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無料のイラスト・漫画学習サイトがイラストレーターのビジネスを変える。無料動画《Palmie》が目指す道

イラストや漫画の描き方を無料動画で学べるWebサービス・Palmie。DeNA出身の伊藤さんがこのサービスを作った背景にある問題とは?
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《Palmie》は、イラストや漫画の描き方を無料動画で学べるWebサービス。作ったのは、DeNAでチームリーダーなどを務めていた伊藤貴広さんだ。伊藤さんが指摘する「地方で絵を学べない問題」とは?そして今、イラストレーターたちのキャリアはどのような広がりを見せているのか。

【プロフィール】

伊藤貴広 (SUPERFLAT Inc. 代表取締役)

1988年生まれ。福岡県出身。漫画家を志し、絵を描き始める。武蔵野美術大学造形学部入学をきっかけに上京。起業やビジネスに興味を持ち始め、DeNAに入社。Mobageアバターチームのチームリーダーなどを経験し、2014年に退職。同年に起業し、イラストや漫画の描き方を学べる《Palmie》(パルミー)をリリース。

地方における学習コストの高さ

― 《Palmie》が誕生した背景には、伊藤さんご自身の原体験があると聞きました。

僕は小学生のときに漫画家を目指し始めて、その時から絵を描いたり漫画を描いたりしていました。当時は福岡の片田舎に住んでいたのですが、地方では「絵を学ぶための教材、学校がない」という問題がわりと身近にありました。都心のように、美大や専門学校のリーチが大きくないんですね。

そういった僕自身の原体験と、DeNA時代に学んだことを掛けあわせてできたのが《Palmie》です。100本以上の動画を無料で見放題で学べるWebサービスで、配信している動画の再生回数は今月(2016年1月)200万回を突破します。最初の100万回を突破するのに9ヶ月かかりましたが、後半の100万回は4ヶ月で突破しました。中には専門学校的に学べる有料動画もありますが、この売上には非常に手応えを感じています。特に地方のユーザーに購入してもらっている様子を見るとニーズは間違いなくあると確信しました。

― DeNA退職後は、すぐ《Palmie》を?

じつは、退職後に《Palmie》をやり始めたタイミングでDeNAのデザイン戦略室室長の坪田さんに「クリエイター支援の仕事を手伝わないか」と誘われて。「これからは、企業の仕事でもイラストレーターの名前を出すように、個人にフォーカスを当てていくべき」という考えに共感して、1年間、外部パートナーとして参加していました。

DeNAでは“「個」で勝負できるクリエイターは、強い”というテーマを掲げています。たとえば、ソーシャルゲームのヒットで市場ができても、エンジニアばかりに注目が集まり、デザイナーやイラストレーターといったクリエイティブの職種にはなかなかフォーカスされない現実がありました。かかわった作品のクレジットに自分の名前が載らないなど、未だにそういうった実態を様々な業界で目にします。

DeNAのクリエイター支援では、まさにそういった部分を見直して個人にフォーカスを当てていくという取り組みをしていました。《Palmie》はあくまでも僕の原体験を元にしたサービスですが、これをきっかけに次世代のクリエイターが誕生したらいいなと思っています。そういう意味ではDeNAの「個」で勝負できるクリエイターの取り組みに近しいものがあるかもしれませんね。

イラストレーターは多い。でもプロは少ない

― イラストレーターや漫画家を取り巻く状況についても伺わせてください。今、全体数としてどのような状態なのでしょうか?

イラストを描く層には「趣味で描いているけれど、プロも目指している」という人たちがまばらに存在している印象です。「趣味で描いている人」が多いので、全体数が不足しているわけではないと思います。

ですが、その中で仕事として成立しているイラストレーターは一部です。絵師が集まるクラウドソーシングでも、数万人が登録している中で仕事をしているのは数十パーセント程度。最近では、本格的な仕事と捉えずに「趣味の延長」としてお金を稼ぐ人がさらに増えつつあります。

― LINEの「クリエイターズスタンプ」、そして「MUGENUP」のようなクラウドソーシングの登場ですね。

「クリエイターズスタンプ」では、「ちょっとしたきっかけで描いてみた」から何百万、何千万円を手にした人もいます。ほかにも、電子書籍を筆頭に、漫画やアニメもより簡易に制作、パブリッシングできるところが多くなり、クリエイターやイラストレーターが個人で勝負できる環境は間違いなく整ってきていると思います。

イラストレーターの「IP化」「ユニット化」する戦い方

― 個人でも活躍できる場が増えてきた今こそ、注目すべきことはなんでしょうか?

個人でパブリッシュできる場が増えている今、絵を描くスキルはもちろん、付加価値をつけた「IP化(=Intellectual property・知的所有権/知的財産権)」の意識は必須だと思います。たとえばキャラクターを商品化したり、積極的にコラボレーションしていく。イラスト単体ではなく、ストーリーやコミュニケーションといった要素をつけ、IP化することで、自分のクリエイティブをより大きく広げていくのです。

個人で面白いものを作るだけでなく、それを「ユニット化」して面白くするのも、これからの戦い方です。「クリエイターズスタンプ」を例にあげると、コラボするときの契約などは本人以外のところで動きが発生します。アニメや一枚絵も、書籍化となると周囲を巻き込んでいくことになります。近年、コルク・佐渡島康平さんのように、クリエイターのエージェント会社も増えてきました。イラストレーターや漫画家と事業を展開する人が揃えば、もっと大きな仕掛けになるはずです。

― 「描けます」だけではお金にならないということですね。

そうですね。エンジニアもデザイナーも、アプリやサービス、ビジネスあっての価値です。イラストレーターも同様に、ビジネスが大事です。

新しい枠組みの中からキャリアを作り出す

― 今後考えられる、イラストレーターのキャリアにはどんなものがあるのでしょうか。

例えば、Twitter上で一枚絵がバズるように、スケールできる新たなフォーマットはまだまだ登場すると考えています。以前、Twitterでピン芸人の田中光さんが描いた「サラリーマン山崎シゲル」がヒットしたように。

このように新しいフォーマットに乗っかって、自分を試してみる。いろんな枠に自分を当ててみて、どう思うのか・どう評価されるのかをつぶさに拾う。そこから、自分のイラストをIP化していくことが、今後のキャリアプランの1つとしてあるように感じています。

その最初の一歩として、イラストレーターや漫画家を志しながらも学ぶ機会が限られている人に《Palmie》で夢を広げてもらうよう、僕も一層成長していきたいですね。

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