子宮頸がんワクチンは本当に危険なのか

ここのところ、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(いわゆる子宮頸がん予防ワクチン)をめぐってさまざまな動きが見られます。12月10日に、日本医師会と日本医学会による合同シンポジウム「子宮頸がんワクチンについて考える」が開催されました。

ここのところ、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(いわゆる子宮頸がん予防ワクチン)をめぐってさまざまな動きが見られます。12月10日に、日本医師会と日本医学会による合同シンポジウム「子宮頸がんワクチンについて考える」が開催されました。

翌12月11日には、米国ではメルク社の9価HPVワクチンが米国食品医薬品局によって承認されたとのニュースがありました。9価とは、HPVの9つの血清型に対応しているということであり、ガーダシルの4種+あらたに5種の血清型がカバーされるようになり、より高い子宮頸がん予防効果が期待されます。

HPVワクチンが子宮頸がん予防ワクチンと言われる所以は、ヒトパピローマウイルス感染が子宮頸がんの原因であり、ワクチンによってHPV感染を防ぐことが子宮頸がん予防につながるからです。HPVはオーラルセックスよって咽頭に、セックスによって子宮頸部に、アナルセックスによって肛門に感染し、各所にがんを発生させます。ですから、効果は性交渉を経験する前に接種するのが一番高く、オーストラリアとアメリカでは11〜12歳から男女とも、イギリスでは12歳から女子のみ、そして日本では12〜16歳の女子が接種対象です。

HPVワクチンの効果について疑問視する意見がありますが、ワクチンにより子宮頸部の上皮内癌(CIN3)が減少することが示されており、このワクチンの子宮頸がん予防効果については、証明済みです。

きわめて稀ながら、ワクチン接種後にきわめて稀に体のさまざまな痛みが生じるケースが報告され、ワクチンによる被害としてメディアがクローズアップしました。その影響で日本ではHPVワクチン接種が事実上ストップしています。このまま接種が再開されなければ、予防できたはずの子宮頸がん患者が将来にわたって発生し続けることになり、日本には暗い未来が待っています。

ところで、このHPVワクチンに関して、以下の番組が放送されます。

NHK Eテレ ハートネットTV

緊急報告 子宮頸がんワクチン接種後の障害(仮)

2014年12月16日(火曜)午後8:00~午後8:30(30分)

【出演】野辺さやか【司会】山田賢治

これまで約340万人が接種した「子宮頸がんワクチン」。接種後、原因不明の体の痛みなどの症状を訴える患者が相次いでいる。当事者の現状、治療情報などを緊急報告する。

(番組ホームページより)

番組が意見を募集していたので、以下の文章を送りました。

『ジェンナーの牛痘接種に始まったワクチンが人類を感染症から守ってきたことには疑う余地がありません。ワクチンは現代医学の最大の功績です。しかしながら、ワクチンは「完全に安全」ではありません。他の医療行為と同様です。

そのため、ワクチン接種を広く実施し、社会を感染症から守るためには、被害者への救済が必要です。日本では予防接種法と独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)法により補償が受けられます。

被害認定のプロセスは非公開であり、不透明です。また、同じワクチンであっても定期接種として接種をうけると予防接種法で補償され、任意接種だとPMDA法での補償となり、補償額が異なることは不合理です。

HPVワクチンは子宮頸がん予防に効果があることが示されています。子宮頸がんには年間15,000人が罹患し、3,500人が死亡しています。発症年齢が若く、高齢者に多い一般的ながんと異なり、社会的影響が大きいです。またHPVワクチンは、肛門癌、咽頭癌などHPV関連のがんの予防にも効果があります。

HPVワクチン接種により、複合性局所疼痛症候群(CRPS)や起立性低血圧などの症状を呈することがあるようです。ただし、これはHPVワクチン特有でなく、他のワクチン接種や外傷、献血などでも引き起こされる非特異的な反応です。ワクチンの製法が異なるサーバリックス、ガーダシルの被接種者ともに起きていることが、ワクチン特異的な反応ではないことを示しています。予防接種法では、ワクチンそのものによらない接種事故も補償の対象としており、これらHPVワクチン接種により症状を呈している人にも、同じ思想により救済の手が差し伸べられることを望みます。

一方で、被害者がクローズアップされることにより「ワクチン=危険」との印象が広がることは避けなければなりません。人の特性として、本能的に恐怖を抱くと、理性的に考え判断することが難しくなります。ダニエル・カールマンらの『ファスト&スロー』(早川書房)の通りです。HPVVに対して本能的恐怖を感じ、接種を忌避させてしまうことは、将来のCC患者を生み出します。防げる病気に罹らせることは、別の被害者を生み出すということです。

HPVワクチンは子宮頸がん予防効果がある、という点もお伝えいただき、接種は受けるべき、と視聴者が感じてくれるような番組内容を望みます。』

どんな番組の内容になるのか、注目しています。皆さんも是非ご覧になり、この問題について考えていただければ、と思います。

なお、HPVワクチンは、役所に行って予診票をもらえば、いまでも公費で接種を受けることができます。年頃のお嬢さんがいらっしゃるようでしたら、対象年齢のうちに接種しておくことをお勧めいたします。