全長16mの滝をアウディ R8にプロジェクション・マッピング

日本を代表する"ウルトラ・テクノロジスト集団"「チームラボ」とアウディ ジャパンがコラボレート。アウディのスーパー・スポーツカー「R8」を岩に見立て、シミュレーションによる滝をプロジェクション・マッピングした作品「The Waterfall on Audi R8」など、チームラボの作品を展示する『teamlab exhibit at Audi Forum Tokyo』が、東京都渋谷区神宮前のAudi Forum Tokyoで1月5日まで開催されている。

日本を代表する"ウルトラ・テクノロジスト集団"「チームラボ」とアウディ ジャパンがコラボレート。アウディのスーパー・スポーツカー「R8」を岩に見立て、シミュレーションによる滝をプロジェクション・マッピングした作品「The Waterfall on Audi R8」など、チームラボの作品を展示する『teamlab exhibit at Audi Forum Tokyo』が、東京都渋谷区神宮前のAudi Forum Tokyoで1月5日まで開催されている。

国内外の美術展において、デジタルでインタラクティブな作品を発表し注目を集めているチームラボとは、「プログラマ・エンジニア(プログラマ、UI エンジニア、DB エンジニア、ネットワークエンジニア、ロボット エンジニア、コンピュータビジョンエンジニア、ソフトウェアアーキテクト)、数学者、建築家、Web デザイ ナー、グラフィックデザイナー、CG アニメーター、絵師、編集者など、情報社会のさまざまなものづくりのスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団」だそうだ。彼らの活動に、"Vorsprung Durch Tecnik"(技術による先進)をブランドスローガンに掲げるアウディが共感したことから、今回の作品とイベントが実現した。

高さ16mの空間に、フルハイビジョンの7倍という解像度で表現された「The Waterfall on Audi R8」は、実車のアウディ R8を"岩"に見立て、その上から水の"物理的な運動シミュレーション"によって構築された滝が流れ落ちるというもの。この滝は水を「無限の粒子の連続体」と捉え、その粒子間における相互作用を計算して描かれている。それをアウディ R8のボディに13台のプロジェクターを使って立体的に映し出しているというわけだ。

コンピューターによって計算され、描かれた、16mの頭上から落ちて来る「水の粒子の連続体」としての滝は、あたかも実体であるR8のボディに激しく当たり、弾けて、滝壺で渦を巻き、我々の眼前に流れ落ちていく、ように見える。これがどういった仕組みになっているのかと言えば、まずコンピューターの中でアウディ R8を実車と寸分違わず3次元でモデリングし、そこに流れ落ちて当たり弾ける水の粒子の動きをシミュレートして記録、そして展示場では実車のR8にその映像を照射して作り出している。

チームラボの方のお話によれば「プロジェクターの画面は(縦横比が)4:3なので、コンピューターの中でモデリングしたR8に4:3のスクリーンを(結果的に13枚)ぺたぺたと貼り込んで、削ったり盛ったりしながら」この滝を完成させたという。その総データ容量はなんと20テラ・バイトにも及ぶとか。「普通にネットで買えるようなPCを何台も並列につないで数週間掛けて計算」させ、それを書き出した映像が、我々の目で見えるものとなる。「実際には見えない部分も(大部分がそうらしい)ちゃんと計算してシミュレートされている」そうである。

ただ、それだけでは単なる「水の粒子の動き」の物理的なシミュレーションに過ぎない。チームラボの"作品"では、全体の水の粒子の中からランダムに選ばれた0.1%の粒子が「線を描いて」いる。これは円山応挙の川や、葛飾北斎の雨など、我々日本の先人達が水の動きを「線」で表現していることに着目し、「水に対する日本人独自の捉え方(空間認識の論理構造)」に迫ったものなのだそうだ。日本では今でもマンガの中などで当たり前のように使われている、「水を線で表現する」手法だが、確かに西洋の絵画や中国の水墨画には見られない。彼らは「塗り」で水を表現して来た。日本人は「目を通して得られる情報を脳が合成する時に、時間軸を長く使っているのではないか」と、チームラボ代表の猪子寿之氏は考えたそうだ。つまり写真でいえば、露光時間が長い、ということである。ちなみに、滝を表現するために本物の滝を見て回る、というようなことは一切していないそうだ。その辺がユニークでもある。

ところでチームラボの「チーム」とは、彼らのお話によれば作品を制作するときに「個人の主導でもなければ、分業でもない」ということを意味するという。「例えばここに(現代的なプロダクトの一例として)iPhoneがありますけど、このデザイナーは単に外装のカタチだけをデザインすればいいわけじゃないんです。電子部品などのハードウェアや、OSといったソフトウェアのことについても詳しくて、それについても意見を出したり決定したりする。どこまでが"デザイナーの仕事"と、明確ではない」。それが"チーム"によるモノ作りということだそうだ。チームラボのメンバーたちは立場の上では平等で、お互いがどれだけ給料を貰っているか、ということさえ分かり合っているとか。

「The Waterfall on Audi R8」はガラス張りの建物の外からでも観られるのだが、気になったら是非Audi Forum Tokyoに入館し、その2階に展示されているもう1つの作品「世界は、統合されつつ、分割もされ、繰り返しつつ、いつも違う」もご覧いただきたい。こちらは江戸中期のハイパー・エキセントリック絵師、伊藤若冲の枡目画にインスパイアを受けたというインタラクティブなデジタルアート作品。まるでコンピューターの機能的制限によって生まれたピクセル・アートのような枡目画は極めて2次元的な表現方法ではあるが、実はこの作品に描かれている樹木や鳥獣たちは3次元空間上に配置されたオブジェクト。鑑賞者の存在を感知して平面な無数の枡目が様々に色を変えると、3Dの生き物たちが動き出す。近づいてよく見れば枡目の中にはさらに彩色の異なる枡目が。こちらはフルハイビジョンの8倍という解像度だそうだ。

『teamlab exhibit at Audi Forum Tokyo』の開催期間は12月19日(木)〜1月5日(日)、開館時間は10:00〜19:00。入場料は無料。12月29日から1月2日は年末年始のため閉館となるが、大晦日の夜は建物に面した明治通りから「The Waterfall on Audi R8」を観ることが出来る予定だそうだ。詳しくは以下のリンクから、チームラボおよびアウディ ジャパンの公式サイトをどうぞ。

teamlab exhibit at Audi Forum Tokyo

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