米国のスタートアップ Coin が、最大8枚までのクレジットカードやキャッシュカード、ポイントカードなどを一枚にまとめるとうたうカード型デバイス Coin の予約受付を開始しました。
Coin の正体は、8枚分までのカード情報を記録し、本体またはモバイルアプリからの操作で切り替えられる磁気ストップつきのカード型デバイス。サイズは一般的なクレジットカード大で、厚みも0.84mmしかありません。本体にも小さなボタンとディスプレイがあるものの、最近のコンシューマーエレクトロニクス製品らしく、セットアップや管理のインターフェースはモバイルアプリを頼っています。
使い方はまず、付属の磁気カードリーダーをスマートフォンに取り付け、手持ちのクレジットカードやデビットカードなどをスワイプ、さらにカードの表裏画像を撮影、名称など管理情報を入力。要は写真も撮る高度なスキミングと同じです。
Coin は Bluetooth 4.0 Low Energy でスマートフォンと接続しており、ユーザーが登録したカードになりすますことで、最大で8枚までのカードとして使えるようになります (というふれこみです)。バッテリーはユーザーで再充電できないものの、一般的な使用で約2年間使用可能。
聞けば聞くほど危なっかしい仕組みに思えますが、インテリジェントでないただの磁気カードででは不可能だったセキュリティ対策として、
・スマートフォンと Bluetooth 4.0 LE 接続が切れると、スマートフォンに通知で警告。置き忘れや盗難の際に気づける。
・一定時間スマートフォンと通信できない場合、みずから無効化して使えなくなる。もう一度接続しないと利用不可。
またカードには小さなリードアウトがあり、番号の下4桁と期限、CVV を表示するようになっていますが、もとのクレジットカードよりは少ない情報しか見えない (かつ、標準的な表示方法ではない)ため、写真も撮るタイプのスキミングにはより強いと説明されています。
Coin は来年夏の出荷に向けて、出資を募りつつ先行予約を受付中。当初の価格は一枚50ドル、先行予約が終わった後は100ドル。さまざまな理由から米国以外では利用登録できず使えません。
そもそもカード会社がそんな使い方を許すのか、技術ではないレベルで気になるプロダクトですが、製品化に向けてすでに Y Combinator や K9 Ventures などから資金調達に成功しており、大まじめに製品として販売するつもりのようです。
磁気カードの多くが ICカードに置き換わり、スマートフォン以前の時代にすでに複数の決済手段やポイントカードがアプリとして携帯電話に乗っていた日本からはなんとも奇妙な製品に映る一方、NFC決済がいよいよ普及の兆しを見せる米国であっても、いまだにほとんどあらゆる店舗や販売機で磁気カード式のクレジットカードやデビットカードが使われています。
決済端末などのインフラも込みで新規格に置き換えてはじめて使えるようになる新技術には大資本のにらみ合いがつきものですが、既存インフラを想定外の方法で活用するゲリラ的な新技術ジャンルとしてはおもしろい試みです。
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(この記事は、engadget日本版の記事「動画:磁気カードを一枚にまとめるマルチカード Coin 、アプリと連携管理」から転載しました)