命に関わる病気になることも...動脈硬化の診断法とは?

20代後半から始まり、加齢とともに進行するといわれている動脈硬化。放っておくと、心筋梗塞や脳梗塞など、命にかかわる病気に至ることもあります。

20代後半から始まり、加齢とともに進行するといわれている動脈硬化。放っておくと、心筋梗塞や脳梗塞など、命にかかわる病気に至ることもあります。

医学教育の基礎を築いた米国の内科医ウィリアム・オスラーは「ヒトは血管とともに老いる」と述べました。血管が老化する原因は、ストレス、喫煙、飲酒、運動不足、過食などの生活習慣、およびその生活習慣から発症する糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病です。それらを治療しないと心筋梗塞や脳梗塞、透析などの深刻な病気に至ることが知られています。

血管がつまる病気は梗塞とよばれ、血流が失われた臓器は壊死を起こし、再生不能となります。心臓や脳の血管がつまると命に関わることがありますが、私が専門としている腎臓では血管がつまっても命に関わることは多くはありません。

命にかかわるか否かの違いは、血管の太さと関係があります。心筋梗塞や脳梗塞は太い血管がつまる病気です。壊死する範囲が広くなるため、心筋梗塞で心臓の機能が失われたり、脳梗塞では麻痺が生じたりします。一方、慢性腎臓病は細い血管がつまる病気です。細い血管がつまっても壊死する範囲は狭いため、慢性腎臓病の進行はゆっくりです。しかし、慢性腎臓病の患者さんの多くが、全身の動脈硬化を抱えています。

慢性腎臓病が進行し透析が必要となった患者さんでは、透析用の血管(シャント)をつくる手術を行います。この手術では、腕の動脈と静脈を吻合するため、手術中に動脈を切開してその内腔を観察することができます。本来ツルツルであるはずの血管の内壁が、動脈硬化の進んだ血管ではゴツゴツしており、内腔も狭まっています。腕の血管と心臓や脳の血管の太さはほぼ同じなので、腕の血管で動脈硬化が進行している方では、心筋梗塞や脳梗塞にも注意が必要です。

動脈硬化の診断は、細い血管については眼底検査や尿検査、太い血管については血圧脈波や頚動脈エコーなどで行います。眼の網膜には細い血管が張りめぐらされているため、眼底検査をすれば動脈硬化の進行度がわかります。腎臓は尿をつくる臓器で、極めて細い血管が集まってできているため、尿蛋白が陽性の場合、動脈硬化が原因で血液中の蛋白が尿に漏れている可能性があります。血圧脈波検査では腕や足の血管の硬さ、しなやかさを測定し、頚動脈エコー検査では血管の内壁の厚みを0.1mmの単位で測定して血管年齢を算出します。

尿検査は健康診断に必ず含まれている最もポピュラーな検査ですので、是非お勧めしたい検査です。尿蛋白が陽性の場合には、全身の血管についてのさらに詳しい検査が必要です。動脈硬化の程度によって検査や治療が異なりますので主治医とよくご相談ください。

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【医師プロフィール】

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吉田 啓(よしだ ひらく) 腎臓・高血圧内科

1997年 東京慈恵会医科大学卒業

2002年 腎臓・高血圧内科入局

高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病などの診療のかたわら、血管についての研究に従事。

2014年 ひらくクリニック開設

一般外来の診療に加え、専門外来として透析患者さんの日帰りシャント手術を行っている。

日本内科学会専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析医学会専門医・指導医