サイボウズ式:目標は立てる過程で議論することに価値がある

「言語化された目的」と、「計測可能である目標」。この2つを意識して、新しい年の目標を立てるのもよいかもしれませんね。

サイボウズ式編集部より:著名ブロガーをサイボウズ外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただく「ブロガーズ・コラム」。はせおやさいさんが考える「目標を目標のまま終わらせないための考え方です」。

目標設定、どうしていますか?

こんにちは、はせおやさいです。

いよいよ年の瀬。今年の振り返りをするとともに、次の目標を意識する季節でもありますね。以前、「目標設定後の運用」について書きましたが、今回は「目標の立て方」について触れてみようと思います。

一方的に押し付けられた目標は、紙上に兵を談ずるだけ

突然「今期の目標は100億円の売り上げ達成である」と発表され、一同ポカン......という経験はありませんか。そこまで極端ではなくとも、経営層から現場に落ちてくる「目標」というのは、どうしても「会社運営のために必要な売り上げを確保すること」に重きが置かれがち。

そうなると、目標=数字になってしまい、数字を追うことだけに必死になってしまうケースが、ままあります。

もちろん、会社の存続も重要ですし、売り上げは会社の構成員として無視してはいけない数字です。ですが、落ちてきた目標をそのまま受け止めるだけでなく、現場でも「この事業部/チームは何をどう達成すべき集団なのか?」を議論することが重要なのではないかと思います。

目的を見失わなければ、人は走り続けられる

以前、こんなできごとがありました。

あるサービスを立ち上げたとき、出だしが思いのほか不調で、担当チームが迷走しはじめました。伸び悩む利用者数やページビュー(PV)に、空気がよどみ始めます。こうすれば利用者が増えるのでは、こうすればPVが伸びるのでは、と施策を出しあったものの、だんだんアイデアが出なくなったとき、初心に戻り、サービスを立ち上げたときのコンセプトシートを全員で読み返すことにしました。

そこには「なぜこのサービスをやるべきか」「このサービスが利用者の生活をどんなふうに幸せにするか」が語られ、それを一言で表せる「コンセプト」がまとめられていました。もちろん「このころは理想ばっかり言ってたね」という見方もできますが、この振り返りはチームに良い影響をもたらしました。

一度「WHY」に立ち返ったことで、自分たちの「すべきこと」が明確になったからです。

目先の利用者数やPVから目を離し、「このサービスですべきことは何か」から改善案を出していきました。われわれがすべきことの優先度が最も高いのは、数字を積み上げることではなく、WHYを実現すること。ただし、そのWHYを実現するための施策の中から、より「数値達成に近いもの」を選ぶことにしました。

「目的」と「目標」をセットにすることで、目線をぶらさず、かつ、優先度の判断基準を明確にしようと思ったのです。

この「目的」と「目標」をセットにしたのは非常に有用で、会議やアイデア出しの場では必ず目に触れる場所に掲げるようにしました。議論が迷走しそうなとき、必ずその「目的」に立ち返り、その施策は目的から外れていないか、目標を達成するのに足りうる施策か、を検証しました。

「すべきこと」と「それが達成されたと言っていい数値」の両方を満たすということが、縦糸と横糸のようにしっかりと織られたとき、全員の意思決定の精度が上がり、爆発的にスピードが上がりました。

目標は議論することに価値がある

与えられた目標数字は必達ですが、そのプロセスや手法を議論するとき、判断する基準になるのが「目標」です。目標が指すもの、つまり、売り上げやKPIは結果としてあらわれる数字であり、最終的な数値ですが、それとはまた別に、「この集団でどんな目標を達成するべきか?」「この集団は、どんな社会的価値を果たすのか?」を定めておく。そうすることで、各メンバーの自立を促すことにもつながるのではないかと思います。

そのためには、2つの指標をそれぞれ分けて持つとよいかと思います。

まず1つめは「言語化された目的

そして2つめは「計測可能である目標

「なぜ」この仕事をする必要があるのか、それは何のための仕事なのか。自分たちはどうしてこれをやるべきだと思っているのか、を議論する過程で確認しましょう。

WHYでしか人は動かない。Appleが「Think different」というスローガンを掲げ、アインシュタインやボブ・ディランというような「世界を変えた人たち」をフィーチャーしてCMを作り、「発想を変えよう」「ものの見方を変えよう」、このコンピュータはそのための製品だ、と訴えたように、売り上げ数字ではない「目的」、つまり「われわれは、なぜ、これをやるのか」を議論しておきましょう。この議論がもたらすものは、過程を共有することで、ブレない目的を全員が認識できること。

「なぜこの目標なのか」「何を計測するためのものか」を定義しよう

一方、「目標」は計測可能なものであり、自分たちが行動した結果の達成度を測る大切なモノサシです。試算し、立てた数値に向かって施策を積み上げ、結果、どの程度まで達成できたのか。

それはつまり、自分たちがした試算の精度計測であり、施策の効果測定にもなります。試算の精度が低く大幅なかい離があったことは必ず次に生かせます。また、実施した施策のうち効果の有無も同様に次につなげる大きな情報源となります。

「目標」だけでは数値を追うことに終始してしまい、道を誤るときがあります。そのためにもまずはWHY、これをやることの「目的」を定義し、結果、これだけの数値を達成できる、という目標設定が重要です。

目標はあくまで通過点であり、やっていくうちに「これはかなり読みが甘かった」と分かってこともあるでしょう。そこで議論されるべきは「読みが甘かった」ことを責めるのではなく、今までの試算では正しい数値が導き出せなかった、という次につながる発見です。失敗を次につなげようと思わせてくれるのがWHY、なぜそれをわれわれはやるのかの部分ではないかと思います。

「言語化された目的」と、「計測可能である目標」。

この2つを意識して、新しい年の目標を立てるのもよいかもしれませんね。

今日はそんな感じです。

チャオ!

イラスト:マツナガエイコ

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本記事は、2015年12月16日のサイボウズ式掲載記事目標は立てる過程で議論することに価値があるより転載しました。

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