VW不正問題を受けた新たな排出ガス検査導入で、ディーゼル車の価格高騰も

フォルクスワーゲン(VW)の1,100万台に及ぶディーゼル・エンジン搭載車が、検査の時にだけ排出ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)が少なくなる不正プログラムを搭載していた問題を受け、今後は新たな規制が設けられることになりそうだ。

フォルクスワーゲン(VW)の1,100万台に及ぶディーゼル・エンジン搭載車が、検査の時にだけ排出ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)が少なくなる不正プログラムを搭載していた問題を受け、今後は新たな規制が設けられることになりそうだ。だが、欧州自動車工業会(ACEA)はこれに対し「潜在的な問題がある」との見解を示している。

世界各国の政府は、現実の路上における運転状況により近い状態を模擬した厳格な車両認証試験の導入を要望している。しかし、EUの提案は、業界や消費者にとって経済的負担が大きくなる可能性がある。試験運用の厳格化はディーゼル車製造にかかるコスト増につながり、燃料費が安く済むということでは正当化できないレベルにまで車体購入価格が高騰する可能性が出て来るのだ。ロイター通信によるとACEAは次のような声明を発表している。

「現実の路上走行に近い状態でのさらに厳格な排ガス基準値が必要であることは自動車業界も同意しており、長年その提案を呼び掛けていた。しかしながら、業界が必要な変革を計画・実行できるよう前進することが重要であり、今後の二酸化炭素(CO2)排出量目標を達成するにあたり中心的存在の一つとなるディーゼル車の役割が脅かされるようなことがあってはならない」

欧州では長きにわたりディーゼル車が推奨されて来た。ガソリン車に比べ省燃費であるため、CO2排出量が少ないことが、NOxを排出することよりも重要視されたからだ。近年の「クリーン・ディーゼル」を推進する動きでは、そのNOx排出量を低減させることも含まれていた。しかし、今回のVWによる不正問題から、そこに疑問が投げかけられたのだ。既にフランス政府はディーゼル車に対する優遇策を見直す方針を明らかにしている。欧州では改定された試験が来年早々に実施され、2017年末までには採用される見通しである。だが、業界がディーゼル車の製造を削減するとなれば、新基準の設定にはさらなる議論が求められることになるだろう。

より厳しい検査をパスするため、今後発売されるディーゼル車の新車価格は値上がりが予想されるが、一方で中古のディーゼル車は値落ちしているようだ。米国ではVW社製ディーゼル車のオークション価格がすでに13%下落している。イギリスでも価格は下がっているが、アメリカほどではないようである。

翻訳:日本映像翻訳アカデミー

(2015年10月22日「Autoblog日本版」より転載)

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