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2014年10月05日 17時51分 JST | 更新 2014年12月02日 19時12分 JST

サイボウズ式:日本人全体が働く意識を変えなければならない時期が今だ――元アップル社長 前刀禎明×サイボウズ 青野慶久社長

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ただモノを作っても売れない現代。ビジネスの発展には、新しい価値を作り出すイノベーションが求められます。前刀禎明さんは、日本でイノベーションを起こした立役者。MDプレーヤーが主流の時代にアップルジャパンで「iPod mini」をけん引、日本の市場に新しい価値観をもたらしました。

11月28日に東京、12月10日に大阪で開催する「cybozu.comカンファレンス2014」。イベントに先立ち、大阪会場の基調講演に登壇する前刀さんとサイボウズの青野慶久が対談。イノベーションの条件について語ります。

一人一人が意識を変える、セルフイノベーションの必要性

青野:cybozu.comカンファレンス2014」では、「日本企業が変革し、世界で勝つためには」というテーマでお話いただこうと思っています。前刀さんは「セルフイノベーション」という考えをお持ちですよね。イノベーションはよく耳にしますが、セルフイノベーションとはどういう考え方なんですか?

前刀:セルフイノベーションとは、一人一人個人が、常に自分自身を変え成長させていくことです。これが今一番必要だと考えています。

日本では繰り返し、グローバリゼーションやイノベーションの必要性が叫ばれていますが、なかなか実現していません。日本人は「イノベーションを生む組織とは」のようなマニュアルめいた話も大好きですが、それでイノベーションが起こるなら、すでにどの組織でも起きているだろうと(笑)

青野:一人ひとりの意識の改革、良いですね! イノベーションを起こすための仕組みを形式張って考えても、そんな仕組みはないんですよね。

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前刀禎明さん。愛知県出身、慶應義塾大学大学院修了。ソニー、ベイン・アンド・カンパニー、ウォルト・ディズニー、AOLを経て、株式会社ライブドアを創業。2004年、アップル米国本社マーケティング担当バイス・プレジデント兼日本法人代表取締役に就任。日本独自のマーケティングでiPod miniを大ヒット商品へと導き、「iPodの仕掛人」と呼ばれる。2007年、株式会社リアルディアを設立。五感教育、セルフイノベーション研修などを手がける。創造力と表現力を磨くアプリ「FACE」を開発。著書に「僕は、誰の真似もしない」(アスコム)、「人を感動させる仕事」(大和書房)などがある。

ダラダラ残業の働き方、もうやめませんか

前刀:セルフイノベーションを起こすために、日本人全体が働く意識を変えなければならない時期に来ています。経営者も社員も、意識を変えていこうと。でも日本ではダラダラと残業する人も多く、とても労働生産性が低いじゃないですか。

産業能率大学の調査によると、日本の新入社員で「社長になりたい」人はわずか9%。外国人はその3倍以上で、取締役まで含めると、半分が役員以上になりたいと思っている。この差を見ると、日本人の労働生産性は今後もどんどん下がってしまう。これは結構悩ましい事態だなって。

青野:僕らはクラウドで裏からきっかけを与えて、働き方を変革していきたいんですよ。クラウドを使ってもらうことが働き方を変えるきっかけとなり、より良い意思決定を促す。

前刀:ちょうどサイボウズさんのように、いい感じにビジネスの軌道が乗っていて、ある程度ポジションが確立された会社に入社すると、若い人は安心するんですよね。「あのサイボウズで働いているぞ」って。

でもそれは危険です。その意識を「これからチャレンジしていくんだ!」と変革することで、会社が活性化するんですよね。

青野:サイボウズは「日本一で納得せず、世界一を目指す」という目標で引っ張っています。目標がないと、日本一の地位で安住してしまいますから。

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顧客満足じゃ足りない、期待を大きく裏切ろう

前刀:イノベーションが起きる条件の1つとして、「顧客満足度」より「期待超越度」が重要になってくると考えています。

顧客満足は、お客さまの課題をクリアすれば得られますが、本質的な問題解決にはつながっていない場合があるんです。本当は、もっと次元の高い解決策を潜在的に求めているかもしれませんよね。

青野:確かに。

前刀:例えばシステムインテグレーターの場合。「システムを入れる前に、そもそも今のワークフローを精査して、無駄なことを省いてシステム化していますか?」って聞いてみると、意外とやっていないんです。クライアントの要求に伴ってそのまま作ってしまっている、と。

青野:冗長な業務プロセスそのものを見直さないで、そのままシステム化しても何もスピードアップしないですよね。

前刀:これは「ちゃんと要求はクリアしてくれる」というレベルを超えていないんです。こうなると大体横並びでコンペをやって、コストの観点で判断せざるを得ない。

青野:「このプロセスいらないんじゃないの?」という本質にまで踏み込めれば......。

前刀:「うわー、そこまで!? そうなんだよ、それが欲しかったんだよね!」となりますよ。感動ですよね。視野を高めて目に見えていないニーズを掘り起こしていく。それが期待を超えるということですよね。それをシステム開発会社がやると、ものすごく強くなる。

青野:視野を高くするということですよね。サイボウズでは社員全員に求めていて、今の仕事を1つ2つ外の視点から見つめてほしい。日本の大企業に入っちゃうと、物事を一面からしか見られなくなってしまいますから。これをどうにかしない限り、やっぱりイノベーションは起きない。

前刀:今後、大きなステップアップを狙うサイボウズさんが目指すところですよね。「やっぱりサイボウズさんは、自分たちが考えなかったことまで解決してくれる!」と言われたら良いですよね。

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「打合中にシステム完成」そんな価値基準を作ろう

青野:期待を超えるという点では、「kintone」という開発ツールが面白いんです。お客さんと打ち合わせしている間に、(ノンプログラミングで)ささっとシステムが作れちゃうんですよ。

前刀:へえ!

青野:打ち合わせ中に聞いたお客様のご要望をもとに、システムが作れてしまう。「こんなツールどうですか?」って見せると、「あれ。もうできたの!?」と驚かれます。

従来のシステム開発では、工数を時給換算してお見積りをしていた。だから、今目の前でシステムを作って提案するといったことはしたくなかったんですよね。

kintoneのやろうとしていることは、従来のシステムインテグレーションと真逆です。業界では嫌われるかもしれませんが、技術的に可能ならやってしまおうという感じです。

前刀:それもイノベーションの1つですね。僕が入ったころのアップルは、映像編集の分野でイノベーションを起こしたと思っています。2000万円くらい掛かっていた映像編集システムを、Macとソフトウェアを使って200万円程度でできるようにした。大きな価格破壊になりました。

青野:それはすごい!

前刀:ここで重要なのは、今目に見える先にある価値を高いレベルで創りだす意識です。これこそわれわれの仕事だという思いを持つ。短時間でささっとできることに、長い時間をかける時代ではありませんから。

ですから、工数以外の新しい価値基準を作り、提案していけばいいんです。ライバル企業が嫌がることをどんどんやってしまう。「サイボウズが入ってくるならコンペやめとこ......(小声)」って言われるようなサービスを作ってしまえばいい。

青野:是非やりたいですね。それではイベント当日の基調講演を楽しみにしております!

撮影:谷川真紀子

サイボウズ式編集部からのお知らせ:

2014年12月10日に大阪で開催される「cybozu.comカンファレンス2014」。基調講演ではサイボウズ 青野慶久が「この変化はリスクか、チャンスか」、特別講演では前刀禎明さんが「日本企業が変革し、世界で勝つためには」というテーマで話します。カンファレンスのお申込みはこちらのページから。

(サイボウズ式 2014年8月28日の掲載記事「日本人全体が働く意識を変えなければならない時期が今だ――元アップル社長 前刀禎明×サイボウズ 青野慶久社長」より転載しました)