フォルクスワーゲンのマーティン・ヴィンターコルンCEOが排ガス不正のスキャンダルで引責辞任

フォルクスワーゲン(VW)が世界各国におけるディーゼル・エンジン車の排ガス規制を満たすため不正を行っていた問題で、非難の渦中にある同社CEOのマーティン・ヴィンターコルン氏が23日水曜、辞任を発表した。

フォルクスワーゲン(VW)が世界各国におけるディーゼル・エンジン車の排ガス規制を満たすため不正を行っていた問題で、非難の渦中にある同社CEOのマーティン・ヴィンターコルン氏が23日水曜、辞任を発表した。現時点で後任者は発表されていないが、25日には同社の取締役会が行われる予定となっている。

ヴィンターコルン氏(68)は2007年にフォルクスワーゲンのCEOに就任し、世界各国で驚異的な成長を見せたこの独自動車メーカーを率いてきた。今回、同社が数年にわたりディーゼル・エンジンの排ガス規制に関するテストで不正を行ってきたと米環境保護局(EPA)が申し立てた後、ヴィンターコルン氏は1週間と経たずに辞任を決めた。問題となっているクルマは、規制されている量の40倍以上もの排ガスを放出する可能性があるという。EPAによれば、米国でこの影響を受けるクルマは約48万2,000台としているが、VWによると、排ガス規制を不正に逃れるソフトウェアを搭載していると考えられるクルマは、世界中で少なくとも1,100万台に上ると見積もっている。

ヴィンターコルン氏は声明の中で、「私は最高経営責任者(CEO)として、当社のディーゼルエンジンで見つかった不正行為の責任を受け入れ、フォルクスワーゲン グループのCEOを辞任することを監査役会に申し出ました。これは会社の利益のために決めたことであり、私自身が不正に関与した認識はありません。フォルクスワーゲンは企業として、そして全社員が新たなスタートを必要としています。私としては、まず辞任することが新たなスタートの道を開くことだと考えています」と述べている。

ヴィンターコルン氏が辞任したのは水曜日の監査役会の後。この監査役会では、同氏は不正に関与していないということで合意が得られたという。同社は声明の中で、「取締役会としては、関与しておらずとも責任を負い、そうすることで内外へ強いメッセージを送ろうという彼の意志に多大な敬意を払います」と述べた。

フォルクスワーゲンは内部監査を行い、数日中にはさらなる"人事の決定"が行われる予定となっている。同社はまた、独ブラウンシュヴァイクの検査当局に自主的に訴状を提出し、不正行為の捜査に協力するという。

今回のヴィンターコルン氏の辞任は、現在急速に波紋を広げている同社のディーゼル排ガス規制の不正スキャンダルに対する最新の動きだ。このスキャンダルは、ウエストバージニア大学の研究者がEPAによるテストを回避するようプログラムされたソフトウェアを詳細に調べるうちに明るみに出たことがきっかけとなり、今では世界各国の当局がフォルクスワーゲンのディーゼル車を調査する事態にまで発展した。同社は73億ドル(約8,700億円)を引当金として計上し、今後の訴訟に備え、2010年に英石油大手BPの原油流出事故訴訟で弁護を担当した法律事務所を雇ったという。米国では既に180億ドル(約2兆1,500億円)の罰金の支払いに直面しているものの、現実的にはその全額を支払う命令が同社に下されることはあり得ないように思われる。

翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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