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「仕事をクリエイティブにするには、広く浅く知識を身に付けろ」多岐にわたるビジネスを成功させる方法とは

TWDW2015公式プログラム「ビジネスとクリエイティブが交差するところ」で、tsug代表・久下玄さんが語ったこととは。
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TWDW2015公式プログラム「ビジネスとクリエイティブが交差するところ」イベントレポート。久下玄氏のトークを書き起こし形式でお届けします。

【登壇者】

合同会社ツグ 代表

コイニー株式会社 プロダクトストラテジスト

久下 玄 (デザイナー/エンジニア/ストラテジスト)

東京造形大学卒業。家電メーカーのプロダクトデザイナーを経て2009年にtsug,LLC創業。事業戦略、技術開発、製品デザインまで手がける 統合型デザインで、国内外の企業のイノベーションプロジェクトに携わる。2012年Coiney,inc創業に参加し、以後プロダクト開発を担う。2010~2013年まで慶応大学SFC研究所にて研究員として通信とデザインの研究および教育に携わる。近作に脳波ヘッドフォンmico(neurowear)やスマホ決済サービスCoiney(コイニー)など。受賞多数。近著は「リアルアノニマスデザイン」(学芸出版社・2013年・共著)。

多岐にわたるプロジェクトに携わる久下玄

こんにちは。久下です。私のあとの谷田さんが、笑いを取るのが控えているので、私はちょっとまじめにお話をしたいなと思います。

「ビジネスとクリエイティブが交差するところ」という今日のテーマですが、どういうことをクリエイティブと指すんでしょう。私はクリエイティブって何なのかって、正直よくわかっておらず、そんなことを普段あまり考えずに、いろんな仕事をしています。

今日ここにいらした方って多分、自分の働き方などをアップデートしたいと、日々考えられている方々なのかなと思っています。私自身も、仕事の領域に固執することもなく、ちょっと楽しい人生のために、楽しい仕事ができればなあと思って、いろんなプロジェクトに取り組んでいる1人ですので、どういうことを考えているのかみたいなお話しをさせていただければと思います。

まず自己紹介からさせてください。いろんな仕事をしていて、デザイナーと呼ばれる場合もあれば、エンジニアと呼ばれることもありますし、ストラテジストと呼ばれることもあったりします。

デザイナーというのは、モノ、サービス、ハードウェアといった、何らかの商品のデザインをするような仕事です。エンジニアというのは、そのデザインされたモノや企画されたモノを、どう世の中に具現化させるか、実現させるかという仕事。ソフトウェアだったら、実際にコードを書くこともありますし、モノなら構造を設計するようなことをします。ストラテジストというのは、製品戦略や販売戦略など、世の中にどう出して、普及させていくか。そういったものを考える仕事です。

私はそんな仕事を二つの組織に所属してやっています。ひとつは、自分がやっているtsugというデザイン会社。もうひとつは、仲間たちとスタートした、Coineyというスタートアップです。

tsugってどういう会社かと言うと「デザインファーム」と呼ばれる会社の業態が、一番近いかも知れません。デザイン、テクノロジー、それとビジネス的な観点というのを合わせて、多岐にわたる業界のクライアントに、いろいろな形で解決先を提示していく、そんな仕事をしています。最近はハードウェアスタートアップと仕事をすることもすごく多くなっています。

もう一つ所属しているCoineyという会社、ご存知のかたどれくらいいますか?

あ、意外に知っていただいてますが、まだまだですね。頑張ります。Coineyは私を含めて3人でスタートした会社でして、スマートフォン決済って言われるジャンルのサービスを提供しています。お店や企業がクレジットカードの支払いをお客さんから受ける仕組みって、今まですごい高かったり、複雑だったりしたんですが、それをインターネットとスマートフォンでお客さんもお店も使いやすくする、そんなサービスをiOSやAndroid、スマートフォンやタブレットと、いろんなプラットフォームで提供している会社です。

2012年に3人でスタートした会社ですが、最初は人も少ないので、ハードウェアの設計からアプリのデザイン、実装(エンジニアリング)だけでなく、カスタマーサポートなんかもやっていました。ある時期にはプライベートの携帯電話がカスタマーサポートの問い合わせ窓口になっていたり、お花屋さんから電話がかかってきてすぐ現地に向かったり。本当にいろんなことをやっていました。

いまはメンバーも増えて、デザイナーとエンジニアからなるプロダクトチームの統括をメインに、新しく入った人たち向けにCoineyのミッションブックを作ったり、オフィスデザインをしたり。新しいデバイスのデザインや量産も含めて担当しています。

ビジネスは、さまざまな役割の人の小さな創造性から生まれる

どうしてこういう働き方になったのか。

もともと私は白物家電を作りたかったんです。エアコンとか、空気清浄機とか、オーディオビジュアル機器に比べると、すごく地味なやつらですね(笑)。私は美術大学に行って、家電メーカーに就職して工業デザイナーになりました。

そして私はメーカー時代のあることをきっかけに、いろんな領域の仕事をするようになります。

それはとてもうまくいってる事業には必ず、オーケストラをつかさどるマエストロ(指揮者)のような人がいることに気がついたんです。エンジニアの場合もあれば、営業マンみたいな人の場合もあったんですが。私はそういう光景を見ながら、「マエストロのようなデザイナー」になりたいと思ったんです。

当時のプロダクトデザイナーとは、「形を作る人」です。今はちょっと違う人も多いようですが、形だけデザインしても売り上げはそんなに大きく伸びません。「ユーザーの暮らし」みたいなのも考えなきゃいけないし、もっといえば、「より安く作れる」であったり、いわゆる「どう設計して生産するのか」を知らないといけない。会社に大きく貢献するならば、「形だけのデザイン」以外のことをやらないとダメだと感じはじめました。モノが動く仕組みとかビジネスプランも、デザイナーといえども、いち社員として理解すべきだろうと。

例えば、メーカーがつくる電化製品でも、WEBサービスみたいなものでも、運用という作業(仕事)があります。カスタマーサポートで電話対応するものもあれば、売ってくれる量販店に営業に行くだとか。

ビジネスは、さまざまな役割の人の小さな創造性が集まってできています。ビジネスは、チームゲーム。あらゆるものを集めて戦う必要があります。

浅くてOK.共通言語を獲得しよう

そのためにはいろんな人とコミュニケーションしなきゃいけない。いろんな人と話すためには、共通言語が必要です。

例えば、エンジニアと話すときには、エンジニアリングの知識がないと全然ダメ、ビジネスサイドの人と話すときに、バランスシートも読めないやつがビジネスサイドに数字の何か言っても、「こいつ、なに言ってるんだ」みたいになると思うんですね。

知識は深くなくてもいい。大事なのは会話ができるということです。広く浅く、いろんなことを学び始めました。エンジニアリングから財務、カスタマーサポート、法務、セールスの方法などなど。基本は独学です。いまはネットですぐ本も買えるし、調べれば大抵のことは理解できます。

すると、その道のプロの人からすると基礎中の基礎、常識レベルのことでも、学んだことがいろんな人との共通言語になり、少しずつ会話ができるようになりました。自然と仲間が増えていって、できることが増えていくんです。

そうすると、デザイナーという枠からはみ出るようになります。デザイン部門にいるいちデザイナーだった自分ではできなかった事ができるようになったり、自由に動けたりする時間が増えていったり。そんなふうにどんどんチャレンジしていくと、周りの人が「久下さん、それ知ってるんだったら、これどう?」みたいな感じで、新しい機会を得ることも出てきます。

子どもを真似てみよう

少し話を変えて、仕事の制約についていろいろ考えるんです。たまに、「制約があるとクリエイティブになれない」といった話題を耳にしますが、制約がなくなることはまずないですし、制約がなくなったからといって楽にならないのではないかと私は思っています。

自由にならないことばっかりです。私は制約を、思い込みの枠から出るための道しるべとして使うようにしています。制約を基準にして、ちょっと外に出る考え方をしたりすると、結構面白いことが生まれたりするんです。すべての制約は可能性の裏返しなのだと思います。

皆さんよく「クリエイティブ!クリエイティブ!」と口走っているんですけれど、オックスフォード辞書を引いてみました。

クリエイティブとは、創造的なこと、独創的なアイデアを含んでいたりとか、それに関連する様、みたいなことが書いてあります。主に芸術系の制作物の周りで使われる的なことが書いてあるんですけど。

要するに、ちょっと工夫をしたり、これがいいんじゃないの?って思うことが入っていれば、デザインであろうが、ビジネスであろうが、ひょっとしたら、財務会計の仕方であろうが、それは「クリエイティブ」なんだろうなと思いました。

なんでここまで私たちは「クリエイティブ」という言葉に惹かれるのか。最初に頭に思い浮かんだのは子どもたちだったんです。

どんな人でも子どもの頃はすごくクリエイティブだったと思うんです。子どもの記憶はすごく楽しかった記憶でもあります。

人は今の生き方、働き方も合わせて、あの頃の楽しみのまま、毎日を暮らしたいと思うから、日々のことをクリエイティブにしたいと思うんじゃないかと。

制約の話にも繋がるんですが、「子どもは自由だから、クリエイティブになれる」みたいな話をすると思うんですけれど、私は、ちょっと違う考え方を持っています。むしろ子どもって全然自由じゃないと思うんです。お金はなければ、権力もないし、知識もないし、モノも持ってない。でも、彼らは、その制約の中で、自分たちの工夫をして、日々をすごい楽しんでいるんです。

これ、うちの長男なんですけど、Amazonのダンボール箱で大きな恐竜を作ったんです。私たちにとってはただのダンボールですが、彼にとってみるとAmazonの箱は、大きな恐竜を作れるものすごく貴重な資材なんです。これはすごく面白いなと思いました。子どもは、制約を利用して、裏返すのがすごく上手なんです。

これは、次男坊なんですけれども。彼は「お面を作りたい」と言いだしたんです。でも、顔の大きさの紙がなかった。すると彼は、目と鼻を隠せるテープはあると言って、これで、お面と言いはじめたんですよね。

これ、眼と鼻だけ隠れている、お面と全くの逆なんですけれども、外の世界と自分との接点が変わるんだったら、これでお面といってもいいということかなと思います。視点を裏返すことは、彼らから学べることも多いです。

広く浅くスキルや知識を身に付けるという点でも、子どもの志向や行動はすごく参考になるんです。みなさんCADってシステムご存じですか?立体物を作るソフトウェアなんですが、いま無料で使えるものもたくさんあります。難しそうに聞こえるかもしれませんが、実は基本的なことはすごく簡単に、やってみたら誰でもできるものだったりするんですね。

子どもは、そういう「難しそう」という先入観がないので、とりあえず興味本位でさわってみて、ダメだったら「わかんない」みたいな感じで、いろいろさわってちゃんとしたデータを作成しちゃったりすることもあります。そんな感じで、「取り組んでみたら意外にできちゃった」ってことは、結構多いんだなと、子どもを見てると思います。

「ビジネスとクリエイティブが交差するところ」というテーマに対する僕の結論なんですが、働くということと、クリエイティブ、創造的であるというのは、そもそもイコールなんだろうなとは思っています。

美香さんと同じような結論ですね。もちろん私自身もいろんな制約の中で自由にやりたい、もっと楽しくしたい、と日々思っています。自分自身の働き方や関わり方をどんどんクリエイトしたいと、日々考えています。ちょっと長くなりましたが以上になります。ありがとうございました。

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