11月7日にサイボウズ日本橋オフィスで行われたサイボウズ式 Meetup #3。テーマは「若者たちが考える『働き方改革、楽しくないのははぜだろう。』」です。
現在、「働き方改革」をどこか他人事に感じていたり、「仕事の量が減っていないのに残業だけ規制されて困る」など、形式だけの働き方改革に疲れている人がいます。イベントに参加したのは、そういった現象に問題意識を持つ、35歳以下のいわゆる‟若手会社員"たち。
「週休4日」を実現する働き方改革コンサルタント・西村創一朗さんが、働き方改革をみんなが自分ごと化するためのヒントを語りました。
もっと会社が個人を信頼すること。そこから本当の働き方改革がスタートする
西村:今日、このイベントに参加してくださっているのは、35歳以下の若手会社員の方たちなんですよね。
「今、自分の会社も働き方改革をやっているよ!」という人はどれくらいいますか?
西村:大手企業を中心に働き方改革が進んでいて、それはとてもいいことですよね。でも、ほとんどの人が働き方改革に満足していない現状があります。
西村:事前アンケートに、この「制度が社内に浸透しない」という意見を書いて下さった方、会場にいらっしゃいますか?
ーー:私です。
※ロケーションフリーなど制度ができたことには満足しているのですが、なかなか活用されていないと感じていまして。
※ロケーションフリー:オフィスなどの場所に縛られず、自由な場所で働けること
西村:"日本の人事あるある"ですね(笑)。制度をつくったことに満足し、機能させられていない。
人事が心配し過ぎているんですよね。「しんぱい」を「しんらい」に思い切って変えて、もっと性善説的な考え方をしてほしいと思います。まずは、会社が個人を信頼することが重要です。
西村:事前アンケートには、ほかに「副業や副業以外の働き方がもっと広まり、自由度が増すことが理想」「もっと働きたいという人の働く権利も考えてほしい」「『働き方改革』の推進担当者自身が長時間労働になっているジレンマを感じる」などの意見を頂きました。
共通して言えるのは、「上から現場に降りてきた命令形の号令」に違和感を覚えているということです。それをどうやって変えていくか。今日、一緒に考えていきましょう。
個人が会社に人生を預ける働き方は、高度経済成長期において、ある意味「働き方革命」だった
西村:さて皆さん、このニュース、見ましたか?
西村:「従業員のエンゲージメント調査」で、日本は‟熱意あふれる社員"が6%しかいないというデータが出ています。これは139カ国中、132位。ワースト10に入る結果です。
日本の6%に対して、米国は32%。なぜ日本には、‟熱意あふれる社員"が6%しかいないんでしょうか?
西村:この結果の背景にあるのは「望まない長時間労働」です。疲れ切ってしまい、何のために働いているのかわからなくなっている人が多いということでしょう。
「長時間労働」や「副業禁止」という、個人が会社に人生を預ける働き方は、高度経済成長期においてはある種「働き方革命」でした。
終身雇用や年功賃金という「安心安全」を個人に提供するかわりに、個人は会社に人生を預ける「御恩と奉公」の仕組み。この仕組みは世界に例がなく、当時としては超イノベーティブだったんですね。
西村:しかし、バブル崩壊とともに、「御恩」は幻想に......。会社が個人を守ってくれる時代はとっくに終わりました。今は「御恩」がなくなったのに、「奉公」だけが残っているんです。
自分で「19時に帰る」と決めて、実行することが大事。あなた自身がロールモデルになって、職場の雰囲気を変えよう
西村:さて、ここにお集まりの皆さんは、すでに現在の「指示型働き方改革」に対して問題意識を持っている方たちです。ここからは、皆さんの質問や意見をお伺いしながら進めていきましょう。
ーー:働き方改革ということで、時間をうまく使うために対面の会議を減らしたり、Webのコミュニケーションツールを使ったりすることが多くなってきました。
コミュニケーションについて気をつけていることはありますか?
西村:まず、「情報」を伝えたいのか、「情熱」を伝えたいのかを考えます。コミュニケーションには対面>電話>メール>チャットの順番で労力がかかります。そして、より労力がかかるツールの方が「情熱」が伝わりやすいんです。
例えば、謝罪をしたい場合はメールより電話する。可能であれば会いに行く。また、ただ単に情報を伝えたい場合は、メールをする。すぐに反応が欲しいならチャットにする、など場面場面での使い分けが考えられますね。
ーー:会社の仕事以外の時間をつくろうという意識醸成はどのように進めてこられたのでしょう? 対組織としてのご意見をお聞きしたいです。
西村:僕は、強制退社を自分でルール化しました。自分の力が及ばず19時に仕事が終わらなくとも、帰ると決めておく。とはいえ、仕事が終わっていないことで問題を起こしたくはないじゃないですか。すると工夫して仕事をこなし、19時までにはなんとかしようとする。
人から強制で働き方改革をやらされるのではなく、自分で「こうする」「何があっても19時に帰る」と決めることが大事だと思います。
対組織を考えると、職場の雰囲気を変えるのはすごく簡単なんですよ。自分が一番成果を出して、一番早く帰る人になればいい。あなた自身がロールモデルになることをおすすめします。
週休4日に必要なのは「自分を生かせるマーケット」を選択すること
ーー:西村さんは、週休4日を実現されているとお聞きしました。具体的にどのように実現されたのでしょうか?
西村:自分を生かせるマーケット、分野、ジャンルを選択することに注力しました。週休4日は飲食店でいうと、「座席数を減らして客単価を上げる」ことです。自分の強みを把握して希少性を高める。
具体的には、まずは身近なコミュニティの中で「〇〇といえばこの人」と言われるように意識しましたね。
ーー:僕はまだ学生で、実際に働くことをイメージできていない部分もあります。そのうえでお聞きしたいのですが......週休4日って正直なところ、どうなんですか?
西村:正直つらいですよ(笑)。これまで週5日で出していたパフォーマンスを、週3日で出さなきゃいけない。自分の価値を高めないと、対応できません。
インプットする時間が減るとアイデアが枯れてしまうので、週末は意識的に学ぶ時間に当てるようにしています。
ーー:私は自分の会社が好きです。だから、副業するとしても、自分の会社のためになることをしたい。副業と本業の親和性について、どう考えますか?
西村:僕は、「副業」ではなく「複業」をおすすめしたいと思っています。
あくまでサブ的な位置づけで副収入を得るための「副業」ではなく、あらゆる価値創造活動の全般を指す「複業」。サイボウズさんも同じ考えだと思います。
西村:それを踏まえた上で、僕はたまたま本業に近い複業をしていましたが、飛び道具的に本業に関係ないことをやるのもありですし、それが意外なところで本業の成果と結びつくこともあるかもしれない。
もちろん、すぐに本業に貢献できる何かを探すのもいいと思います。
ーー:時間をつくる上で、時には「断る」ことも必要になってきますよね。断り方について、アドバイスをいただけますか?
西村:僕はお断りをすることが本当に苦手なんですよね......。でも今は「時間は有限である」というごく当たり前のことを改めて認識し、シンプルに今の状況を伝えて、できる部分でお返しするようにしています。
ミーティングやコミュニケーションは、断る前に朝や昼の時間の有効活用を考えてみてもいいかも。 例えば「飲み会」の代わりに「モーニング」を提案するとか。案外歓迎されますよ。
「自分がやらなきゃいけない」と思っていることは、実は6割程度まで減らせる
西村:ところで、時間をつくろうとすると、スピードを上げることにばかり気をとられてしまうケースは多いと思います。
そこで、「ECRSフレームワーク」を使って、生産性を向上することをお勧めしたいと思います。
西村:やらなくていいことを容赦なく排除するE(Elminate)、タスクを組み合わせる=C(Combine)、仕事の順序を並び替える=R(Rearrange)、単純化する=S(Simplify)。
すると、自分がやらなきゃいけないと思い込んでいたことが、実は6割程度でいいことに気がつきます。一人で考えないで、詳しい人に教えてもらったり、マネすることも大事です。
具体例でいくと、僕はPCの辞書機能に2000~3000語登録してメール業務を効率化したり、徹底的に移動時間を排除したりしていますね。
西村:そうやって無駄な時間を排除して生まれた時間をどう自己投資していくか。『LIFE SHIFT』にも書いてあることですが、「レクリエーション(娯楽)」ではなく、「リ・クリエーション(再創造)」のために使っていきましょう。
可処分時間をどう増やすか。増やした時間を娯楽で消費してしまうのではなく、スキルアップ、キャリアアップに投資することが必要です。
サイボウズ式 Meetupに参加してみて、どうだった? 参加者の声
ーー:社内の風土改革を担当しています。働き方改革と聞くと「今回もどうせ根付かないだろう」「めんどくさい」など、ネガティブな反応をする社員が多いですね。
今日のイベントに参加してみて、実際に明日から取りかかってみようと思ったのは「仕事の排除」です。
慣例で続けている業務がたくさんあるので「本当に必要な仕事なのか」を考えてみたいと思います。西村さんがPCの辞書機能に2000~3000語登録している、という話を聞いて、自分はそこまで活用できていなかったな、と辞書機能のさらなる活用も考えています。引き続き自分が社内でロールモデルとなって、雰囲気改善を進めていけたらと思っています。
ーー:僕は大学院生です。今日は、自分自身のキャリアプランにモヤモヤとしたものが生じていたので参加しました。
というのも、今までは「とりあえず大企業に就職しよう」と思っていたのですが、最近「それでいいのか?」と漠然と疑問を抱くようになっていました。
今日、西村さんから「これからは会社に個人が雇われるのではなく、会社と個人が対等になる」という話を聞き、勤め先の大小ではなく、熱意と覚悟をもって創造的に仕事をすることが大事だということにあらためて気づきました。「大企業に入っておけば安心」ではなくて、「自分できちんと決めれば、不可能はない」と思いました。
執筆・小栗詩織/編集・田島里奈(ノオト)/撮影・栃久保誠/企画・明石悠佳