2015年のニッポンはどうなる?!  ワールドビジネスサテライト×DIME×経済ジャーナリスト サキヨミ対談

最前線で時代の潮流をウォッチする3人が今、注目しているヒト・モノ・コトをひも解きます。

2015年も、早くも1カ月が過ぎようとしておりますが、2015年は一体どのような年になるのでしょう。今回は、経済報道番組を代表するテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」のデスクを務める浅岡基靖氏、モノトレンド誌の立役者「DIME」編集長の酒井直人氏、時代を読む経済ジャーナリストの谷本有香氏をゲストにお招きし、今年がどんな年になるか、「2015年サキヨミ対談」を行いました。最前線で時代の潮流をウォッチする3人が今、注目しているヒト・モノ・コトをひも解きます。

―ずばり2015年はどのような年になると思いますか?

浅岡氏:今年を一言で言うと「レガシー」。今年はある種の「復刻モノ」が多く出てくるとみています。ただ、今年は5年後の2020年に向けて大輪を咲かせるために準備する年です。そのため、企業が体力を蓄えるための年になるだろうと思います。以前からあるものに、他国にまねされない技術を加えた商品やサービスが登場するのではないかと思います。日本には世界に誇れる技術力や発想力がまだまだたくさんあります。今年は日本の企業や人々が、少しずつ誇りを取り戻すことができる年になるだろうと見ています。

酒井氏:僕は「二極化」がキーワードになると思います。消費が二極化(プレミアムなもの⇔手に入れやすいもの)していき、中途半端なものは売れなくなっていく年だと思います。これは今年に限ったことではないですが、その差はどんどん広がっていくだろうと感じています。一通りのものは皆持っているので、どうせ買うなら良いもの、どうせ食べるならおいしいものを求める人々が広がっていくだろうと思います。

また、「二極化」ということには、「2つのことを極める」という意味を込めています。今までの日本人は1つの会社で一生を全うし、ほぼ仕事中心の生活をしていました。しかし、現代の日本人は趣味や地域のボランティア等の楽しさも分かってきて、仕事以外の違う社会が自分の周りにできてきていると感じています。自分の人生を豊かにするために仕事以外の社会、休みの日だけではなく平日も含めて、2つの社会を極める人が増えるのではないかと思います。そうすると全く違った人脈も増えるのです。

谷本氏:「日本回帰~和魂復活」というキーワードを考えました。グローバル化の中で失われがちな日本のアイデンティティや良さが再び脚光を浴びるような年になるのではと感じています。今年は戦後70年という区切りの年です。日本の文化はどうあるべきかを考えざるを得ない機会が増えてくると思います。また、日本経済の行き先が見えない、見えにくいこともひとつのポイントです。特に若い世代は、そのことによる不安感や閉塞感を感じていると思います。そういった時の心のよりどころとして、長らく日本人が持ってきた和魂、日本の原点ともいえるものに自然と頼っていくようになるのではないかと思います。

―2015年に注目している、追いかけたい(1)企業・業界 (2)ヒト・モノ (3)サービスは何ですか。

谷本氏:(1)老舗企業 (2)吉田松陰なる人 (3)ホスピタリティ/日本発の思想

日本回帰という視点にこだわって選びました。日本には200年、1000年の歴史を持つ企業も数多くあり、戦争や自然災害の中でもしなやかに生き延びている企業が非常に多いです。一つのものにこだわり続ける普遍性もとても日本らしい。そういう老舗企業に、今年特に注目しています。いろいろな企業が立ち上がっては消えていく中で、老舗企業に共通する「儲け過ぎない姿勢」や「無我の心」などが、まだ歴史の浅い企業の中にも生まれてくると、日本はまた変わってくるのではないかと思います。

吉田松陰は、今年の大河ドラマのテーマでもあるので、まさにこれからブームになると思いますが、今年はこういった時代を切り開いていく人は注目を集めるだろうと思います。

ホスピタリティというのは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて日本発のサービスとして注目せざるをえないものです。また、禅などの日本発の思想や精神力のようなものが、海外のセレブリティなどに取り入れられて、逆輸入的に日本に入ってくる、そして世界的に流行していくのではないかとも思っています。

酒井氏:(1)TOYOTA・ラグビー (2)10代20代アスリート (3)ドローン/思い出作り消費

注目の企業としては、TOYOTAです。燃料電池車の特許を開放し、これからどうなるかというところが注目のポイントです。

業界としてはラグビーに大注目しています。2019年、ラグビーW杯が日本で開催されます。日本ではあまり知られていませんが、ラグビーW杯は、オリンピック、サッカーW杯に続く、世界三大スポーツ大会なんです。また、2019年の日本開催は、国立競技場のこけら落としでもあり、また日本にとって一大ビジネスチャンスです。今年はそのスタートの年と言えるでしょう。2015年3月に、2019年のW杯日本大会の開催都市が決定しますので、盛り上がりの最初の機運が出てきます。また今年は、2016年のリオデジャネイロオリンピックで正式種目に決定した「7人制ラグビー」の予選が始まる年でもあります。日本は女子が強いので、メダルを取るのではないかと予測しており、なでしこサッカーのような人気が出るとうれしいです。そういうことも含め、ラグビーは今年から盛り上がっていくだろうと感じています。

10代・20代アスリートは、テニスの錦織選手やゴルフの松山選手など、新しい顔ぶれが出てきて、自分もパワーをもらえるし、将来とても楽しみだと思い挙げました。

ドローン(無人の航空機。カメラを搭載すれば鳥の目線での映像が撮れる)は空の産業革命と言われていることもあり、法整備の問題もありますが注目していきたいです。

思い出作り消費とは、いろいろなものが既に手に入っている人たちに、新しいものを買ってもらうことはかなり難しい環境下において、人生を豊かにしてくれるモノ・コトの消費は必ずあるということです。おいしいものとか、感動する景色とか、ライブとか・・・。そういう思い出に残せるような消費はまだまだ可能性があると思います。特に今年は、北陸新幹線の開業や成田のLCCターミナルオープンもありますので、旅需要は高まると思います。これらを含めて、思い出作り消費は拡大すると思います。

浅岡氏:(1)ものづくり (2)ポスト安倍 (3)超素材

私は、「ワールドビジネスサテライト」の中で、「トレンドたまご(トレたま)」のコーナーデスクも兼任していますが、昨年末頃からものづくりの現場で、キラリと光るような非常にポテンシャルのある素材を多く目にするようになりました。いわゆる超素材というものです。こういった素材が将来どんな完成形になっていくのか注目していきたいし、そういったダイヤの原石みたいなものを放送していきたいと思っています。ちなみに、そういった原石探しは、企業や団体、大学への飛び込み電話取材で発見することが一番多いです。今はネットでどんどん情報が出てしまうので、出ていないものを探すには、電話をして情報収集するしかないんですよね。

次に、ポスト安倍ですが、これは1番注目しています。今年のさらに次、2016年がどのような金融、経済・財政政策になるのかを考えるには、2015年はポスト安倍を追いかけたい。年末の選挙特番を作る際に、他局と違うことをやらねばという思いの下、「次のポスト安倍は誰だ」という発想が出てきて、一般有権者や候補者、国会に出入りしているTV以外の政治記者に「ポスト安倍は誰だと思うか」というアンケートを取りました。結果は意外にも「いない」が1番多かったのです。ですから今年は1年かけて、徹底的にポスト安倍は誰になるのかを調査していきたいと思います。

―番組作り、誌面づくりをする際のポイントを教えてください。

酒井氏:基準としては2つしか無いと思います。1つ目は「読者が面白がるか」、2つ目は「お金になるか、売れるか」この2つを軸に、他メディアとどう差別化を図っていくかということが大前提にあります。後は、既存の読者に喜ばれる企画なのか、新規読者に喜ばれる企画なのかも見極めて、「なぜこの企画をやるのか、なぜ今やらなければならないのか」、時流を踏まえて誌面作りをしています。本人にとっては普通の話と思っても、分野が違う人にとってはすごく面白い話だったり、その時はネタにならずとも次の企画のアイデアになったりすることもあるので、街に出て人に会うことがネタ探しには一番大事なことだと思っています。

谷本氏:自分の中では実は明確な基準は無いのですが、大切にしているのは、担当者のその製品にかける熱量がどれほどのものなのか、どれほど力を入れているのかをポイントにしています。この熱量は消費者にも必ず伝わると私は思っているので、大切にしています。

浅岡氏:最も基本的なことは「新しさ」。これはニュース番組なので基本中の基本です。そして最も大切なことは「時代が切り取れること」です。製品やサービスが世に出て、それが他社には無い新しいものであればまず取材に行きます。一方、既存の製品やサービスでも、時代が切り取れる仕掛けがあれば取り上げたいと思っています。ネタ探しで大切にしているのは飲み会です。お互い情報交換して引き出しを増やし、それがある日、リリースとか企業の発表情報とかと、ポンポンポンとつながって企画になる。そういう時は一番楽しいですね。

―今年チャレンジしたいことをお聞かせください。

谷本氏:今年は書籍をいくつか発売させていただく予定になっております。世界のトップリーダーに共通するものというテーマで書いているのですが、「誠実さ」「勇気」「人を律する心」等が共通して見えてきました。それはまさに「和魂」ではないかと思います。この本をきっかけに、多くの方に「和魂」を取り戻すきっかけになればよいなと思っています。もう一つは、企業の本当の良さを世の中に伝えていくことです。私は企業さんとお仕事をするケースが多いのですが、普段はとても良い社長さんなのに、メディアの前に出るとその良さが全然伝わっていないなどのケースが多いことを日々感じます。このようなことを無くすために、良さが伝わるように企業と世間をつなげていきたいと思います。

酒井氏:DIMEが来年の4月で30周年を迎えます。今年はプレ30周年イヤーなんです。昨年から@DIME(DIMEのWEB版)も非常に好調なので、アナログ(DIME)・デジタル(@DIME)の両輪で頑張っていきたいなと思います。また、タイアップだけではなく、企業さんとコラボして商品を作っていくことも強化していきたいです。イベントも2カ月に1回程度開催していまして、雑誌だけではなく立体的に「DIME元気だよね」と思ってもらえるようにしたいです。他にもいくつか新しい取り組みもしようと思うので、面白がりながら楽しく、挑戦していきたいと思います。

浅岡氏:今年は難しいテーマに取り組んでみたいと思います。この間教えてもらったのですが、人が「へ~」と思うときは、断片的な記憶がひとつに繋がった時だそうで、その時人は「わかった」となるそうです。その繋がる瞬間を番組で作れたらいいなと思っています。もう1つは、最初のレガシーとも繋がりますが、今年はクラウチングスタートの年だと思います。いつスタートダッシュをするかタイミングを見ているような企業やサービスを掘り起こして番組で取り上げ、視聴者の方々に「へ~」と思ってもらいたいと思います。

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■浅岡基靖氏

テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」デスク

「池上彰の総選挙ライブ」選挙本部事務局長

1994年、株式会社テレビ東京入社。営業を経て2000年から報道局へ。永田町のキャップとして長く国会記者を務める。2006年、ワールドビジネスサテライト(WBS)のディレクターとなり、その後、ニュースデスク兼「トレたま」のデスクに。2008年、大統領選に合わせて訪米しワシントン支局長。2011年に帰国後、2012、2013、2014年の3年にわたり、池上彰氏との選挙特番を担当。一昨年から再びWBSに戻り、「トレたま」デスクを兼任する。

■酒井直人氏

小学館「DIME」編集長

1963年生まれ。1987年小学館入社。「BE-PAL」「DIME」「ラピタ」編集部を経て、2007年にBE-PAL編集長、2013年からDIME編集長。日本ラグビーフットボール協会広報・プロモーション委員会委員長でもある。

■谷本有香氏

経済キャスター/ジャーナリスト

証券会社(山一証券)、Bloomberg TV、フジテレビ「ニュースJAPAN」などで金融経済アンカーを務めたのち、2004年に米国でMBAを取得後、日経CNBCキャスターに。

2011年5月からは同社初の女性経済コメンテーター。10月からフリーに。これまでトニー・ブレア英元首相、マイケル・サンデル ハーバード大教授、ジム・ロジャーズ氏の独占インタビューをはじめ、世界のVIPたちへのインタビューは1,000人を超える。現在、テレビ朝日「サンデースクランブル」ゲストコメンテーターとして不定期出演中。2014年5月北京大学外資企業EMBA修了。

(原稿:イマニシ、オオモリ、タケウチ)

(2015年1月29日「週刊?!イザワの目」より転載)

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