初代「フェアレディZ」は最良のクラシックカーだ

価格は欧州製小型スポーツカーと同等で、性能はポルシェ911などその倍もする高級車に挑戦できる性能を備えていたため、"Z"はすぐに人気を博した。

世界が輝かしい宇宙開発に沸いた1960年代後半、日本の自動車メーカーはたくさんの創造的で前衛的なスポーツカーを生み出した。トヨタ2000GT」、マツダコスモスポーツ」、日産スカイライン GT-R」などがその代表だ。しかしこれらの革新的で洗練されたクルマは、本気でアメリカ市場を見据えて開発されたわけではなかった。

その理由の1つは、これらのクルマが日本国内の人々に向けて、その優れた技術やデザインを披露して讃えることを目的とした少量生産車だったこと。そしてまた、自動車に対して、性能・信頼・価格の3つの要素が求められたアメリカにおいて、急成長を遂げた日本の自動車メーカーの製品には、この3つの要素が決定的に欠けていたことが挙げられる。

しかし、ダットサン240Z」(日本名:フェアレディZ)の登場ですべては変わった。

価格はアルファ ロメオMGトライアンフなどの欧州製小型スポーツカーと同等で、しかもポルシェ「911」ジャガーEタイプ」などその倍もする高級スポーツカーに挑戦できる性能を備えていたため、"Z"はすぐに人気を博した。

それ以前も、ダットサンには1600と2000のロードスター、そして安価で小さな1200のセダンとファストバックがあったが、それらの直接のライバル達はすでに名声を確立していた。しかし、1970年代前半のライバルはイギリス、イタリアのメーカーであり、その時期にはちょうど「古めかしい技術」と「粗悪なつくり」の重なり合った部分が最も大きくなった瞬間だったため、ダットサンが圧勝したのだ。

Hirokazu Kusakabe

「当時、初めて手の届く価格で販売された素晴らしいスポーツカーの1つだった」と、T.P. Bakke氏は言う(彼女によれば"T.P."とはトップ・プライオリティ「最優先」という意味らしい)。同氏は1995年からヒューストンで"Zカー"専門のチューニング&レストア・ショップ「Awesome Z」を経営しており、日産車の整備実績は30年以上になる。

「Zの魅力は、扱いやすさ、コーナリング性能、そして何よりほれぼれする見た目よ」とBakke氏は語っている。「1970年代に3,700ドル(約45万円)で売り出したのだから、価格では誰も勝てないわ」。

これらの要素に加え、レースで性能を証明した240Zは大ヒットを記録した。最初の3年間で約16万台が北米で販売されたが、これは同車の輸出台数の97%近くを占め、日産の予想をはるかに上回る人気だった。

残念ながら、これら第1世代の240Zの多くは放置され、錆び付き、ひどいことにシボレーのスモールブロック・エンジンに積み替えられたりした。そして最後は廃車となってスクラップにされるか、乱暴な運転で木に衝突するような運命を辿った。

だが幸いにも、現存する車両はきちんと手入れされていたものが多く、ついに正当な注目を集めるようになってきた。同時代にドイツやイギリス、イタリアで製造されたライバル車のように、価値が上がってきているのだ。とはいえ、240Zのサイズや排気量と同様、その値上がり幅も10分の7程度に留まっている。

クラシックカー査定の権威であるHagerty社によれば、新車同様の「コンディション#1」とされる1970~1973年型240Zは、この5年間で50%以上も価値が上がり、価格は約3万3,000ドル(約370万円)から5万5,000ドル(約620万円)近くにまで上昇しているという。

しかし、それより状態の劣る「コンディション#2」と「コンディショ#3」の車両は、ポルシェ 911やジャガー Eタイプのように法外な高騰を見せることはなく、はるかに手頃な価格で落ち着いている。コンディション#2のクルマは2万4,000ドル(約270万円)から3万4,000ドル(約380万円)へ、コンディション#3は1万5,400ドル(約170万円)から1万7,000ドル(約190万円)へとそれぞれ上がっている状況だ。

Zは今でも、手の届く値段で買える最良の(クラシック)スポーツカーである。ただし、非常に運転の上手いドライバーが、平均より少し上のコンディションのクルマを、できるだけ天気の良い時に走らせる、という場合に限る。部品やサポートはすぐに手配できるから、いつか好きなようにレストアするのもいいだろう。

注:この記事は、『The Drive』に掲載されたBrett Berk記者による記事を転載したもの。

翻訳:日本映像翻訳アカデミー

(2016年3月20日 Autoblog日本版「今、買うべきクラシックカーは「フェアレディZ」だ!」より転載)

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