まぶたが垂れ下がり、上がりにくくなる眼瞼下垂(がんけんかすい)。手術で片方を改善すると反対側のまぶたが下がることも......。まぶたの手術は非常にデリケートなのです。
片側の眼瞼下垂を手術した後、下垂のなかった反対側のまぶたが下がることがあります。これは、ヘリングの法則(Herring`s low : Equal innervation)で説明されています。
まぶたを引き上げる機能は眼瞼挙筋の作用です。眼瞼挙筋は脳神経の中の動眼神経による支配を左右のまぶたとも同時に受けています。眼瞼下垂により片方のまぶたが下がると、脳からの反射作用でそれを戻して引き上げようとする力が左右同時にはたらくため、下がっていないほうのまぶたを引き上げる力も強くなります。人によっては、下垂しているまぶたが普通に見えて、下がっていないもう片方のまぶたのほうが大きく見開いたように見える場合もあります。
下がっていた側のまぶたが手術で修正されると、脳が「もうそんなにまぶたを引き上げなくていいよ」と指令を出し、まぶたを引き上げる力が弱くなります。それは下垂を手術した側だけでなく、反対側にも同時に作用するため、反対側のまぶたが手術前より下垂することになるのです。左右のまぶたは言わばシーソーのような動きをするわけです。
片側性眼瞼下垂の手術後、約10%の人に反対側の下垂が生じるといわれています。この術前予測は困難ですが、いくつかの簡単な検査でわかることもあります。たとえ術前検査が陽性でも、同時に反対側の手術を行うことはしない方針です。同時に手術を行い左右のバランスを取るのは困難なためと、術後に反対側の下垂が起こったとしても1か月から数か月で自然に改善されることが多いためです。
いずれにせよ、まぶたの手術は非常にデリケートです。片側の眼瞼下垂の手術後、このような現象が起こることも知っておく必要があります。
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*<症例報告> 片側性眼瞼下垂の手術後、反対側に下垂を生じた2例:ヘリングの法則の影響 第48回日本形成外科学会学術集会(2005年4月、於東京)において報告した内容の一部です。
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