サイボウズ式:仕事の「しくじり」は悪ではなく、ヒントの宝庫

「チームのリーダー」ができることは何か。それは、働く上での精神的なセーフティネットを用意することではないかと思います。

サイボウズ式編集部より:著名ブロガーをサイボウズ外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただく「ブロガーズ・コラム」。今回は、はせおやさいさんが考える「より正確性の高い仕事をするためのヒントを生かす、リーダーのチーム作り」について。

リーダーの役割ってなんだろう?

こんにちは、はせおやさいです。

新しい季節、異動などでチームやプロジェクトのリーダーになる人も多いのではないでしょうか。

いざリーダーになってみて改めて思うのは、「リーダーの役割ってなんだろう?」ということ。わたしが教えてもらったのは「マネジャーの役割は、部下の給料をあげること。リーダーの役割は、与えられた目標を達成すること」でした。

マネジャーはマネジメントをする際、それぞれのメンバーが正しく成果を出し、出した成果をもとに上司に掛け合い、給料や待遇を改善できてこそ役割を果たし、リーダーは与えられたチームの目標を正しく把握し、達成に導いたときこそ役割を果たしたといえます。

では、その「目標の達成」に至る道で、リーダーにできることは何でしょう?

今回は「リーダーはチームに『安心して活躍できる環境を作る』ことが仕事」と定義して考えてみたいと思います。

安心して活躍できる環境、を考えたときに、どんな状態を連想しますか? 雇用が保証されている、福利厚生が整っている、など待遇面でも「安心」を整備できるかとは思いますが、「チームのリーダー」ができることは何か。

それは、働く上での精神的なセーフティネットを用意することではないかと思います。

「しくじり」っていいこと?悪いこと?

某人気バラエティ番組のコンセプトにあるように、「しくじった人から『しくじりの回避法』を学ぼう!」というのは、非常に有効な手段だと思います。成功にはさまざまな要素や偶然が必要ですが、失敗するときというのは、得てして理由が明確です。ただその渦中にいる場合は、失敗に向かっていることになかなか気付くことができないから、人は失敗するのではないかと思います。

そして、大きく「しくじる」前に小さく「しくじること」が、結果として大きな事故を未然に防ぐ、という考え方があります。

「ヒヤリ・ハット事例」という言葉をご存知でしょうか。結果的には大事故に至らなかったものの、直結してもおかしくなかった小さな事故事例のことを指します。製造や医療の現場でよく使われているようですが、これは「ハインリッヒの法則」としても知られ、労働災害における経験則の1つ。

1つの大事故の裏側には29の小さな事故があり、そのさらに裏側には300の異常がある。その300の異常を「ヒヤリ・ハット」と呼ぶそうです。「ヒヤリとした」「ハッとした」事例からきている、とのことなのですが、こういう状況、誰もが1度は経験したことがあるのではないでしょうか。

「ああ、危なかった。しくじったけど、大事になる前に気付けたから良かった」

という事象は、ともすれば隠蔽されがちです。自分のミスとしてカウントされてしまうと能力がないと思われる、立場が悪くなる。そんな思考回路もあるかもしれません。

ただし、自分がミスをした事象は、同じ人間である以上、多くの人も「しくじる」可能性が高い。どんなに優秀な人だって、二日酔いや徹夜明け、体調が悪かったり、恋人と喧嘩して気分が落ち込んでいたり、正常でない瞬間にこの落とし穴に落ちてしまう可能性があるわけで、あらかじめ落ちそうな小さな穴を共有しておくことが重要。

そのために、「こういう小さなしくじりをして、こうリカバリをしたのでことなきを得た」という情報共有の蓄積は、チームにとって何よりの財産になるのではないかと思います。

「しくじってもOK!」とリーダーから明言しよう

前述のようなことを問いても、すぐに「そうか!じゃあ失敗はバンバン共有しよう!」と思える人は、あまり多くありません。子ども時代から染み付いた「失敗したら怒られる」「間違えたらバカだと思われる」という思考のクセは、なかなか抜けないからです。そういう思考のクセから自由な人もいるのですが、非常にまれです。

そのためにも、チームのリーダーになった人が積極的に失敗を共有し、自分もただの人間で、間違えることもある。その間違いをみんなで共有することで、たくさんの「For Example」を蓄積して、同じ轍を踏まないよう、みんなで知見をためていこうと表明する。それがメンバーからの告白をうながし、より多くの未然防止策を引き出す結果になるのではないかと思います。

リーダーの役割は、与えられた目標を達成すること。

達成のためにはプラス・オンの行動も重要ですが、失敗を未然に防ぎ、起きてしまうトラブルを最小にとどめることも必要です。そして失敗のユースケースは1人の頭で考えられるには上限があります。なぜなら失敗には必ず理由がありますが、その理由は、経験してはじめて顕在化してくるからです。

さいごに

失敗の共有について書いてきましたが、その中でも特に大切なのは「明文化して残すこと」だと思っています。明文化して残すことで「なぜ」が明確になり、「どうやって」を考えるための情報を洗い出しやすくなるからです。

「しくじり」が嫌われるのは、未来につながらないから。確かに前に進もうとする人にとって「しくじり」は後退のようにも見えますが、それがもっと先の未来のためのハウ・ツーになるなら、チームにとってかけがえのない財産になるのではと思います。

失敗は、必ず明文化しておきましょう。そしてほかの人がいつでも参照できる状態にしておきましょう。さらに、メンバーにもその文化を浸透させましょう。どんな情報共有ツールを使っても構いません。

メンバーは自分がしてしまった「しくじり」に対し、「なぜ」までは分かったけれど、「どうやって」防ぐかがわからないことが多い。わかっていれば、しくじらないからです。そういうときは、いっしょに考え、自分の経験をもとにアドバイスを与えてください。自分でも分からなければ、メンバーといっしょに誰かに相談したり、アイデアを出しあいましょう。

「しくじり」は悪ではなく、より正確性の高い仕事をするための、ヒントの宝庫です。そのためにも、自分から積極的に「しくじり」を開示し、明文化して残し、「こうやって書けばいいんだ」「しくじってもいいんだ」を見せていくことは、リーダーの重要な役割の1つではないかと思います。

ぜひ、実践してみてください。

今日はそんな感じです。

チャオ!

イラスト:マツナガエイコ

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本記事は、2016年4月 6日のサイボウズ式掲載記事仕事の「しくじり」は悪ではなく、ヒントの宝庫より転載しました。

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