サイボウズ式:失敗した時に大事なのは「反省」よりも「分析」

日野瑛太郎さんによる「チームで仕事をする際の振り返り」について。失敗をしてしまった時にすばやく気持ちを切り替えて立ち直れる人はいいのですが、失敗してしまった自分を過度に責めてしまう人たちがいます。

【サイボウズ式編集部より】この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズの外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回は、日野瑛太郎さんによる「チームで仕事をする際の振り返り」について。

失敗をしてしまった時にすばやく気持ちを切り替えて立ち直れる人はいいのですが、中には「こんな簡単なことで失敗をするなんて、自分はなんてダメなやつなんだ」「いつも迷惑ばかりかけている自分は、本当はチームのお荷物なのではないか」といったように、失敗してしまった自分を過度に責めてしまう人たちがいます。

このように後ろ向きな気持ちになっていると、当然ながら仕事の質は低下していきます。そのせいで、また同じような失敗を繰り返してしまう可能性も高くなります。自己評価は限りなく低くなり、失敗の数も加速度的に増えていきます。このような悪循環にハマってしまいすっかり自信喪失している人は、実は少なくないのではないでしょうか。

当然ですが、失敗をした時に大切なことは「同じ失敗を繰り返さないこと」です。失敗を反省する気持ちもある程度は必要でしょうが、反省しすぎて自信を喪失し、それで同じ失敗を何度も繰り返してしまっては本末転倒です。失敗をした時にはただ反省をするだけでなく、繰り返さないための前向きなアクションが必要になります。

そこで今日は、失敗をした時に過度に落ち込むのではなく、前向きに対処するにはどうすればよいかについて考えてみたいと思います。

あえて自分の失敗を「他人事」にしてみる

「失敗による自信喪失の悪循環」にハマってしまう人は基本的にかなり真面目です。自分の能力を過信することもなく、謙虚で思いやりがあり、人格的にも尊敬に値する人たちです。問題はその真面目な態度が悪い方向に働いてしまっていることにあります。

このような人たちは失敗を真摯に「自分事」としてとらえようとします。これは失敗を他人のせいにして責任逃れをする人などと比べればかなり誠実な態度のように思えますが、「自分事」としてとらえすぎてしまうのも強すぎる自己批判を生み出し、最終的には「失敗に依る自信喪失の悪循環」につながります。

そこで、あえて僕は失敗したらそれを「自分事」としてとらえるのではなく、「他人事」だと考えてみることをおすすめしたいと思います。「自分の失敗のせいでチームのみんなに迷惑をかけてしまった」とか、「自分は昔から似たような失敗ばかり繰り返している」といったような属人的な話は棚上げして、できるだけ客観的に自分の失敗を眺めてみましょう。失敗をしたのは自分ではなく自分のよく知らない「どこかの誰か」で、事件が起こったのも自分が今働いている会社やチームではなく「どこかのチーム」と考えます。自分とは関係がない単なる「ケーススタディ」として、自分の失敗をとらえ直してみるのです。

失敗を他人の視点で客観的に「分析」する

こうしてケーススタディとしてとらえ直した失敗は「どこかの誰か」が「どこかのチーム」でした失敗ですから、別に深く反省をしたりそれで自信を喪失したりする必要はありません。客観的に部外者の目線で見ることができます。

その上で、行うべきは徹底的な「分析」です。なぜこのような失敗が起こったのか、原因はどこにあったのか、再発はどのようにすれば防げるのか、といった観点で冷静に問題を分析してみましょう。分析の際に重要なのは、問題をなるべく属人的でない領域に落として「誰でも同じようにやれば失敗しない仕組み」を考えることをゴールにすることです。「注意を徹底する」、「つねに意識をする」といったような精神的な努力目標を立てるだけでは、分析したことにはなりません。

たとえば、「社内メールを客先に誤送信してしまった」という失敗をしてしまったとします。このような失敗に対して深く反省をしたり注意を徹底する決意をすることは簡単ですが、それでは根本的な解決にはなりません。失敗を繰り返さないためにも、まずはいったん「自分が失敗をした」という事実を離れて、そもそも「メールの誤送信を防ぐにはどういった仕組みがあればいいのか」を考えてみる必要があります。

この場合であれば、アドレス帳の管理方法を誤送信しづらい分類方法に変更したり、送信ボタンを押しても即座に送信されず、いったん送信トレーに残るようにメールソフトの設定を変えるなどの対策が考えられるでしょう。漏洩リスクが高い情報を頻繁にメールでやりとりしているというのであれば、会社としてメール誤送信防止ソフトを導入するよう上司や管理者に働きかけることも必要かもしれません。

ポジティブな感情は主観的に、ネガティブな感情は客観的に

失敗をいつまでも引きずってしまう人は、「ネガティブな感情」に対して主観的に向き合いすぎている場合が多いです。「ポジティブな感情」に対してはいくらでも主観的に向き合って問題ないのですが、ネガティブな感情に主観的に入れ込み過ぎると心は大きなダメージを受けます。ネガティブな感情と向き合う場合はあえて気持ちよりも「事実」や「対策」といった側面を優先して考えるようにしたほうが、へこみづらいし打開策も見つかりやすくなります。

また、そもそも自分にとっては一大事のように思える失敗も、他人から見ればほとんどの場合は些細なことにすぎません。最初は少し迷惑に思うこともあるかもしれませんが、どんな人でも基本的には自分のことで精一杯ですから、他人の失敗なんて少し時間がたてばすぐに忘れてしまいます。失敗を長々と後悔したところで、苦しむのは自分だけです。自分ひとりだけがいつまでも失敗を引きずってうじうじと悩むのは、なんだかすごくもったいないような気がしませんか。

失敗をしてネガティブな気持ちになってしまったら、ぜひこのことを思い出して「客観的な」対処をしていただければと思います。

日野瑛太郎さんより

普段は「脱社畜ブログ」というブログで、日本人の働き方の記事を書いています。このブロガーズ・コラムでは、チームワークという観点から働き方について新たな視点を提供できればと思っています。

(サイボウズ式 2014年12月 1日の掲載記事「失敗した時に大事なのは「反省」よりも「分析」」より転載しました)

イラスト:マツナガエイコ

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