「PTAは変えられます、というか、変わりましたね」──楽しむ学校応援団「PTO」の始め方!

「PTA幸福度調査アンケート」を行ったことによって、みんなが「この現状を、どうやって変えていけばいいのか?」と考えるようになったそうですが、その後、山本さんのPTAはどんなふうに変わっていったのでしょうか?

前回に引き続き、「もしドラ」(※)流で「みんなが参加しやすいPTA」を実現してきた毎日新聞記者でPTA会長の山本浩資さんに、私、大塚玲子(『PTAをけっこうラクにたのしくする本』著者)がお話をうかがいます。「PTA幸福度調査アンケート」を行ったことによって、みんなが「この現状を、どうやって変えていけばいいのか?」と考えるようになったそうですが、その後、山本さんのPTAはどんなふうに変わっていったのでしょうか?

※『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の略。原作は岩崎夏海著・ダイヤモンド社。

世界標準のPTAを

大塚:アンケートをとってからは、どんなことをされたのですか?

山本:最初の年は、会議数や委員の数を減らすことから始めました。次の年は、新しく役員会に入ってくれたお父さんたちと相談して、「これまでの委員会活動とは別に、プロジェクト式で、大人も子どももみんなが自由に参加できるようなイベントをやってみよう」って話になったんです。それでさっそく「夢プロジェクト」っていう名前をつけて、その第一弾として「逃走中」を企画しました。

大塚:あの、大人数の鬼ごっこみたいなやつですか?

山本:そうです。そうしたら、これがあっという間に参加者が集まって、子どもが350人、保護者ボランティアが180人も集まる大イベントになったんですね。多摩川の河川敷で、ものすごく盛り上がりました。

このとき、ぼくは初めて「このボランティア制のやり方で、全部できる」って確信したんです。PTAの仕事も、やるべきことがはっきり伝わりさえすれば、強制しなくてもみんな自分から参加してくれるだろうって。

大塚:おぉ~。

山本:それで役員会のみんなに「全部の委員会を廃止して、ボランティア制でやろう」って提案したんですけど、そしたらまた、みんなかたまっちゃった(笑)。「本当にそんなことできんの?」「どうやってまわすの?」って。

でも終わったあと、ひとりのお母さんが寄ってきて、「山本さん、それ、できますよ! アメリカではみんなボランティア制です。PTAのホームページにカレンダーがあって、参加したいイベントをクリックするだけで、ボランティア登録ができるんですよ」って教えてくれたんです。

大塚:そうそう、アメリカのPTAは委員会なんかなくて、イベントやプロジェクトごとに、参加者を募集してると聞きます。

山本:その後、一般の保護者向けに説明会をやったら、「いっそ世界標準を目指したらいいじゃない」なんていう話も出てきたりして、徐々に、ボランティア制でやってみようって方向に進んできました。

大塚:手探りで進むうちに、少しずつ向かうべき道が見えてきたんですね。

「沈黙の保護者会」がなくなった

大塚:いまはもう全部ボランティア制でやっているんですか?

山本:はい、今年度からそういう形にしました。だから、今年の4月の保護者会は素晴らしかったですよ。委員を決めなくていいから、沈黙の保護者会じゃない(笑)。決めるのは連絡網をまわす係だけなので、すぐに数人、手が挙がりました。

大塚:それは素敵です、先生たちもうれしいでしょうね。

山本:それから、従来は年6回やっていた運営委員会(※)も、今年度からなくなりました。

※運営委員会は、役員+各委員長+学級長で構成されることが多い

大塚:え、なくして大丈夫なんですか? 学校からの連絡とかはどうするんですか?

山本:うちの運営委員会はもともと、学校からの連絡の場というより、委員会と役員会が協議する場だったんです。でも今年度からは委員会がなくなったので、必要なくなったんですよね。

大塚:あ、そうか! 役員だけなんですものね。

山本:いやいや、「役員」ではなく「ボラセン・スタッフ」です(笑)。それで運営委員会の代わりに、先生と保護者の意見交換の場としては「たまりばミーティング」っていうのをやることにしました。これは誰でも参加してOKなんです。学校公開(授業参観)の日の午後に設定して、保護者も先生も、みんな参加しやすくしました。

大塚:素晴らしい! これまでのやり方だと、一部の保護者と、一部の先生たちしか接点をもてなかったですけど、これなら希望者みんなが参加できるから、先生と保護者の間の風通しがよくなりそうですね。

山本:ちなみに、ミーティングのときはいつも、子どもを連れてきてOKにしているんです。子どもたちのための活動をしながら、自分の子どもは家にほうってきて、っていうんじゃおかしいですし、そうやって大人たちが、子どもたちや学校のために動いている姿を子どもに見せることは、すごく大事だと思うので。というか、「そこしかない」ってくらい、それは重要なことだと思うんですよ。

大塚:あぁ、それはほんとうに、そうですね!

山本:大人たちが、「今日はPTAの会議だ~(げっそり)」って言いながら、「義務や強制でいやいや学校に行く姿を、子どもに見せ続けていいの?」って思うんです。それじゃ、子どもだって学校行くのいやになるでしょ。だから、そうじゃない形をぼくたちがつくらないと、って思ったんです。

それは、変えられます、というか、変わりましたね。景色が、以前とは確実に、変わりました。

大塚:そのお話、すごく共感します。

コミュニケーションをラクにする

大塚:ところで、情報共有にグループウェアのサイボウズLiveを使われているそうですが、実際どんなふうに活用されているんですか?

山本:最初はボラセン(役員会)で使っていたんですが、最近は「校外活動部」や「夢学校」(サマースクールのプロジェクトチーム)も、グループを立ち上げました。ぼくは全部のグループに入っているんですが、それぞれの「掲示板」を見ると、みんながどんな議論をして、どんなふうにプロジェクトが進んでいるか、すべてわかるんですよ。

なにか議論でつまづいているときは、ボラセンのメンバーが「ここを、こうすればいいよ」ってアドバイスすることもできるし、いや~、本当に、便利です(しみじみと)。

大塚:みなさん、すっかり使いこなされてるんですね。使い方がわからない人とか、いませんか? パソコンを使えない方とか。

山本:いや、大丈夫ですね。ガラケーで使ってる人も多いですし。メールが使える人だったら、全然問題ないんじゃないですかね。みんな、LINEみたいな感覚で使ってますよ。

大塚:おぉ、それはいいですね。

山本:ただ、はじめはみんな戸惑ってたと思います。グループウェアに登録して最初の1週間くらいは、みんなそれまで通りメールばかり使ってたんですけど、ぼくがたまたまヒマなときがあって、いろいろいじってたら「これは便利だ!」ってわかってきた。みんなも使い出してみたら「メールよりこっちのほうが便利だ」ってわかってきたんですよね。

大塚:具体的には、どんなところがよかったですか?

山本:たとえば、無駄な会議がなくなりました。掲示板で議論したうえで、「でも、ここだけは顔を合わせて話したほうがいいよね」っていうときだけ集まるので、効率はすごくよくなりました。

もちろんぼくたちの場合、これまでさんざん顔を合わせて、お互いがどんな人かっていうのをわかったうえで掲示板でやりとりしているので、そこは前提ですけれどね。最初からいきなり、掲示板だけで議論するっていうのはちょっと危険だと思うんですけど。

大塚:なるほど、そこは注意点ですかね。

山本:それに、Web上で会議をやれば、議事録をつくる手間も省けます。やりとりが、そのまま文字で残るんですから。

そうそう、引継ぎにもよかったです。新しいメンバーはここに登録すれば、それまでのみんなのやりとりもわかるし、過去の文書も共有できるので、引き継ぎ文書も作らなくて済みます。

大塚:それ、ポイント高いですね!

山本:あとは、メールを探す手間を省けたことも大きかったです。それまでは、移動中にメールをチェックして、あとで読み返したり返信したりするときに、「どのメールだっけ?」って探すのがすごく大変だったんですけど、グループウェアだと、それがない。

「いいね!」も、すごく便利ですよね。メールだと「読んだよ」っていうだけでも、いちいち返信しなきゃいけなかったですけど、ボタンを押すだけで済みますから。だれかに返信するときも、いちいち宛名やあいさつ文を書かなくていい。いきなり本題から入れるので、無駄がありません。

大塚:とくに会長さんとか、やりとりする相手が多い人には絶対便利でしょうね。しかし、ここまでいいことばかり聞かされると、逆に粗探しをしたくなります......。なにか一つくらい「ここが気に入らない!」という点は、ないんですか?

山本:いやー、とくに(笑)。ただ、最近はみんなに「サイボウズ中毒にならないように」ってことだけ、注意してます。見始めると気になっちゃって、一日に何度もチェックしちゃったりしますけど、それはやめようと。

大塚:なるほど、そこは人によって調整するといいですね。

さて、まだまだお話をうかがいたいところですが、そろそろお時間です。山本さん、今日はいろんなお話をきかせていただいて、どうもありがとうございました!

山本:いえいえ、お役に立てたらうれしいです。

撮影:谷川真紀子、編集:渡辺清美、文:大塚玲子

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