買ったばかりの新車でも、完全に新しいとは限らない

新車を買うのはワクワクするものだ。多くの人は、工場から出たままのクルマを手に入れられると期待するだろうが、実はそうとは限らない。

新車を買うのはワクワクするものだ。多くの人は、工場から出たままのクルマを手に入れられると期待するだろうが、実はそうとは限らない。工場を出た新車は、輸送時や販売店の敷地内でダメージを受ける可能性があり、しかもそれを修理してから販売しても、販売店は多くの場合、顧客にそのことを話す必要がないのだ。

自動車メーカーは、新車を購入する顧客の元にクルマが完璧な状態で届くよう、最善の努力をする。しかし、顧客が新車を手にするまでの過程には、クルマがダメージを受ける様々な可能性がある。新車は通常、輸送用のトレーラーに積まれて次の目的地へと運ばれる。国内で販売されるのであれば、陸路での輸送のみで済むかもしれない。しかし、海を越えて国外で売られるのなら、コンテナに積まれるか、自動車運搬船で輸送されることになる。

目的地の港に到着した後は、港内での移動後にトラックに積まれ、各地のディーラーへと向かう。しかし、積み下ろし時や第三者による過失など、全ての過程でダメージを受ける可能性がある。受けたダメージが小さい場合は、港に到着した後、工場に入って修理され、その後ディーラーへと輸送される。

新車がディーラーに到着すると、今度はディーラーが店舗敷地内で新車を移動する際や、他のクルマを動かすときに接触してダメージを受けることがある。その場合には通常、修理を施した上で、そのまま新車として販売される。一定の基準を超えない範囲内で修理されたのであれば、ディーラーはその修理について公表する義務がないからだ。

米国のほとんどの州では、新車に付いてしまったキズやへこみの修繕費用が、メーカー希望小売価格の3~6%を超えた場合には、購入者へ修繕した旨を告知する必要があるという基準を設けている。先日、筆者はノースカロライナ州でスバル「WRX」を購入した際、告知義務に関する州法を調べてみた。同州の州法では、ディーラーに対し購入者への告知義務が発生するのは、新車が受けたダメージにメーカー希望小売価格の5%を超える修繕費がかかった場合とされている。

ただし、ガラスやタイヤ、バンパーを新品の純正品に交換した場合は、これに含まれない(告知する義務がない)。つまり、私が買ったメーカー希望小売価格28,138ドル(約340万円)のWRXは、最大で1,400ドル(約17万円)の修繕費をかけて補修されていた可能性もあり、もしそうだったとしてもディーラーはそれを告知する義務はないのだ。

私のWRXは素晴らしい状態であり、修理や補修の痕跡も見当たらなかったが、1,400ドルも使えばかなり大掛かりな修理ができるし、詳しい検査でもしない限り見分けることは難しいだろう。ウィンドウのガラスを基準の対象外としたのは納得できる。輸送の最中に跳ね石などが当たり修理が必要になる可能性は大いに有り得るからだ。だが、タイヤまで除外されていることには不安を感じざるをえない。ディーラーの従業員が新車を派手に乗り回してタイヤをすり減らしたとしても、交換さえすればいいと考えてしまうことだって考えられるからだ。

その点、基準となる数値を3%に設定しているカリフォルニア州は消費者に優しい州と言える。ジョージア州では、塗装の補修に関しては500ドル(約6万円)と、5%の修繕費とは分けて告知義務の基準を設定している。だが結局のところ、よほど見逃せないダメージでもない限り、ディーラーは修理歴のあるクルマも黙って他と並べて販売している場合が多い

自分の身を守るために最適な方法は、目の前の新車にキズやダメージの痕跡がないか注意深く観察し、ディーラーに修理や補修の有無をはっきりと尋ねることだ。修繕費の金額にかかわらず、購入者から聞かれた際には情報の開示を義務付けている州もある。気になる点があれば常に質問する、という姿勢は十分に有効なのだ。

翻訳:日本映像翻訳アカデミー

(2016年1月3日Autoblog日本版「買ったばかりの新車でも、完全に新しいとは限らない」より転載)

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