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LITTLE TEMPOのベーシストにして広告クリエイター。2つの「プロ」を極める白水生路の生き方

日本を代表するインストゥルメンタル・ダブ・バンド、LITTLE TEMPO。ベーシストのSEIJI BIGBIRDこと白水生路さんは、クリエイターとしての顔もあわせ持つ。20年以上にもわたりクリエイターとミュージシャンという二足のわらじを履き続けてきた白水さんの生き方に迫った。
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《LITTLE TEMPO》のベーシスト SEIJI BIGBIRDこと白水生路(しらみず・せいじ)さん。実は、元マッキャンエリクソンのクリエイティブディレクター。これまで多くのCMを手がけ、現在も第一線で活躍している。“白水生路 a.k.a. SEIJI BIGBIRD”という生き方そのものに迫ってみたい。

広告クリエイターとして。LITTLE TEMPOのベーシストとして。

日本を代表するインストゥルメンタル・ダブ・バンド《LITTLE TEMPO》。これまで多くのアルバムをリリースし、FUJI ROCK FESTIVALをはじめとするフェスやライブで圧巻のステージを繰り広げている。

広島のフェスでのLITTLE TEMPOのライブ

LITTLE TEMPOのベーシストとして活躍するSEIJI BIGBIRDこと白水生路さん。実は、クリエイターとしての顔を持つことをご存知だろうか。武蔵野美術大学を卒業後、マッキャンエリクソンへ入社。NIKEや『STRIDE』ガムのCMプランニングやクリエイティブディレクションを手がけてきた。約20年勤務した後、2014年に独立。現在もクリエイティブ業界の第一線で活躍している。

驚くべきは「すべてLITTLE TEMPOの活動と並行しながらやってきた」という点だ。なぜ白水さんは、20年以上にもわたりクリエイターとミュージシャンという二足のわらじを履き続けてこれたのだろうか。“白水生路 a.k.a. SEIJI BIGBIRD”の生き方に迫る。

<Profile>

白水生路 / SEIJI BIGBIRD

株式会社DONSコミュニケーション 代表 クリエイティブディレクター / LITTLE TEMPO ベーシスト

熊本県出身。中学時代から音楽にのめり込んでいき、バンド活動に明け暮れる。1991年、武蔵野美術大学在学中に《SILENT POETS》(現在は下田法晴氏のソロユニット)にて活動。大学卒業・マッキャンエリクソン入社と同じタイミングで脱退し、LITTLE TEMPOを結成する。以降20年以上にわたり、クリエイティブディレクターとして、ミュージシャンとして活躍。2014年に株式会社DONSコミュニケーションを設立。現在に至る。

「就職のために音楽を辞める」という発想はなかった

― LITTLE TEMPOで活動しながら広告クリエイターとして活躍されていることを知り、とても驚きました。まず、バンド活動を始めたキッカケから教えてください。

大学へ入った当時ってバンドブーム真っ只中だったんですよね。僕も先輩に誘われて組んだのが、LITTLE TEMPOの前身となるレゲエバンドでした。

― もともとレゲエが好きだったんですか?

イヤ、最初はキライだったんです。10代の頃は、パンクバンドをやっていて、とにかく速い曲が好きでした(笑)。でも、ザ・クラッシュの『サンディニスタ!』というアルバムにレゲエの曲が入っているんですよね。そこで興味を持って。大学で先輩たちにルーツレゲエのカッコいいバンドの音源をたくさん聞かせてもらったり、映像を見せてもらったりしているうちに、どんどん傾いていきました。

大学時代の4年間は、ひたすらバンド活動に明け暮れていましたね。学園祭に出たり、渋谷や新宿のライブハウスで演奏したりしながら、大学4年の頃にはSILENT POETSという別のバンドでレコードを出して…。

― 本格的ですね。3年、4年になっても就職活動のためにバンド活動を諦める…みたいな決断はなかったんですか?

何も決めなかったですね。もちろん就職しなきゃいけないとは思っていて、でも音楽活動は楽しかったし、都内のクラブで前座とかをやらせてもらえていたので続けていました。「音楽のために就職しない」とか「就職のために音楽を辞める」とかいう発想が全くなかったんです。

20年以上、仕事とプライベートに垣根はない。

― マッキャンエリクソンへ入社してからのバンド活動は社内でオープンだったんですか?

そうですね。2つ続けることが悪いことだなんて気持ちが少しもなくて、「何がだめなの?」と思っていました。

入社のタイミングで土生“TICO”剛とLITTLE TEMPOを結成したんですが、会社も理解ある人たちが多くて、「CD聴かせてよ」とか「今度ライブ行くよ」とか声をかけてくれるような環境で、完全にオープンでやっていましたね。

ありがたいことに大学時代にお世話になったプロデューサーの方に気に入ってもらえて、インディーズでレコードを2枚出しました。そのあとライブに来ていた別のディレクターの方に興味を持っていただけて、avexのCutting Edgeというレーベルからメジャーデビューもできて…。

― メチャメチャ順調ですね。仕事に慣れるまで音楽活動はセーブして…みたいな考えや「休みがなくてしんどい」みたいなことはなかったんですか?

当時から仕事とプライベートの垣根がなくて、ぐちゃぐちゃっと生きていました。音楽聴いたり、レコード買ったり、演奏したり、リハ入ったり…は全部好きでやってることで。仕事も机に座っているだけではなくて、誰かと会ったりおもしろい現場を見に行ったりしながらアイデアを考えて広告をつくるんですけど、それはそれで楽しいわけです。だから、どちらかをツラく感じることもありませんでしたね。

ただ、一度だけLITTLE TEMPOの冠イベントが決まって、たくさんのアーティストの方と30曲くらい演奏することになったタイミングで仕事のロケやプレゼンが重なって…。さすがにそのときは体力も頭もキツくなりましたけど、それでもまぁ楽しさが勝りました。

仕事も音楽も、楽しくて仕方ないもの

― 20年以上にわたり二足のわらじを履き続けてきた白水さんの人生にとって、仕事と音楽の位置づけを教えてください。

仕事も音楽も、楽しくて仕方なくて、後先考えずにやれるものです。

広告は得意先に企画を買ってもらって、納品するまでのプロセスが楽しいんです。結局、広告制作って会話の集積だと思うんですよね。アイデアそのものが重要なのではなく、アイデアを伝える言葉が大事だと思っています。

アートディレクター・CMプランナーとして手がけたUNIQLO 「RE-JEAN」キャンペーンCM

一般的にはオリエンを受けてアイデアを出して、それでプレゼンして、つくって納品…というやり方がフォーマットなんですけど、僕はそのプロセスのなかで、どうやって進めていくかを関わる人たちの立場を超えて、積極的に巻き込みながらやりたいんです。得意先や制作スタッフたちとの腹を割った会話のなかでアイデアを発展させていくと、関わる人みんながおもしろがってくれる。広告制作は単なる答え合わせや承認をしてもらうプロセスではなくて、制作サイドも得意先も楽しく盛り上がるかどうかのプロセス。みんながいいムードで一気に納品できた広告は、世の中に出ても絶対良い広告だと思っていますし。

だから「売れる広告をつくらなきゃいけない」という気負いはあまりありません。それよりも、“今楽しいもの・得意先もお茶の間も喜んでもらえるもの”を考えて、それがお金になっているというだけです。

逆に音楽の楽しさは、あまりしゃべらなくていいところ(笑)。演奏して汗かいてたら、ただただ気持ちいい。理屈をコネないし言い訳をしない世界だからストレスもありません。黙々と練習して良い演奏をするだけ。練習してないとメンバーにすぐバレますからね(笑)。

広告と音楽では表現方法は違いますが、基本的には同じです。CMも“ノリ”が大事だし、音楽も“絵”が浮かんだ方がいい。作業に関しても基本的には同じ。チームやメンバーでクリエイトしたものを世の中で喜んでもらえるかどうか。自分のなかではとてもシンプルです。ほめてもらったら、また調子に乗ってやる。その繰り返しです。頭のなかは中2くらいで止まってると思います(笑)。

もちろん、どちらも基本的には関わってくれている人の協力と理解がなければ成り立ちません。だから、機会をもらえていることにとても感謝しています。

肩書きなんて何でもいい

― 白水さんのように仕事と並行して自分が楽しいと思うことと本気で向き合うためにはどうすればいいのでしょう?

何かをつくる仕事であれば、自分が楽しいと思えることはいつかどこかで仕事とつながります。

少なくとも、僕が会社にいたときは朝9時に出社して夕方17時に退社して終わり、のON/OFFはなかったです。OFFになるのは寝るときだけ。会社で同僚と同じタイプやマインドになっていくことよりも、外でどれだけ楽しいことを見つけて、体験して、それを会社に持ち帰って新しい何かを生むほうがよっぽど価値があるんじゃないか、と。会社は単なる箱で、体や意識は時間に関係なく常に「外に置いてスイッチON」くらいのほうが良いと思います。

そして少しでも興味があることを見つけたら、躊躇せず、飛び込むこと。好きなものは、努力なんかしなくても、勝手にどんどん深く入っていく。逆に「努力しなきゃ」と思ってしまうものは、きっと“興味”じゃないと思います。すぐ辞めた方がいい。とにかく楽しみを見出だせるところまではやってみる。あとは、気がついたら徹夜しちゃって、無駄なこといっぱいやっちゃって…の蓄積だと思います。

― 最後に、白水さんはご自身を何者だと思っているのか教えてください。

肩書きなんて何でもいいですよ(笑)。仕事上クリエイティブディレクターとかベーシストとか名乗ってますけど、本当は照れくさいんです。でも、聞かれたときに困るので、一応。

― 肩書きを意識し過ぎることは、キャリアの可能性の芽を摘んでしまうことなのかもしれませんね。

たとえばどこかに属していて何かをつくる仕事の人は、会社組織の人間というより、“個性の集合体が会社だ”ぐらいに思った方がいいかもしれません。肩書きは社会で自分を守ってくれるものかもしれないけれど、考えや行動を制限してしまうものでもあります。「好き勝手やる」っていうと乱暴な言い方かもしれないですが、自分が楽しいと思えることを社会の常識とか置かれている立場なんか気にせず、気持ちよくやっていくことで初めて人との違いを知るし、面白いことも伝えられる。結果的にその方が仕事の役に立つと思います。ものをつくるうえで「僕はドコドコのナニナニです」はただの挨拶であって、中味がなかったら、それ自体は何の役にも立ちませんからね。

― お話をうかがって、自分の可能性にリミッターをつけているのは結局自分自身なんだということがよくわかりました。肩書きなんかに縛られずに、多くの人が自分のやりたいことと向き合えるようになればいいなと思います。今日はありがとうございました。

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