本選挙まで50日を切り、さらなる盛り上がりを見せるアメリカ大統領選挙。米FOXニュースが15日に発表した世論調査によると、リードを保っていた民主党候補ヒラリー・クリントンが共和党候補ドナルド・トランプに全米支持率で逆転された。支持率はクリントン氏45%、トランプ氏46%と、トランプ氏が1ポイント上回っている。ほかの調査によると、選挙戦の行方を左右するとされるフロリダ州やオハイオ州でもトランプ氏がクリントン氏を抜き、ほかの激戦州でも追い上げを見せている。
また、ネット上ではお金をばらまきながら空を飛ぶ、トランプ氏のラジコンが注目を集めるなど今後の選挙戦、そして両候補の支持者の動きも見逃せない。
9月12日(月)グランドハイアット東京にて行われた「U.S. Election 2016 Roadshow Tokyo:大統領選で変わる世界」で出会った支持者の動きを取り上げたい。現在20代後半の彼(名前・年齢公開不可)は2004年にアメリカへ留学し、その頃に行われたアメリカ大統領選挙の運動に携わった。現地の選挙運動の話を聞いていると、日本では想像もできないような話だったので記事にまとめた。(以下の内容は個人の体験談)
きっかけ
2004年にアメリカ・カリフォルニア州に留学をした。現地に到着し周りを見渡してみると、まさに選挙一色。当時(2004年11月)のアメリカでは、共和党のジョージ・W・ブッシュの再選をかけた大統領選挙が行われていた。熱狂的な選挙運動を見た彼は、純粋におもしろうそうだったから参加したという。
本気と本気のぶつかり合い
共和党陣営に参加した彼の周りには、日本人が一人もいなかった。はじめはそんなコミュニティに入ることを躊躇したが、事務所に一歩足を踏み入れると、国籍、性別に関係なく「共和党の仲間」として快く受け入れてくれたそうだ。任された仕事は雑務ばかり。大量のコピーやビラ配り、電話、コーヒー入れなど、とにかく激務をこなした。仕事は交代制で10時間弱働いて1,2時間の仮眠をとり、また十時間弱働く。激務による疲労や世論調査で左右される陣営の心情が場を張り詰めた空気にさせたという。
みなが「共和党の勝利」という一つの目標に向かって尽力し、「絶対勝つ」という強い思いを胸に選挙戦を闘い抜いた。そんな状況下ではやはり対立も避けられない。1,2時間の仮眠時間は、仮眠に使う者はほとんど居らず、時にアメリカ政治について議論を交わし、時に選挙戦を勝つためには、どうすれば良いかアイデアを持ち寄って策を練ったという。強く対立していた者同士でも、1.2時間後には当然のように「同士」として働く彼ら彼女らの姿を見て違和感を抱いたという。
当然現れる変質者!?
選挙期間中は良くも悪くもみなが信条を持って活動している。対立陣営にスパイを送り込んだり、運動を妨害する者も現れるそうだ。そんな中、最も多いのは差し入れを持ってくる人だ。かなりの体力を使う選挙運動なので、サブウェイやスターバックス、マクドナルドなど大量の食糧を詰め込んで激励に来てくれる。そして一言添えて帰るそうだ。
「仕事があるから協力できない。俺の分まで頑張ってくれ!」
ほかにもこんなこともある。アメリカ大統領選挙の際に町中に出回る、缶バッジをご存じだろうか。選挙期間、支持者の中にはその政党の缶バッジを身に着けて街中を歩きまわる。ある日、ブッシュの缶バッジを胸につけてレストランに入り、いつものように注文をした。食事を終えてお会計をする際に、店長が表に出てきて「少しでも力になりたい」ということでその日の食事をご馳走してくれたそうだ。さらに、共和党のステッカーを貼り付けた車で信号待ちをしていると、横からクラクションを鳴らす車が現れた。そちらを振り向いてみると、窓を開け、ニッコリ笑いながら親指を立てる男性だったという。そんな彼から一言。
「Good luck!」
フラッグを持ちながら歩く子ども、お茶を入れに事務所を訪れる老夫婦。アメリカでは老若男女問わず皆が選挙運動に臨んでいる。ただの通りすがりの人も自分と同じ支持だったら今日から仲間になる、そんな一体感を強く感じたという。
まるで"昼ドラ"の世界
人員メンバーの男女比率は、大きな差はないという。男女が同じ屋根の下で活動をしていると、やはり避けられないのが「恋愛」。彼も選挙期間中にたくさん恋に落ち、振られての繰り返しだったという。恋愛を理由に人間関係でもめることもあり、まさにそこには昼ドラのドロドロした関係があるそうだ。
いくつもの壁を乗り越えたからこそ感じ取れる喜び
どんな過程で選挙期間を過ごそうとも、大事なのは投票日当日。陣営メンバーと一緒に事務所で固唾をのんでテレビを観た。結果は共和党ジョージ・W・ブッシュの勝利。当選確定が発表されると、みなが歓喜の声を上げて肩を組み合った。僕たちの選挙運動はお祭り騒ぎで幕を閉じた、そう彼は語った。