サイボウズ式:漫画家ユニット「うめ」夫妻の仕事と子育て、父母会の変え方

漫画家ユニット「うめ」の小沢さんに、夫婦というチームでの共同作業&生活や、保育園の父母会を"スリム化"したお話について聞かせてもらいました。

夫婦漫画家ユニット「うめ」で、原作やプロデュースを担当する、夫の小沢高広さん。作画は、

妻の妹尾朝子さんが担当。代表作『大東京トイボックス』は2014年にドラマ化。11月12日(木)、『STEVES(スティーブズ)3』発売!ふたりの育児を描いた「ニブンノイクジ」もWebで好評連載中!

STEVES(スティーブズ)』(小学館ビッグコミックスペリオール)、『ニブンノイクジ』などを連載中の、人気漫画家「うめ」。作画のデジタル化や電子書籍のセルフパブリッシングにいちはやく取り組み、業界内外に知られる「うめ」さんですが、コレじつはご夫婦のユニット名。妻の妹尾朝子さんが作画を、夫の小沢高広さんが原作やプロデュースを担当しています。

今回は小沢さんに、夫婦というチームでの共同作業&生活や、保育園の父母会を"スリム化"したお話について聞かせてもらいました。

「ルーチン化」するのがいちばんラク!

大塚:仕事から家事、育児までごいっしょに取り組まれているとは、最強のご夫婦ですね。おうちのことは、どんなふうに分担されているんですか?

小沢:保育園の送り迎えは、その日時間があるほうが行く形です。料理だけは100%、僕。ちょうど今日は遠足で、子どものお弁当を作ってきました。

大塚:じゃ、今朝は早かったですね。

小沢:いつも大体3時半には起きてるんですよ。子供と一緒に22時くらいには寝ちゃうので。 子供できる前は、夜中から明け方まで仕事をしていたんですけれど、子供ができてからはそれじゃまわらなくなった。寝かしつけてから仕事をやろうとすると、子供が寝ないときイライラするし、子供のほうも、親が早く寝かせようとしているのがわかると、「おまえの思い通りになってなるものか!」みたいな感じで、寝ないので。

大塚:そうなりますよね!(笑)

小沢:だから「わかった、いっしょに寝よう!」ということで、子供といっしょに早く寝てしまう。その代わり、体力差にモノを言わせて早起きする、という方法を採ったら、こういうライフサイクルになりました。

大塚:とっても合理的です。お仕事は何時頃までされるんですか?

小沢:夕方、17時半か18時くらいまでで終わりです。そのあとは、よっぽどのことがない限り、仕事はやらないですね。打ち合わせや取材以外で、夕飯より後に仕事をすることは、年に1、2回、あるかないかぐらいの感じです。

大塚:すごい管理力ですね。フリーランスって延々と仕事をしちゃいがちですけれど、きっぱりと線を引いていらっしゃる。

小沢:毎日決まった時間に仕事をするように、ルーチン化するんです。何でもルーチンにしたほうが、人間ってラクじゃないですか。会社に通勤する人も、「毎日同じ時間に電車に乗る」ということで、生活をルーチン化していくわけで。あれはむしろ、ルーチン化するためのシステムですよね。

大塚:そうか、つまり通勤という「ルーチンの儀式」がない人は、自分でルーチンの部分をつくっていくことで仕事がしやすくなるわけですね。在宅仕事をする人間として、参考になります。

「ちゃんと」しなくても打ち合わせはできる

大塚:お子さんが生まれた直後は、お仕事はどうされていたんですか?

小沢:妹尾は出産前に書き溜めをして、少し休んで、1か月くらいで復帰していました。身体が辛くなったらいつでも横になればいいので、ゆるめにギリギリまで仕事をしていました。

大塚:ご自宅でお仕事されているので、そういう点は融通が利きますよね。

小沢:僕と打ち合わせするのだって家のなかですから、寝ていたってできるじゃないですか。「ちゃんとしている」必要はないんですよ。極端な話、頭さえ働いていればいいんです。

必要以上に共感しないのも大事

大塚:うめさんご夫婦には、"産後クライシス"みたいなものはなかったんですか?

小沢:僕は感じなかったですけれど、妹尾に聞くと「メンタル面で、それなりに大変だったよ」と言ってました。感情の触れ幅がいつもより大きくなるとか、そういうのはあったみたい。 でも、うちはまあまあ、なんとかなっちゃったほうなんでしょうね。もっと大変なご家庭が多いみたいなので。

大塚:お2人とも合理的だから、話がこじれにくいんですかね?

小沢:喧嘩はしますけどね。でもこじれたら必ず"ログ"をとるので、話がループしにくいんです。お互いが話した内容をその場で打ち込んでテキスト化して、それを見ながら話をすると、前に進みやすい。

大塚:夫婦喧嘩もデジタル化によって時間短縮......!

小沢:あとは、「必要以上に相手の気持ちにならない」っていうのも心がけてます。まして妊娠出産など、相手がホルモンバランスの影響で感情の浮き沈みが激しくなっているときに、こっちまでいちいち感情移入していたら、波が大きくなるだけじゃないですか。

大塚:よく「妻の話には共感を」とか言いますけれど、逆なんですね。

小沢: 1人目の子供が生まれるときは、僕も初めての経験だったので、それなりにどきどきしてたんです。生まれる直前に「急きょ、帝王切開になるかもしれない」と言われて、あわてて帝王切開のことをいろいろ調べたり、確率的にはまず起こりえないような心配をしたり、それはもうバタバタしてました。結局、帝王切開にはならなかったんですけれどね。

このとき僕、たぶん感情移入したんです。向こうが多少大変だったときに、なんか過剰に「どうにかしよう!」って思っちゃった。

大塚:お優しいです。

小沢:でも2人目のときは、「出産で痛いのは、どうせ俺じゃねえし」という感じ。「頑張ってねー」っていうだけで、落ち着いてました。一緒になって慌てたり心配したりしても、問題は何も解決しないですからね。

大塚:小沢さんはもともと共感力しやすいタイプの方だから、スイッチを切ったくらいでちょうどよかったのでは?

小沢:あ、そうなんですかねー。 あとは、たまたま妹尾が、共感を求めるタイプじゃなかった、というのもあると思います。よく、女性の話は「そうだね!」って聞いてあげるとよい、みたいな話がありますけど、妹尾はあんまりそのタイプじゃない。共感よりも、解決を求めるタイプ。もし共感を求める類の苦しみの発露であれば、対応法は違ったのかもしれないです。

大塚:なるほど。妻のタイプや、そのシチュエーションに応じて、対応を考えるべしと。

父母会は「なんとなく、変えられそう」と思った

大塚:ところで、小沢さんは一昨年、お子さんが通っていた保育園の父母会を"スリム化"されたそうですね。「全員入会→任意入会」、「集会を年10回→3回に削減」、「広報紙→壁新聞に変更」など。何か、きっかけがあったんですか?

小沢:子供のときから「なんで、そういうのやるの?」というのは思ってました。親がPTAの役員決めとかで揉めてるのを見て、「やんなきゃいいじゃん」って言ったことがあります。 そういうのが自分にもふりかかってきたんですよ。子供が保育園に入って学年が上がるにしたがって、役員決めとか、行事の係分担とかが出てくる。「あー、これが小学校のときに、親が揉めてたやつか!」と。

大塚:「やんなきゃいいのに」と思っていたアレが、ついに我が身に!

小沢:でも、なんとなく「変えられそうだな」っていう気がしたんです。親の時代ほど「従わないとダメ」っていう空気はないな、と思って。「なんとかなんじゃね?」と思った。それが、きっかけですよね。

大塚:なんで、そんな気がしたんですか? ほかの保護者の雰囲気?

小沢:そうですね。年に2回ぐらい親同士の飲み会があったり、朝夕の送り迎えで顔を合わせたりしていたので、大体、様子はわかっていたんです。みんなめんどくさがってるって。「このメンツだったら、できるんじゃないの? うるさく言う人も多くなさそうだし」というのは、思いました。

大塚:それで自分から役員に?

小沢:いえ、最高学年になるとき、前任者から「(会長)やんない?」って頼まれたんです。「やだよ!」って一度は断ったんですけど、「(小沢さんが)やらないと、"熱心な人"がやるよ!」って言われて、「それはコワいね」ということで。

大塚:あー(笑)。"個人的に熱心な方"ならありがたいんですけれど、"保護者全員に熱心さを強いる方"も、たまにいらっしゃいますよね。そうすると、みんな大変なことになるから......。

小沢:それです。で、会長を引き受ける代わりに、条件を出しました。「来年度の父母会の役員の人選を、ある程度やらせてほしい」と言って、半数をお父さんにしたんです。あまり親同士のつながり、しがらみがない人を使いたかったので。

大塚:何か変えるときは、しがらみのない人のほうがいい場合もありますね。

後編に続く

文:大塚玲子 写真:内田明人 編集:渡辺清美

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本記事は、2015年12月3日のサイボウズ式掲載記事必要以上に相手の気持ちにならないこと──漫画家ユニット「うめ」夫婦がうまくいく理由より転載しました。