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【20時にはオフィスから人が消えるスタートアップ】会社から無駄な残業を減らす3つのヒント

スタートアップで成長を続けているのに残業をしない会社、グッドパッチ。ほとんどの社員が19時過ぎに退社しているという。一体なぜそれが可能なのか?
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スタートアップで成長を続けているのに残業をしない会社。それがUIデザインファーム・グッドパッチだ。受託案件と自社プロダクト、どちらも手がけながら、多くのメンバーは定時の19時過ぎには退社しているという。同社はなぜ「残業をしないスタートアップ」でいられるのか?

20時にはオフィスから人が消えるスタートアップ

「20時頃になるとオフィスに残っているのは採用面接を担当する僕だけ、なんてことがよくあります」

こう話すのは国内UIデザインファームの雄、スタートアップとして飛躍を続けるグッドパッチ社の藤井氏だ。

WEB・IT業界といえば、様々な業界の中でも人手不足などを背景に慢性的な残業、ハードワークが存在している。短期間に急速な成長を目指すスタートアップならばなおさらだ。昼夜いとわず自らの時間をプロダクトに費やすという価値観は大いに認められているだろう。

グッドパッチといえば、スタートアップから大手企業の受託案件とプロトタイピングツール《Prott》などの自社プロダクトの開発運営、その両輪で成長を続けている企業。彼らはなぜ「残業をしない組織」をつくり上げることができているのか?インタビューからかいま見えたのは3つのヒントだった。

Ⅰ.「朝礼+終礼」

Ⅱ.「1人1プロジェクトの原則」

Ⅲ.「創業者の思い」

右から、藤井 幹大氏(執行役員 組織デザイン担当)、村越 悟氏(ゼネラルマネジャー リードUXデザイナー)

山口 真朝氏(UXデザイナー)、竹田 哲也氏(プロジェクトマネージャー UXデザイナー)

ムダな残業撲滅の第一歩は朝礼終礼のメリハリから

まずどんな企業でも真似できることが、「朝礼と終礼の実施」。10時-19時を勤務時間とするグッドパッチでは、始業と終業の時間に必ず全社員が集まる(ちなみにフレックス制も導入されていない)。仕事の始まりと終わりでメリハリを付けるのが第1のポイントだ。

毎日19時ジャストに行なわれる終礼

「朝礼では、毎日変わる担当者が仕切ってLTを。さらに最近ベルリンにオフィスを構え、グローバル展開を強化している背景もあり、ワンオンワンで英語のセッションを行なっていたりします。また朝礼・終礼では代表の土屋がその時どきの幅広いトピックスを全員に共有する機会を設けています」(藤井氏)

グッドパッチで終礼がはじまったのは2年ほど前。無駄な残業を減らすために終礼をすることで区切りをつけ、ダラダラ残らないような施策として朝礼だけでなく終礼をスタートさせた。少人数のチームで仕事をするスタイル、さらには今年から自社事業と受託事業のオフィスが別になったこともあり、全員が顔を合わせてコミュニケーションを取る機会を大事にしているそうだ。

「やっぱりみんなで『お疲れさまでした』と言い合うだけで、締りが生まれるんです。ダラダラ仕事をするメンバーはいません。グッドパッチは副業OKなので、放課後みたいな雰囲気でプライベートワークをはじめる人もいるし、外部の勉強会に参加する人、家庭を持っていて定時ですぐに帰る人、と一気にオフィスから人が少なくなります」(竹田氏)

彼らの言葉の通り、グッドパッチはハードワークそのものを否定しているわけではない。実際に会社が残業を禁じていることはなく、各々が自主性を持って仕事をコントロールしているといったほうが正しいのかもしれない。

そもそも、グッドパッチには「全ての優先順位の1番上は家族」という考え方がある。創業者は家庭がありながら起業していることもあり、平日の夜でも家族と同じ時間を過ごすことを尊重している。そのため、家庭のあるメンバーは帰宅後は家族と食卓を囲み、子供を寝かしつけたあとに、Slackなどでメンバーとコミュニケーションを取ったり、自主的にカスタマーサポート業務にあたったりしているという。

1人1案件の原則を守り、大きな責任を与える

第2のポイントは「原則、掛け持ちをしない」こと。1人1プロジェクト制を原則にすることで、集中してプロダクトに向き合う仕組みを構築。効率的に業務に取り組み、高いデザインクオリティ、アウトプットを生み出せる働き方を実践しているという。

「私が制作会社にいた頃は残業が当たり前という風土がありました。その原因は過度にプロジェクトを掛け持ってしまうこと。グッドパッチでは原則一人一案件とし、極力掛け持ちにならないように会社としてプロジェクトのアサインバランスを調整している。そのため、受け持つひとつのプロダクトに大きな責任を与える。1プロダクトで勝負をかけるスタートアップや、新規事業、新サービスを立ち上げようとしている企業は四六時中そのサービスのことだけを考えています。そこにいくつも掛け持って片手間でやっているようでは想いの差で負けて真のパートナーにはなれない。僕らは単なるデザイン会社ではなく、一緒にプロダクトを生み出すパートナーとして仕事を請けているからこそ、このシステムが上手く回っているのかもしれません」(村越氏)

「グッドパッチの基本的なチーム構成は、1案件にディレクターもしくはPMとUIデザイナーが1人ずつアサインされます。また、ノウハウ共有やデザインクオリティの標準化・向上のために毎週全員で全プロジェクトのレビューを行ない、共有の場を積極的に設けています。レビュー会にはデザイナーだけでなく、PMやエンジニアも混ざり、グッドパッチ全員でプロダクトに向き合う機会を意識して創っています」(山口氏)

デザイナーだけでなく、エンジニア、PMも積極的に参加しているというレビュー会

デザイナーにとって、ひとつのプロダクトに向き合える環境はとても魅力的だ。グッドパッチは創業期からスタートアップのプロダクトデザイン案件をほぼ無償で請けるなどして、高い評価を残してきた。確かな実績とブランドを築くこと、過度に労働集約的組織にならないグッドパッチの取り組みは、多くの制作会社にとってヒントがあふれているかもしれない。

家族優先・企業カルチャーの源は創業者の思い

「残業が少ない会社であるというのは、何と言っても代表の思いが最も影響している」

そんな言葉が取材を通して数多く聞かれた。上記に挙げた働き方や制度以上に大きな影響を与えている代表の土屋氏の思いだ。

「やっぱりベースとなっているのが代表の思いなんです。ブログ(※)で書いていたとおり、土屋は平日はまっすぐ家に帰って家族と過ごす生活を続けています。実は掛け持ちしないというのも、土屋の経験からです。ウェブディレクター時代にすごく掛け持ちをして、ひとつひとつのクライアントに割ける時間が少なく、やりたくてもできない現状に直面してすごく悔しい思いをしたことが背景にはあると聞いています」(藤井氏)

「グッドパッチは闇雲に残業しない制度を整えたわけではないんですね。なぜそういう仕組みが会社の文化になっていのるか、その考えを紐解いてみると、やっぱり軸となる創業者の思いが一番強いし、それにみんなが共感しているからなんだと思います」(藤井氏)

現在60名を超えるメンバーの中で30%近くが家族を持っているというグッドパッチ。グローバルに展開する日本発のUIデザイン専門スタートアップという稀有な業態だけでなく、スタートアップの働き方に対するアンチテーゼにもなり得る、彼らのワークスタイルに今後も注目していきたい。

[取材・文]松尾彰大

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