サイボウズ式:仕事の本質は「いかにラクをするか」

先輩の教えに通底していたのは、「前向きな怠惰」が仕事のレベルを上げる、という考え方でした。

サイボウズ式編集部より:著名ブロガーによるチームワークや働き方に関するコラム「ブロガーズ・コラム」。はせおやさいさんのコラムです。

真面目に仕事をするのは楽しい

※本記事は、2016年7月 7日公開の記事を転載したものです。

気付けばもう2016年も、半分が終わりました。新しい配属先や仕事に馴染んで、仕事が軌道に乗り始めた頃でしょうか。新入社員のみなさんは、会社に入ってから3ヶ月を終えたところですね。

新しい環境に入って3ヶ月というのは、自分がいる場の勝手がだいぶ分かってきて、すべきことが見えてくるタイミングかもしれません。与えられた新しい仕事が自分の手に馴染み、おそるおそる踏んでいたアクセルも、自信を持ってグッと踏み始めると同時に、気付けば残業が増えていた......なんてことはありませんか?

できることが増えると、仕事の面白さは増します。そうすると楽しくなって、新しい仕事をどんどん引き受けてしまい、つい、長時間労働に偏りがち。特に新入社員など、まだ仕事人として立ち上がり期にある人の場合、一定の時間、仕事に没入するのも手段の1つです。精度が低くても、回り道でもいいから、ひたすらに「数」をこなす。そうすることでしか見えない景色も、きっとあるかと思います。

でも、それをいつまで経っても続けていて、いいのでしょうか?

実はその次のフェーズに本質がある

質より量。わたしの20代も、まさにそんな感じでした。

会社に入り、知らないことを教えてもらい、自分の得意なことが見えてくると、やれる範囲が増えていきます。あれもやりたい、これも面白そう、と手を広げ、細かい仕事も厭わず引き受けて、あっという間にたくさんの仕事を抱えるようになりました。

朝、定時に出社しても、夜、帰るのは終電間際。若くて体力もあるし、周りの先輩たちに追いつきたい気持ちもあって頑張れていましたが、正直、「こんなにたくさんの仕事を抱えて、一生懸命頑張っている自分=頼られている自分」が好き、という側面もありました。

当時は「考える仕事」より「手を動かす仕事」が多く、企画書や資料の作成や議事録を取るなど、とにかく細かい仕事が多かった。数をこなせば達成感はありますし、「いま、いくつ案件を抱えているの?」と聞かれて答えたとき、「ええ!そんなに!」と驚かれるのが少し優越感でもありました。残業時間が積み上がるのは努力の証拠、休日出勤はわたしの能力が求められているから! そんなふうに思っていたのですが、ある先輩に、ガツンと言われる日が来ます。

「お前のやってるそれ、『仕事』じゃねえからな」

そう言われて、最初は意味がわからず、思わず反発しました。

何十本も企画書を書いてるし、頼まれた資料もちゃんと作っている。提案だって通ってるし、ほめてもらってることだって、たくさんあるのに! と思って悔しくて、より一層、仕事を抱えました。

出勤時間は膨れあがり、たくさんの雑務を抱えて、「いつも会社にいるよね」と言われるようになっていたとき、同じ先輩に「お前、『仕事』ってなんだと思ってるの?」と問われたのです。

それは会社の飲み会の話で、くつろいだ場の雰囲気の勢いを借り、そんなふうに言うくらいなら、教えてくださいよ、先輩のいう『仕事』ってなんですか?クオリティの高い企画書を作ること?要望通りの提案を通すこと?たくさんのお金を持ってくること?

先輩の答えは、シンプルでした。

「俺がいなくても、回る仕組みを作ること」

仕事は「定型化」してからが本番

当時のわたしにはなく「仕組みを作る」という視点はなく、虚をつかれました。

「俺たちがすべき仕事は、与えられた『作業』をこなすだけじゃなく、その『作業』を平準化し、誰にでもできる『仕組み』を作ること。

なぜなら、その『仕組み』が金を生むからで、俺たちはその金を生む仕組みを作るために会社から給料をもらっている。だから、お前みたいに目の前の『作業』をこなしているだけだと、会社が期待する『仕事』のまだ半分レベルってところだよ」

と続けざまに説明され、自分が「仕事をしているつもり」と指摘された理由が、明確になりました。確かにわたしは目の前の作業を「こなす」ことにばかり意識が行っていて、その作業をもっと効率よくやろうとか、自動化しようとか、「自分以外の人がやってもできる状態にしよう」という考えは、ありませんでした。

でも、同時にある疑問が浮かびました。そうやって自分の仕事を『誰にでもできる仕事』にしてしまったら、自分の仕事がなくなってしまうのではないだろうか?

この問いには、間髪入れず「そしたらまた次の『誰も平準化していない仕事』を見つけて、そっちに着手するんだよ」と答えられ、「そうやって社内の『作業』を平準化して、金が生まれる仕組みを次から次に作ることが、俺たちに期待されている『仕事』だろ」と諭され、以来、彼を師匠と仰ぐこととなるのです。

以降、彼から伝授された教えが多くあるのですが、いくつか紹介します。

  • 2回以上、同じ仕事を繰り返したと感じたら、定型化するか、自動化しろ
  • 企画書でもメールでも議事録でも、テンプレート化することを常に考えろ
  • 使い回すことは悪ではない、使い回しを使った資料をブラッシュアップしないことが悪
  • 長い時間働くヤツがえらいんじゃない、より短い時間で、より高い成果を出したヤツが一番えらい
  • ラクをする理由は、時間の余裕を持っておかないと仕事のレベルを引き上げることができないから

これらを始めとする先輩の教えに通底していたのは、「前向きな怠惰」が仕事のレベルを上げる、という考え方でした。ただサボりたい、ただラクをしたい、のではなく、ラクをして、時間の余裕を作ることで仕事の内容の見直しをしたり、見落としをチェックできる。そうすることが、最終的には自分の市場価値を引き上げることにつながる、という考え方です。

目先の『作業』に追われている限り、仕事を俯瞰で見ることはとてもむずかしいです。そして今やっている『作業』をいかにラクに終えるかを考え続けることは、その『作業』の本質を見抜こうと考えるのと、とても似ています。

本質を見抜くことができれば、逆にしなくていいこと、省略できることが見えてくる。そうやって自分1人でできる仕事の量を増やしていくことが自分にとっても、会社にとっても重要で、必要とされる人材の要件だったのです。

「ラクをしたい」という気持ちは、悪ではありません。その気持ちにフタをしてしまうことで、見えなくなってしまう部分がたくさんあります。

むしろ「ラクをしたい」という気持ちをよりプラスな方向へ向けてどんどんラクをすることで、自分のできる範囲を増やし、スキルを磨くという視点を持ちましょう。「前向きな怠惰」、ぜひ取り入れてみてくださいね。

今日はそんな感じです。

チャオ!

イラスト:マツナガエイコ

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本記事は、2016年7月7日のサイボウズ式掲載記事仕事の本質は「いかにラクをするか」より転載しました。

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