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Evernote上野美香がビジネスの本質に目覚めた「アンディ・ウォーホルの言葉」とは?

TWDW2015イベント「ビジネスとクリエイティブが交差するところ」で、Evernote Japan上野美香さんが語ったこととは。
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TWDW2015公式プログラム「ビジネスとクリエイティブが交差するところ」イベントレポート。Evernote Japan上野美香氏のトークを書き起こし形式でお届けします。

【登壇者】

Evernote Japan Director of Marketing & Communications

上野 美香

エバーノート・上野美香のキャリア

こんにちは。Evernoteでマーケティングディレクターをしている上野美香と申します。私は去年もTWDWに出させていただいたんですが(※)、今年はお二人のゲストとともに「ビジネスとクリエイティブが交差するところ」というテーマでお話できればと思います。

まずは私の自己紹介をさせてください。今はEvernoteという会社で、マーケティング担当ディレクターをやっていて、広報業務も兼任しています。経歴としては、職種バラバラなことやってきました。最初はシステムエンジニアを3年、そのあとネットベンチャーの投資・育成会社での仕事をきっかけに、スタートアップの世界に入って行きます。

最初の転職でベンチャーインキュベーションの会社(ベンチャー企業への投資と育成を行う)にいきました。とはいっても投資家になったわけではなく、ベンチャー企業と一緒にビジネスプランを作るお手伝いをしたり、一緒に投資家を回って、資金調達のお手伝いなどをしていました。

そのあとに入ったのは外資系のネットセキュリティ企業。本来は事業開発担当として入ったのですが、ちょうど会社が上場する準備中だったこともあり、投資や資金調達の話がわかるということで、上場準備やIR(投資家向けの広報)を担当することになりました。

私が会社勤めだったのはここまでです。まあ、早い話が忙しい業務で燃え尽きましてですね(笑)会社を辞めたあと7カ月ぐらい休んで、そのあと個人事業主になりました。

システムエンジニアやベンチャー投資、IRなどいろいろな仕事をしましたが、私の得意な分野は、業界でいうとIT・インターネット関連で、コミュニティ醸成やネットを活用したマーケティングです。それを中心にして個人事業主として、ITmedia、シックス・アパート、Twitter Japanなどで仕事をしてきました。スタートアップ企業での仕事が多いので、業務をきっちり分けて担当するというよりは、いろいろな業務を兼任することが多くなります。私の分野でいうと、マーケティング活動と広報活動は本来は違う業務ですが、ユーザーに直接情報を届けるという点ではおのずと近くなってきます。

ビジネスはクリエイティブである

さて、今日の本題に移りましょう。「ビジネスとクリエイティブが交差するところ」というタイトルですけれども、みなさん「クリエイティブ」という言葉に対してどんなイメージを持ちますか?

モノを実際に作ったりデザインしたりしていて、グラフィックや映像や音楽を作れて、アートも創作したりして、スタイリッシュで...、そんなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。

私もそうです。「クリエイティブ」という言葉に、ちょっとした憧れとコンプレックスを持っていました。自分自身は何かを作れるわけでもデザインできるわけでもないからです。でも一方で「クリエイティブって一体何だろうな」という思いがありました。

ある時、そのヒントを貰える機会が訪れました。私がTwitterで仕事をしている時だったかと思うんですが、世界で活躍するクリエイターであると同時に人生の先輩である方とお話している際に、クリエイティブに対する私のコンプレックスの話をしてみたんです。すると彼から返ってきた言葉はこんなものでした。

「ビジネスって作ることだよね」

「きみがやっていることは、すごく面白いじゃない。もっと創造的にやってみたらいいよ。その中で、丁寧に問題をひろっていって、必ずそれをクリアにしていくと、自分でも想像しなかったおもしろい景色に出くわす。より創造的にね」

そしてその時一緒に教えてもらったのがアンディー・ウォーホルのこの言葉です。

「ビジネスはアートだ」お金を稼ぐこと、働くこと、そしてビジネスでうまくやっていくこと全てが、アート=クリエイティブなことなんだと。

「ビジネス」って、クリエイティブとは逆に位置するものと捉えることもあると思うんですが、ビジネスを作り、動かしていくそのこと自体がクリエイティブなんだと、気づくきっかけになった言葉です。

これらの言葉に出会って以降、プロフェッショナルとして仕事をし、やる仕事をより良くするための探求を続けること、これが創造的な(クリエイティブな)ものに結びついていくんだ、と意識するようになりました。

どんなビジネスでもクリエイティブに

では実際に、私自身はどんなことをやっているのかを例にお話します。ひとつは仕組み作りです。

どう情報を伝えて、どうユーザーとコミュニケーションをして、盛り上がりを広げていくか。モノ作りではないけれども、そうした仕組み作りというのは大いにビジネスの場で必要になると思います。

私が実践したひとつの具体例をご紹介します。Evernoteで昨年実施した大きなイベントです。「EVERNOTE DAYS」という2日間のイベントで1000人超のユーザーさんに来ていただいたものです。

このイベントでは、テーマの設定を「Evernoteの使い方」とか、「Evernoteが次に目指すもの」などではなく、「記憶の未来」としたんです。Evernoteという製品が持っているコアになるものは、人の大切な情報・記憶を預かるということ。どんどん情報が溢れる中で人の記憶は未来へどうつながっていくのか、それをテーマの中心にしたら、いろんな面白い企画ができるんじゃないか、と。テーマが決まれば、それにふさわしい場所を探したり、テーマに沿った多角的な話題を用意したり、魅力的なゲストをお招きしたりしました。投資家から記憶の未来を考えたらどうなるか、科学者から見るとどうなるか、珍しいところでは僧侶から見た記憶の未来はどうか、というセッションも設定することができ、いろいろな反響を得ることができました。単純に大きな自社イベント・販促イベントを開催するのではなく、みんなでちょっと創造力を働かせてみました。

こういうイメージで伝えたいから、どの言葉を選ぶか、表現をどうするかなど、書き方や伝え方を工夫していきます。こういう事務作業に見えがちなことも創造的にできるのではないかと思いました。

私の場合、何かを考えたり始めたりするときは、妄想からはじめます。Evernote社内では、「妄想セッション」と呼ばれるミーティングで、リラックスしながら、NGは何もない状態からスタートするんです。

こんなイメージのイベントにしたい、こんな人たちに来てほしい(呼びたい)、大きなことから細かいことまで妄想からどんどん挙げていくと面白いくらいアイデアが広がります。とうてい手が届かないというようなアイディアも自由に出てきて、とても創造的な時間だと思います。そのあと、現実にできるものはどれかという実現度を加味していきながら、具体的なプランに落とし込んでいきます。

ここで面白いところは、相乗効果があること。私たちが妄想から企画したものやアイデアをゲスト登壇者にぶつけると、違う発想のアイデアが出てきてさらに面白いアイデアを呼ぶというような体験もできました。

人生のトリセツはナイ

Evernote Daysもそうですが、既定路線がなく、新しいチャレンジができる仕事はいろいろあります。ただ、新しいことをやるときには、多くの人がマニュアルとか、取扱説明書、テンプレートに相当するものを欲しがりますし、私もそういうのがあったら楽だなとは思います。でも実際のところ、創造的に仕事をするというところでは、そういうものはないんじゃないかと思うんです。

これだけ変化の激しい時代、皆さん自身の環境、周りの環境は常に変わっていますよね。そうした環境に対応するということは、仕事自体も変化していくわけで、マニュアルや取扱説明書がそっくりそのまま当てはまる状況ってほとんどないのではないかと思います。

で、私より全然うまい説明をしている人がいるんです(笑)。私の元ボスでもある、伊藤穰一さん。マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長のこの言葉です。

「地図よりもコンパスを持とう」

何て的確な言葉なんでしょう(笑)!自分がどこに行くか目的地までたどり着く道のりを欲しがるのではなく、自分はこっち向いているな、風はこっちに吹いているな、少し方向が変わったかな。ちょっと軌道修正しよう。そう考えることができるコンパスを持ちましょうと。

よりよいものを追求していく

ビジネスサイドもクリエイティブになれるというお話をしてきましたが、仕事以外の場所でもインスピレーションを得ることができるんじゃないかと思います。

私の場合は、仕事というか、趣味というか、明確な線引きがない活動が結構あります。

TEDxTokyoというイベントがあります。NHKの「スーパープレゼンテーション」で有名になったTEDカンファレンスの派生イベントで、世界各地でボランティアによって運営されています。その人が持っている優れたアイデアや考え、パフォーマンスを世界に伝えていきましょうというイベントで、私はメディアチームのボランティアをやりました。先月は、日本発祥の国際情報セキュリティカンファレンスをお手伝いをしたり。

音楽家の坂本龍一さんのプロジェクトにも関わる機会があって、ネット上のプロモーション企画を考えて実施したりしました。NORWAYという、ネット上だけで音楽を作って発表するというバンドにも入っています。でも楽器は何一つ演奏できません。じゃあ何をやっているかというと、メンバーの1人という位置づけでやっぱりここでも広報やマーケをやらせてもらっています。

仕事とも趣味ともとれるこうした課外活動で、刺激や発想を得る機会をいっぱいもらうようにしています。あるいは、今までの自分の経験を応用する場所として活動しています。

自分の周りの環境はとにかく変化していきます。外部の環境もそうですが、それに合わせて自分自身も変わっていきます。それを前提とし、自分が過去にやってきたことや、周りにある前例に固執しないで自分なりの工夫をしていく。

事務作業でも企画でも作成資料でも、よりよくするための視点を盛り込んだり、ちょっとした工夫を施していくこと。本当に小さなことでも、それが皆さんにとって、自分にとって、ちょっとずつでも創造的(クリエイティブ)であるためのスタートなんじゃないでしょうか。その積み重ねが大事なのかなと思いました。

工夫を積み重ねていくと、思考自体も創造的になっていくんじゃないかなと思っています。よりよいものを追求していく。そうすると、自然と仕事が創造的になるのではないかなと思います。

ありがとうございました。

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