部であっても、山間の田舎にあっても、大事に想う場所があることは幸せなことです。

先日発行した『季刊リトケイ』06号では、ぐっさんの愛称で親しまれている芸人の山口智充さんにインタビューをさせていただきました。

離島でぐっさん?と思われる方のために、実はぐっさんはご両親が離島のご出身。お父さんが五島列島、お母さんが奄美大島(瀬戸内町)という島2世&島ハーフ。さらに番組やツアーで日本全国の島々をめぐられているというので、それならば!とご登場を熱望したところ、想い叶って熱いお話を伺うことができました。

『季刊リトケイ』には、これまで篠原ともえさんや元ちとせさんなどの著名人にご登場いただいておりますが、篠原ともえさんは東京の離島・青ヶ島の3世、元ちとせさんはぐっさんと同じく奄美大島ご出身と、島にご縁のある方は意外と多くいらっしゃいます。

元ちとせさんは奄美大島で生まれ育った「出身者」、ぐっさんのようにご両親が島出身の場合は「2 世」、篠原ともえさんのようにおばあちゃんが島出身だったら「3世」と表現しているのですが、この「2世」「3世」の表現も、私の感覚では島界に入ってからよく耳にするようになったように思います。

■簡単に説明できない自分のルーツを感じる

島2世であるぐっさんにとって、島は「なかなか帰れない場所」だったそうですが『季刊リトケイ』のインタビューでは、ある時、島の防波堤で「ぐわああああああああっ」という感覚になったというエピソードを語ってくださいました。「ぐわああ......」というのは、ぐっさん曰く「簡単に説明できない自分のルーツを感じた瞬間」ということ。縁(ゆかり)のある島の滞在中に、ご自身のDNAに組み込まれた何かに反応されたご経験があるそうです。

『季刊リトケイ』創刊号でお話を伺った篠原ともえさんは、ものづくりのインスピレーションを島で目にするものからも受けていると教えてくれました。そう言われてみると、篠原ともえさんが持っていらっしゃる独特の鮮やかさには島の色彩があったのか。お話を伺いながら、その土地で生まれ育ってなくても、その土地の美しさや鮮やかさがしっかりDNAに組み込まれているのかなと感じていました。

「ルーツ」とは不思議なもので、離島経済新聞社の仕事で「島」に出会ってからというもの、2世や3世を含め世の中には島に縁のある方が意外なほど多いことに日々気付かされています。

ぐっさんが「この島で生まれ育ったおふくろが大阪に渡り・・・」と語ってくださったように、意外なほどたくさんの方が、それぞれルーツを知って「ぐわああああああああっ」となる。最近は、その瞬間を経て「何か今の自分にできることをしたい」と、細くなりかけていた糸を強く結びなおすような動きが全国各地で起っているようにも感じています。

■大事な場所(=島)のある幸せ

元ちとせさんはインタビューで、「ひとりじゃなくて生きている人たち全員を愛しているようなところが奄美の魅力だと思います」(『季刊リトケイ04号』より)という島への想いとともに、奄美でいう「島」は「アイランド」の意味ではなく「縄張り」の意味であることを教えてくれました。

「縄張り」とは「自分の場所」であり、自分にとって「大事な場所」。

これは著名人にも島にも限らないことですが、私は「ルーツ」を語る人がとても好きです。理由はぐっさんの「ぐわあああああああ」に通ずる、簡単な言葉では表現できない範囲の感情を含め、人には「大事な場所」がはっきりとあることが「人にとっての幸せ」のひとつだと思うからで、それをはっきり好きだと言える人の素直な感情の在り方が好きなのかなと感じています。

ちなみに、島や田舎に対して「島にいるときはその場所がキライだった」という前置きを置かれる方も少なくありません。でも、それはそれでたとえば思春期に島(または田舎)の物理的なインフラ不足と、ヒト・モノ・コトの絶対的な不足状況下にいる自分と、テレビのなかで輝いて見える都会的ライフスタイルとの差を理解できなかっただけで、たとえば島を出たときにふるさとの魅力や、その土地への感謝に気付く・・・という流れを想定すると、その気持ち分かる!と、むしろ親近感を覚えたりします。(現に私も田舎にいるときはなかなか環境を肯定できなかったので)

あまり島、島、島と言うと島に縁のない人は「?」かもしれません。でも、たとえばルーツの話でも、元ちとせさんが教えてくれたよう「島」を「縄張り」と捉えて考えると、日本全国はもとより世界中に当てはめて考えることができる。

あなたの島はどこでしょう?

たとえ物理的に離れていても、都会の一部であっても、山間の田舎にあっても、大事に想う場所があることは幸せなことです。

(※2013年9月10日の「離島経済新聞」より転載しました)

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