サイボウズ式:「飲み会」を捨てたチームビルディング

会社で新しいプロジェクトが始まり、新チームが結成されると、まずは顔合わせということで「飲み会」が開かれることも少なくありません。「飲み会を開くこと」はチームビルディングの定番中の定番です。「とりあえず、飲みに行けば打ち解けられる」と、多くの日本人が信じています。今日も日本中のいたるところで、プロジェクトのキックオフに合わせた「飲み会」が開催されていることでしょう。

【サイボウズ式編集部より】

この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズ外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回は「脱社畜ブログ」の日野瑛太郎さんによる効果的なチームビルディングの提案です。

チームビルディングには「飲み会」が本当にベストなのか?

会社で新しいプロジェクトが始まり、新チームが結成されると、まずは顔合わせということで「飲み会」が開かれることも少なくありません。「飲み会を開くこと」はチームビルディングの定番中の定番です。「とりあえず、飲みに行けば打ち解けられる」と、多くの日本人が信じています。今日も日本中のいたるところで、プロジェクトのキックオフに合わせた「飲み会」が開催されていることでしょう。

ところが一方で、「実は飲み会が苦手だ」という人もいます。僕の知り合いにもお酒が一滴も飲めない人がいるのですが、そういう人にとって飲み会は必ずしも楽しい場ではないようです。みんなが酔っ払っていい気分になっているのに、自分だけ素面でテンションが合わないのは、想像以上に苦痛なのだそうです。「飲めない」と言っているのにも関わらず、無理にお酒をすすめてくる人間にいたっては「地獄に落ちるべき存在」とその人は断罪していました。

お酒自体は飲めるという人の中にも、会社や部署の飲み会が苦手だという人はいます。「業務時間外のプライベートな時間まで、会社のメンバーと顔を合わせて仕事の話をするのはまっぴらゴメンだ」と言う人がいたとしても、それはある意味当然です。誰もが会社と仕事のためだけに生きているわけではありません。プライベートで優先したいことがある人にとって、「仕事関係の飲み会」はできれば避けたいイベントのひとつです。そういう人の意見を突っぱねて、無理にチームの空気に従わせることが「チームビルディング」であるとは僕には到底思えません。

このように、「飲み会」は必ずしもチームビルディングの方法として万能ではありません。そこで今日は、「飲み会」に替わる効果的なチームビルディングの方法について、少し考えてみたいと思います。

そもそも、チームビルディングって何だろう?

そもそも、「チームビルディング」とは何なのでしょうか。

これについては色々な定義があるようですが、ここでは簡単に「チーム内で、効率のよいコミュニケーションができる状態を作ること」と考えることにします。チームは目的に向かって前進しますが、その目的達成のためにはチーム内で効率よくコミュニケーションが取れることが不可欠です。

「あの人、よく知らないから話しかけづらいなぁ...」

という状態では、効率のよいコミュニケーションはできません。そういう状態を早期解消するために、プロジェクトのスタートと同時に「飲み会」を開催して親睦を深めたりするわけです。

このように考えると、たしかに「飲み会」というのはチームビルディングのひとつの手段として、それなりに効果があるだろうことはわかります。しかし、前述のように「お酒が飲めない人」や「会社の飲み会が苦手な人」にとっては、必ずしも効果的とは言えません。むしろ、気の進まない飲み会によってヘンなしこりを作ってしまい、それによってコミュニケーションの効率が後退することだって考えられます。

思うに、「チーム内で、効率のよいコミュニケーションができる状態を作ること」ができるならば、手段は別に「飲み会」でなくても構わないわけです

「いやいや、酒が入らないとホンネでは語り合えないのだよ」

と思う人がもしかしたらいるかもしれませんが、そもそもこのようなアルコールの力を借りなければできないようなコミュニケーションが、どこまで仕事の役に立つのか僕には少し疑問があります。仕事はお酒を飲みながらやるわけではないのですから、アルコールを摂取しなくても効率的なコミュニケーションができるような状態でなければなりません。そういう意味では、「お酒は飲まずに」親睦を深められる方法のほうが、チームビルディングには適していると考えることもできます。

コスパ最強!「ランチ」によるチームビルディングのススメ

以上を踏まえて、僕が提案したいのは「飲み会」ではなく「ランチ」によるチームビルディングです。僕が「ランチ」を優れていると思う理由は、主に以下の3点です。

まず第一に、ランチにはアルコールはいりません。純粋に、料理の味を楽しめばよいので、お酒が苦手な人でもお酒が飲める人と一緒に楽しむことができます。飲み会のように一発芸を披露したり、上司に対して酌をする必要もありません。いわゆる「無礼講」ではないので、仕事のテンションの延長として親睦を深めることもできます。ランチの場を使って良好な関係が築ければ、それはダイレクトに仕事に効いてきます。

第二に、ランチはコストパフォーマンスの点でも飲み会より優れています。飲み会に参加すれば結構な会費がかかりますが、ランチであれば高くてもひとり1000円代で済ませることができます。短時間で終わるので、飲み会のようにグダグダになることも回避できます。短時間で低価格になった分、頻繁に開催することだって可能です。

第三に、ランチはプライベートの予定をほとんど侵食しません。もちろん、昼休みだって業務時間外であることにはかわりはありませんが、就業後に飲み会を開催する場合に比べればプライベートが受ける被害はとても小さいと言えます。昼間にチームのみんなとランチに行ったとしても、夜は自分の好きなことに時間を使えます。

僕は別に、チームビルディングの手段として「飲み会」を開催することを全否定しているわけではありません。チームのメンバー全員が望むのであれば、「飲み会」は十分有効なチームビルディングの手段になると思います。

一方で、「飲み会」でなければチームビルディングができないということでもありません。上述したように、「ランチ」だけでも十分にチームのコミュニケーション効率を上げることができます。

チーム内にどうも飲み会に乗り気でなさそうな人がいるとか、あるいは飲み会を開催しても参加率がよくないというようであれば、一度「ランチ」によるチームビルディングを検討してみてもよいかもしれません。

何も考えずに「とりあえず飲みに行こう」と言うだけでは、いいチームを作ることはできないのです。

日野瑛太郎さんより

普段は「脱社畜ブログ」というブログで、日本人の働き方の記事を書いています。このブロガーズ・コラムでは、チームワークという観点から働き方について新たな視点を提供できればと思っています。

(サイボウズ式 2014年4月30日の掲載記事「「飲み会」を捨てたチームビルディング」より転載しました)

イラスト:マツナガエイコ

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