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2016年04月22日 11時33分 JST | 更新 2017年04月25日 14時12分 JST

サイボウズ式:私は安倍総理に「育児と仕事の両立は無理」とはっきり言った、女性はもっと「できません感」を出そう──野田聖子×サイボウズ青野慶久

子供を産み育てやすい日本にしていくにはどうしたらいいのか、野田さんと青野社長がそれぞれの経験から語ります。

当選回数8回、キャリア23年の衆議院議員である野田聖子さんとサイボウズの青野慶久社長には、両夫婦とも「妻側の姓」に夫が変えたという共通点がありました。野田さんはプライベートでは一児の母であり、女性の活躍や少子化対策にも熱心に活動されています。

2015年末より公開したサイボウズ ワークスタイルドラマ「声」(全6話)を見てお話しいただいた、この対談。 連載第1回(全3回)では、夫婦コミュニケーションや子育ての経験談、子供を産み育てやすい日本にしていくにはどうしたらいいのかなど、野田さんと青野社長がそれぞれの経験とリアリティーから語ります。

私は安倍総理に「育児と仕事の両立は無理だ」とはっきり発言した

青野:サイボウズのワークスタイルドラマ「声」をご覧いただいたということで。

野田:すごくよかった。最近のドラマにも見習ってほしい部分が多かった。現在育児をしている自分にもシンクロするところがあって、刺さりました。

青野:ありがとうございます。心が痛くなる内容なので、受けないしあまり視聴率は取れませんが(笑)。

野田:まず映像が綺麗でしたね。ストーリーは当然のことながら映像のクオリティの高さにびっくりしました。

「働くパパ」に焦点をあてたワークスタイルドラマ「声」

青野:これは制作をしてくれている東北新社という会社が、もう会社挙げて赤字覚悟で作ってるんですよ。僕らも結構お金は出しているんですけれど(笑)。制作スタッフの監督、プランナー、プロデューサーら自身も実際にワーキングマザーで、もう異常な熱意が込もっています。

野田:たしかにこれはすごかったです。

青野:一作目のワークスタイルムービー『大丈夫』はワーキングマザー対象だったんですが、こちらも大変な熱意で作ってくれました。見ていても細部のクオリティがすごかったんです。

野田:あれを見て、「こんな、見ると暗くなるムービーは逆効果」と批判する人もいたようですが、私は「だってこれがファクトでしょ」って思いました。

青野:そう、ファクト、現実であり事実なんですよ。

野田:私がいつも気になっているのは、自民党の女性議員や大臣になった女性もそうなんですが、妙に全部頑張ってしまう。「全部できます感」を出すことに違和感を覚えるんです。もっと「できません感」を出してくれないと、世の中が変わらないとよく言っています。

青野:そのへん、野田さんは自然体ですよね。

野田:これくらいの年になると失うものがないので(笑)。政治家としてのキャリアも長いですし。例えば、選挙で投票してくれた人の想いに反する形になったとしても、言うべきことや、やるべきことは進めなければならないんです。

私が党の総務会長になったとき、予算委員会の代表質問で安倍総理に「育児と仕事の両立は無理だ」ってはっきり発言したんですよ。もっと他の議員も同じように言って欲しいんですけど、みんなやせ我慢して、言わないんですよね(笑)。

野田聖子さん。1960年生まれ。衆議院議員。上智大学外国語学部比較文化学科を卒業後、帝国ホテルに入社。祖母・野田光の死去に伴い、野田卯一の養女となり野田姓を継ぐ。87年岐阜県議会選挙当選。93年、32歳で衆議院議員選挙初当選。現在当選8回。98年、郵政大臣就任。福田、麻生内閣で内閣府特命担当大臣(科学技術政策・食品安全)、消費者行政推進担当大臣、宇宙開発担当大臣、自由民主党総務会長等を務める。プライベートでは一児の母

青野:そうですね、トップオブトップの理想像を目指せとか、そんな感じですよね。それでは自然な社会を作れない。

野田:私たち政界の人間こそがダメ出ししないと、企業の経営者は変わらないし、職場も変わりませんよね。私は職業上、会う人や時間など、仕事のスケジュールはある程度自分でコントロールできます。

でも、そんな自由裁量を持つ政治家の私でさえも、育児という理不尽なバトルに負けて、折れることがある。だったら雇用される側である若い人にとっては、育児と仕事の両立は相当大変だろうなと。私はそれが理解できるので、私自身は自然体で生きているんです。

愛する子供のために力は湧くけれどクタクタ、夫を愛する気力が残らない

青野:すばらしいですね。なぜそれに手を挙げて賛成する女性が少ないのかな。

野田:みんな頑張っちゃうんですよね。

青野:女性は女性で、スーパーマザーを目指しちゃうのかな。

野田:たしかに力は湧いちゃうんですよ。愛する子供のために力は湧くんだけど、でもクタクタなんですよね。夫を愛する気力が残らないくらい(笑)。

(女性スタッフ一同激しく同意) 

青野:すごい首振ってますね(笑)。いま逆に、男性側にその波が来ていて。イクメンという考え方が出て、「男は大黒柱であるべき」にさらにイクメンがのってきたので、大黒柱をおろせないまま家事育児を頑張ると......。

野田:破綻だよ! 

青野:そうなんですよ! 今度は男が折れ始めているんです。

野田:だから、シェアの意識を持たないと。大黒柱じゃなくて"小黒柱"2本、その代わり育児もシェアっていう、そういう働き方を提案したらいかがですか?

青野:面白い! 何かネーミングが欲しいですよね、大黒柱に変わりうる何か。"小黒柱2本"っていいですね。その方が安定して走行できそうですよね。

野田:現在、夫に育児を任せているので、家庭では私が大黒柱です。私の収入だけで生活しています。えらいでしょ(笑)。だからスーツが買えなくて、何年も前のスーツをずっと着ているんですよ。

家族を養うって、相当お金がかかるんです。だから夫が「いいよねー君は毎晩お酒飲んで」なんて言うと、頭の中では「誰が家賃払ってるんだ。誰が保育園行かせてるんだ!」と思ってしまって(笑)。

青野:男化された発想ですね(笑)。

野田:でも口先では「ゴメーン」とか言って、朝には子どもの朝ごはんをいそいそと作ったりするわけですよ。腑に落ちないと思いながら。夫のは作りませんけれど(笑)! だから男の気持ちがわかるんです。一生懸命働いているのに、それはないでしょ、って。

青野:そういうのが社会の中で混じって葛藤してきて、ようやく前進できるような気がします。タレントの小島慶子さんも同じようなことをおっしゃっていたましたね。夫が仕事を辞めると言ったら、「おまえ男だろ!」って思わず思ってしまったという。いままでジェンダー論を否定していたひとなのに(笑)。

野田:なるほどね。私の場合は夫が国会議員の立場を理解してくれていたので、おのずと私が大黒柱になった。その代わりに、できる限り私が養っていくと。

青野:そういう役割分担のケースができるといいですね。夫婦の進歩的な働き方を推し進めると、一歩間違うとそれまた「小黒柱2本じゃなきゃいけない」とか「家事育児しなきゃ」とか、どれが正解だとか"べき論"になってしまうことがある。これがまた次の世代に残るのは嫌だなと。もっと色々なケースがあっていいよねーって。

仕事のできる女性は、結婚相手に何かを求めなくてもいいんじゃないか

野田:現在最も非婚率が高いのが、20代の非正規雇用の男性なんです。女性はフルタイムの高収入層。ここのマッチングがうまくいけば、新しい結婚の形ができるんじゃないかと。

でも男性では甲斐性とか大黒柱とかの意識が邪魔をしている。そして女性側も、優れたキャリアを持って、男性より力があっても、自分よりステータスのある人を選ぶ傾向があるのが不思議です。女性はまだ乙女志向なのかなぁ?

青野:そのカップルが増えてくると面白いですね。

青野 慶久(あおの よしひさ)。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。2011年から事業のクラウド化を進める。総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)がある

野田:私の夫は高卒ですが、たまに新聞や雑誌の記者に「大臣まで経験した野田さんが、なぜ高卒の男性を伴侶に選ばれたんですか?」なんて聞かれるんです! マスコミの人はそういう意識なんだなって......。

青野:でもそのタイミングでその結婚をするのは、周囲の反響を予想すると勇気がいりませんでしたか?

野田:学歴とかですか? 色々言われるとは思いました。私の母はかなり東大信仰なんです。でもそこはうやむやにして、学校はどこと聞かれても「関西のほう」とか言いながら、誤魔化しました(笑)。

青野:自然体ですねえ!

野田:もう無理はしたくなかった。私は26歳からこの仕事をしていて、他に何の取り柄がない女なんです。今まで子どもも育てていないし。せいぜいお酒が強いくらいで、おじさん化して、仕事で頑張ってきたというのが、私が世の中にかろうじて存在できている自信で。容姿も自信ないし。

でも夫は、『いつみても波瀾万丈』というテレビ番組で、郵政選挙の頃に小泉元総理と戦っている私を見て、女の人なのに頑張っているなとすごく気に入ってくれていた。ファンだったんですね。私の仕事っぷりが好きだと言ってくれたので、じゃあこの人に自分を託そうかなと。今後も仕事を続ける上で、そこをやっぱり理解してくれる人と一緖になった方がいいって。

青野:すごいストーリーですね。

野田:だからもう、仕事のできる女性は相手に何かを求めなくてもいいんじゃないか。自分を理解してくれる、それだけでもいいんじゃないかと思うんですけれど。

逆に自分より上の男性を選んでしまうとそっちに引きずられてしまって、自分の仕事ができなくなると思うんですよ。キャリアを継続したいのなら、そういう選択もありですよ。うちの場合、夫は年齢も7つ下です。

青野:いいですねぇ。

野田:でも夫の名誉のために付け加えると、彼を選んだのは自分を愛してくれるだけではなくて、人としての尊敬があるからです。

私が尊敬する3大要素というのが、私よりも「歌がうまい」「字がうまい」「漢字を知っている」で、彼はオールクリアなんですよ。彼と婚姻届け出すときに、向こうはスラスラ達筆で書いているのに私は下手なのですごく恥ずかしかった。

そういう普遍的なものが大事です。一生尊敬できる、一生乗り越えられない優れたところがある。それで一緒になれるんですよね。学歴なんて大したことじゃない。

青野:そうですよぇ、やはり体裁なんかで決めることじゃない。違う意味での三高ですね「歌・字・漢字」って(笑)。

野田:でも私にとってはものすごく大事なの、この3点。その尊敬は揺らぎません(笑)。

法案抱えて頭が一杯でも、おむつ交換でスッと頭がリセットされる醍醐味

野田:みんな、私の経験に照らせば結婚して家庭は持ったほうがいいと思います。健康管理もできるし、あとは一人でいると仕事のことばかり考えて、リセットできないですよね。リセットできるでしょ?子供がいると。

青野:そうなんですよ!

野田:オムツ変えている時はサイボウズの社長という自分を忘れるでしょ(笑)? それすっごい大事なんですよ。

青野:子どもって、急に来ますもんね(笑)。

野田:いろいろな法案を抱えて頭が一杯になっている中、あのおむつ交換でスッとバグが取れるというか。あの醍醐味っておむつを変えるときしかわからない。

青野:あります、あります。

野田:育児していると、嫌なこととか忘れますよね。もっと大変な目に遭うから。世の中で子供ほど理不尽な存在っていないと思う。だっていきなりぶってきたりするもんね! 取引先の人はそんなことしないでしょ(笑)。

青野:今朝、次男が保育園連れていくときに座り込んじゃって参っちゃいました。「起きろよー!」って言っても立ち上がらなくて、抱っこして保育園まで歩くことになって。そうしたら、抱っこした瞬間に「あるこうあるこう、わたしは元気~」なんて歌を歌い始めるんですよ。元気ならお前が歩けよ~!って(笑)。

野田:余裕があるときはいいけど、焦っているときは辛いですね。出がけが一番辛い。会議があります、下で迎えの人が待ってますという時に、おむつ替えのタイミング。火が噴きそうになりますね。

青野:そうですねー。(しきりにうなずく)

野田:でもそれがメリハリになるんですよ。関わっている世界と真逆の世界を持つことが、キャリアウーマンには必要かも。怒りとともに、「自分には仕事しかない」なんて思い込んでいたテンションが変わるんですよね。

焦るとミスが増えるから、仕事中は緊張しちゃいけないんですよね。心に遊びがないと。ですから私はゆるゆるですよ、仕事中(笑)。

青野:もう、野田さんから自然体な感じが溢れてくる(笑)。

「働くパパ」に焦点をあてたワークスタイルドラマ「声」。主人公は、東京の会社でエンジニアとして働く片岡(田中圭さん)。妻・亜紀子(山田キヌヲさん)との気持ちのすれ違いや、親の看病のために会社を辞めて帰郷した先輩・森嶋(オダギリジョーさん)とのやりとりを通し、いま、共働きで子育てする夫婦を取り巻く環境や困難をリアルに描く

第2回 「男性育休」「夫婦別姓」「配偶者控除」、なにが女性の活躍を阻むのか につづく

文:河崎環/写真:谷川真紀子/編集:小原弓佳

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本記事は、2016年4月15日のサイボウズ式掲載記事私は安倍総理に「育児と仕事の両立は無理」とはっきり言った、女性はもっと「できません感」を出そう──野田聖子×サイボウズ青野慶久より転載しました。