エージェンシーに就職したい人へ。準備ができたと思っていても、何気ないミスひとつでチャンスをつぶしてしまうことがある。
米DIGIDAYでは、トップエージェンシーの幹部たちに、新人枠・上級枠に関わらず採用面接全般のポイントと、過去の面接で経験したあまり愉快ではなかった思い出を披露してもらった。
長文は面倒だという人のために要約するとこうなる。堂々としたボディーランゲージ行うこと。そして、自己中心的になりすぎないこと。さらに「死んだ魚のようなハンドシェイク」は厳禁だ。以下、エージェンシーの面接を受ける時に避けるべきことを紹介しよう。
「力のない握手は厳禁」:ヘレン・ド・ブリーズ氏
広告エージェンシー「ウンダーマン」の人材獲得グローバル責任者
瞬間的に悪い印象を受ける候補者のナンバーワンは、私の場合「デッド・フィッシュ・ハンドシェイク」(力のない握手)だ。クライアントに直接応対する職種の面接であるかどうかにかかわらず、感心しない握手は、態度や自分への誇りに関するマイナスの指標になる。握手に力がない人の場合、私は必ずほかの採用マネージャーに回すが、たいてい反応は同じで、私と同じ懸念を示す。
私は採用の際、志望者に可能な限り正直であるように努めており、握手の問題があるときは、面接の後、部屋の外で率直にフィードバックすることが多い。ポイントがわかるように何度も同じような握手をやってみせると、相手は「そうか」という顔になる。
これが私のやり方だ。
彼らや、彼らがこれからに出会うことになる、たくさんの人々に対する一種の公共サービスだと思う。しっかりとした握手は、強力な第一印象を相手に与えるチャンスである。
「ときには嘘をつく賢さを」:レイチェル・スピーゲルマン氏
広告クリエイティブエージェンシー「ピッチ」のプレジデント
聡明で若く熱心な志望者だと感じた人に、我が社に入りたい理由を質問したことは数知れない。そして、これまでに3回以上、「通勤に便利なところを探しているので」と返事されたことがある。
確かにウチはロサンゼルスが拠点だ。しかし、便利だから、カーナビ・アプリの「ウェイズ(Waze)」にピンがあるから、ウチの会社に加わりたいという人を私が雇うと考えているのなら、我々が考えていたような聡明な人物ではないのだろう。さらに多くの場合は、私に嘘をつく賢さにも欠けている。それが最悪なのだ。
「手柄のひとり占めはNG」:ロバート・リカルディ氏
広告エージェンシー「アーゴノート」のCEO
志望者が、自分はプレゼンで勝利したとか、新しい取引先を獲得したとかアピールすると、私は落ち着かない気分になる。以前、「自分は大きな取引先を2件勝ち取った」と語る志望者がいた。ほかに誰ひとり関わっておらず、すべて自分がやったかのように語ったのだ。もちろん私は主体性のある人を求めているが、そうした発言は事実とは違うだろう。
我々の仕事は個人競技ではない。私の場合、採用では、才能と同じくらい性格を重視する。私が求めるのは、共有して構築する人であって、自分を売り込み、分裂を招く人ではない。
「仲間に関心を持て」:ニック・ゴドフリー氏
クリエイティブデジタルエージェンシー「レイン」のCOO
関わる相手に対して「人間としての関心」をもたない志望者が、私は嫌いだ。「どこに住んでいるのか、子供はいるのか」といった関心のことだ。我々は広告業界にいる。それはつまり、長時間働くし、ときにはくだけた関係になる業界ということだ。友人になる必要があるのだ。
それと、オフィスに面接に来た志望者が、希望している職種に熱心でないのも嫌いだ。自分が求めている仕事はこれだ、という揺るぎない確信をもってほしい。エージェンシーに関して事前調査を行い、鋭い質問を周到に準備して、面接の席に着いてほしい。
「最低限の常識は必要」:キャシー・ディレイニー氏
「サーチ&サーチ・ウェルネス」のグローバルCOO
遅刻しない。履歴書を忘れない。作品のポートフォリオを忘れない。会社を調査することを忘れない。面接官について、LinkedIn(リンクトイン)で(軽く)ストーキングするのを忘れない。情報の検証を忘れない。
最近、ある若手のクリエイティブ志望者を面接したところ、これがすべてできていなかった。
そして最高だったのは――というか最低だったのは――、彼女が「自分が考える仕事のあるべき姿」の膨大なリストを持参していたことだ。あれは記録しておけばよかった。将来の目標は聞きたいが、面接の冒頭で「自分がやりたくないこと」の概要を説明する人は採用されないだろう。その仕事に飛び込んで自分の力を証明するのだ、という意欲を示さないといけない。
「準備は怠るな」:ジャンルネ・エトレンヌ氏
「オグルヴィ・アンド・メイザー・ノースアメリカ」の最高人材責任者
私は面接を相当な期間やってきたが、重要な上級職に応募する人が、面接の前に並以下の準備しかしていないのを見て、あきれたことが少なくない。市場やこの業界の動向をほとんどわかっていない人もいた。エージェンシーであるウチや、ウチのクライアントや、ウチの仕事について、ほとんど知らない人もいた。
とりわけ、うんざりするのは、応募者がウチが担当したと思い込んで、実際にはそうではない仕事について熱心に褒めるときだ。「たしかに素晴らしいクリエイティブや戦略アイデアだが、我々の仕事ではない」と言わざるを得ないことがしばしばある。
準備をしよう。見解を持とう。
我々のクライアントが誰であり、そのクライアントと何をしているのかを把握しよう。応募者がウチのことをすべて知っていると期待するわけではないが、面接で議論するためにある程度の準備をきちんとやってきたということは感じ取りたい。
「傲慢になるな」:マイケル・レボウィッツ氏
デジタルエージェンシー「ビッグ・スペースシップ」のCEOを務める創業者
私は数年前、重要な上級職を採用しようとしていたのだが、そのとき、管理的な仕事を目指すあらゆる応募者に尋ねている質問をした。
「最初の1カ月はどのように取り組むつもりですか?」というものだ。
その応募者は、ウチに入ったら変えること、取り除くこと、打破することについてあれこれと話しはじめた。まだ、ウチで何も学んでいないのに、私以外とは誰とも会っていないのに、話を聞き、知り、質問しないうちに行動計画を立てていた。
しかし、応募者というものは、確立された組織にやってくるのだ。改善点はあるかもしれないが、長々としたリストを最初から持参するべきではない。まだ、問題を知らないのに答えがわかっていると考える人はとても疑わしい。むろん、私は彼をチームに加えず、彼はその職を得なかった。悪意はなかったのかもしれないが、傲慢だとは感じた。
Tanya Dua (原文 / 訳:ガリレオ)
(2016年6月19日「DIGIDAY [日本版] 」より転載)
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