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サイバーエージェントとテレビ朝日が仕掛けた「AbemaTV」、ホントにうまくいってるの?

テレビ朝日×サイバーエージェントが仕掛けたAbemaTVが好調らしい。カルチャーが異なるテレビ業界とWeb業界、どうしてうまくいってるの?
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AbemaTVが好調らしい。テレビ朝日とサイバーエージェントのハイブリットチームで運営しているそうだが、そこに衝突はなかったのか。テレビ朝日の宮本博行さん、サイバーエージェント出身の卜部宏樹さんを直撃。...ぶっちゃけケンカとかないんですか?

AbemaTV好調の要因はテレビ×Webのハイブリットチーム!?

若者たちがテレビを見なくなった。

そう言われて久しいが、テレビ朝日×サイバーエージェントの仕掛けた「AbemaTV」が絶好調だという。5月21日には300万ダウンロードを叩き出し、TV番組×スマホの新しい体験として若者たちの生活にも浸透しつつある。

テレビ朝日の番組配信はもちろん、夏フェスとコラボしてLIVEを生放送したり、『最上もがのもがマガ』や『りゅうちぇる×ちゃんねる』などAbemaTVのオリジナル番組を配信したり、スマホ時代にあったコンテンツによって若者の心を掴んでいる。

UIも特徴的で画面をスワイプしていくことで常時20以上のチャンネル(2016年6月現在)がサクサク楽しめる。リアルタイムでのコメント、Twitterとの連携、視聴予約など機能も充実している

「これは神アプリ」

サイバーエージェント社長である藤田晋さん自身がそう豪語しており、完成度の高さと自信が窺い知れる。

Abema TV

おもしろいのは、このAbemaTVを運営している体制だ。テレビ朝日とサイバーエージェントの社員約200名が参画するハイブリッドチームで運営。新会社「株式会社AbemaTV」として自社スタジオも所有する。

ひとつ気になったのはテレビ朝日とサイバーエージェント、カルチャーが全く異なるテレビとWebの世界。融合は果たしてうまくいっているのか?ということ。その舞台裏に迫るべくAbemaTVのスタジオ兼オフィスを訪問した。

テレビ朝日の宮本博行さん、サイバーエージェントからはAbemaTV副社長の卜部宏樹さんを取材。テレビとWeb、両者の対談が実現した。

・・・ぶっちゃけホントにうまくいってるんですか?

卜部宏樹(サイバーエージェント取締役/AbemaTV取締役副社長)

2010年にサイバーエージェントに入社。翌年2月にアプリボットの取締役に就任。2014年4月にに代表取締役社長に就任。同年12月にサイバーエージェント取締役に就任。2015年4月にはAbemaTV取締役副社長に就任した。AbemaTVでは主にテレビ朝日報道局が制作を請け負う24時間ニュースチャンネル「AbemaNews」を担当。

宮本博行(AbemaTV ジェネラルプロデューサー)

2002年にテレビ朝日へ入社。同局にてバラエティ番組「虎の門」「ロンドンハーツ」「さきっちょ☆」や動画配信サービス「テレ朝動画」での「バナナTV」制作などに携わる。2015年、AbemaTVのジェネラルプロデューサーに就任(テレビ朝日総合ビジネス局所属)。AbemaTVでは「AbemaSPECIAL」チャンネルで放送する生放送番組の責任者、プロデュースを担当。

「AbemaTV」オリジナル番組制作のウラ側

宮本博行さん(左)/卜部宏樹さん(右)

― AbemaTVはチームもユニークですよね。番組づくりもテレビ朝日とサイバーエージェントの混合チームで行なっていると伺いました。

卜部:

チャンネルによって異なりますが、オリジナル番組を配信する「AbemaSPECIAL」では、テレビ朝日から4名、サイバーエージェントから12、13名が参加して制作しています。

番組制作に関してはホントに僕らだけじゃどうにもならない領域で。これまで僕らもWeb動画などはつくってきましたがぜんぜん違う。痛感したところでもあるのですが、番組クオリティが桁違いなんです。現場をしっかり回すことなど含めてテレビ朝日と協力しなければ絶対にうまくいかなかったと思います。

宮本:

たしかにネット動画に比べて「番組として成立するもの」を考えてつくっているということはあります。ネットって「素」じゃないですか。それが良さでもあるんですけど、そこで終わってしまうものも多かった。その「素」をきちんとパッケージとして見せられるようにする。これが私がテレビ朝日から来ている意味かな、と。

― 「スマホ」という軸でみると素人動画やYouTuberとも同じ土俵。そこはあくまで「番組をつくる」というテレビ的な戦い方をしていくということでしょうか?

宮本:

どうですかね、単純におもしろくしたいってだけで(笑)

ただ、テレビともやっぱり違うんですよね。たとえば、そもそもスマホって画面が小さいじゃないですか。だから出演者を増やしたり、豪華なセットを組んだりすると逆にごちゃごちゃして見づらい。絵的に「出演者を減らす、セットは簡易に」とか考えていますね。

あとはリアルタイムでのコメントを出演者が拾って応えていくのも視聴者との距離を近づける演出。テレビっぽくしても意味がないし、それだったら「テレビ見よう」ってなりますし。テレビでは出来ないおもしろいことをAbemaTVでやって「こういう番組って面白いな」とテレビにいく人が増えてもいい。そんな行き来が増えたらいいですよね。

― コンテンツの視点から見ても前例のない挑戦だと。事業的な視点だとどうでしょうか?

卜部:

インターネット的な事業とつくり方が違うんですよね。インターネットのビジネスってこれまでは「小さく産んで大きく育てる」というやり方が主流でした。アメブロもはじめはスゴく小さいところから始まりました。

でも、AbemaTVは最初から「ドン」といく。構造が大きく違う。開局してから2ヶ月くらいですけど最初からフルパワーで勝負を仕掛けていく。そういったビジネスだと捉えています。

テレ朝とサイバーエージェント。どう企業文化の「壁」を乗り越えた?

― もう一つ気になったのが互いの企業カルチャーの融合です。正直、ぶつかったりしなかったんですか?「テレビ」と「Web」って全然違うじゃないですか。

宮本:

ぶつかるというか「戸惑い」ですよね。テレビ局でやってきた身からすると物事の進むスピードが速すぎる。まあ砕いていうと...言っていたコトがどんどん変わる(笑)

卜部:

サイバーエージェントでいえば「変化」に対する抵抗感が全くないんですよね。例えば、立ち上げ準備の段階でも、4月に開局することは決まっていたので、短い期間の中でやり切るために柔軟に判断を変える場面も多々ありました。だからテレビ朝日の方々を相当ふりまわしてしまったと思います。「このスピード感で進めないといけないんです!」みたいな。最近では「サイバーだから仕方がないか」と言っていただけるようになったのではないかなと(笑)少し時間はかかりましたが、お互いに理解を深められてきていると思っています。

― あえて卜部さんに伺うのですが、テレビ局と仕事をしてみて「テレビ業界の課題」などは感じることはありましたか?

卜部:

テレビにおける課題を語れる立場ではないですし、一部しか見ていないので...ただ単純に「もっと若い人が活躍できるようにするためにはどうしたらいいのか」というところは思いますね。

テレビの世界で活躍している方の多くは10年スパンでキャリアを積んだ方だと思うんですよ。番組制作にあたってはなによりも"経験"が重視される。それがないと到達しない領域もあって。そこにジレンマは感じましたね。

宮本:

「プロデューサー業」という意味においてはやっぱり経験が必要なところがあって。番組をつくる上での危機管理とか、番組クオリティとか、いろんな面から見て。関係各所いろんな人がいるんで...それをまとめなきゃいけない。まあ経験値がすべてではないと思いますけど。

同時に、テレ朝でいえば「番組をつくる」というディレクションであれば、若い人でも才能とセンスがあればどんどん抜擢される取り組みなども行っています。

卜部:

ちょうどサイバーエージェントの若手をテレ朝のチームにも入れていて、どういうふうにキャリアを積ませていくのか、ここは試行錯誤しているんですよね。テレビの世界で10年かかるキャリアがあったとして、どこを飛ばしていけるのか。飛ばしていいのか。

テレビで10年かかるところをAbemaTVなら1、2年で仕上げられる方法がないか。もちろん「テレビ局」でのキャリアとは違うものになりますが、お互いに意見を出して育成プランを練っているところ。ロールモデルみたいなところはできるんじゃないかなという兆しは見えてきました。

宮本:

ただまあ戸惑ってはいるかもしれませんね。サイバーエージェントに入ってまさかテレビみたいな番組をつくるとは思っていなかっただろうし(笑)

テレビでも、Webでも、真剣にやれば仕事はおもしろくなる

サイバーエージェント取締役/AbemaTV取締役副社長 卜部宏樹さん

― 現実的に新人のうちに自分が思い描くとおりに仕事ができ、キャリアを歩めるということはほとんどないですもんね。

卜部:

そうですね。昔は、僕もこうしてテレビ局のような仕事をするとは想像していませんでしたが、今回、改めてテレビのすごさ、楽しさを実感すると同時に、それをつくることの難しさも感じています。でも、仕事ってなんでもすごく真剣にやればおもしろくなると僕は思っていて。

同年代でいろんな会社にいる人たちと話すと何となく閉塞感を抱えている人もやっぱりいるんですよ。仕事が単純に楽しいと言える人は多くない。当然、憂うつなことだったり、苦痛なことだったり、憤ることもあって。それを含めて僕らは、いいサービス、おもしろい番組ができた達成感とかすごく楽しんでいるという感じですね。

経験の浅いメンバーだけでもやれるんだと思っているし、そういうところに若い人もどんどんチャレンジしてほしいな、と。

宮本:

楽しいことばっかりじゃないですけど、まあ何年かすりゃ絶対笑い話になりますから。なんでも楽しめたらいいですよね。

― 最後に宮本さんに伺いたいのですが、サイバーエージェント出身で「番組づくり」において才能を発揮しそうな若手ってどんな人でしょうか?

宮本:

自分で作った番組に対して「常によくしよう」という執着心があるというか。みんな「あれやりたい」「これやりたい」は言えるんですよ。でも、それだけじゃなくて「もっと良くしたい」といった執着心が高い。自分一人でたくさんのことを抱える凄さもありますが、一つの「モノ」をちゃんと仕上げる力なのかな、それが大事という気がしますね。

卜部:

あとは、これだけ市場がはやく変化しているなか、業界や領域を越えていった時にも「変化を耐えうる」ということですよね。やっぱりその変化を楽しめることは欠かせない。「まあ何とかやるしかないよね」みたいな。「昨日言っていたことと違うじゃないか!」と怒る人は多分、もうそもそも合っていないのかもしれません。

― その他、テレ朝とサイバーエージェントにおいてメンバーの違いでいうと?

宮本:

やっぱり女の子がかわいいですよ、サイバーエージェントは。

(一同笑)

今回「キャリア」という視点でもすごくおもしろいと思いました。メディアの垣根を越えていった時にどんな人材が活躍していくのか、答えのない世界。そのヒントがいただけたと思います。本日はありがとうございました!

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