ロンドン芸術劇場が2016年2月22日より、世界初のコンピューターが書いたミュージカル『Beyond the Fence』を上演すると発表しました。もちろん上演するのは人間の役者ではあるものの、その創造的プロセスの大部分はコンピューターによって自動的に生成されたものとのこと。
将棋やチェスで人間の実力を超え、多脚ロボットを設計し、ネットの写真から人物の3Dモデルを作り、さらには怒りの感情さえも身につけたコンピューターですが、こんどは演劇の舞台に進出することになりました。
ケンブリッジ大学のマシンラーニング研究グループは多数のヒットミュージカルを解析し、筋書き、登場人物の人数やそれぞれの役柄、またその間の色恋沙汰などの類似性を調査した「成功の法則」を用意しました。そしてロンドンのゴールドスミス・カレッジが開発するソフトウェア(通称 What-If Machine : もしもボックス)を使って、主役と複数の主要登場人物、あらすじなどを書き出しました。
さらにスペイン・マドリードのコンプルテンセ大学が開発するストーリージェネレーター PropperWryter を使ってストーリーに深みを与え、ひとつの脚本に仕立て上げました。
ミュージカルである以上、筋書きだけでなく音楽も必要となります。これを提供したのは英ダラム大学にある作曲コンピューターシステム(通称:アンドロイド・ロイド・ウェーバー)。
もちろん、コンピューターだけでは不可能だった部分、たとえば歌詞や振り付けなどは人間の手が加えられています。しかし、ミュージカルのもっとも重要な部分である脚本と配役、音楽をコンピューターが生成したというだけで一体どのようなものになっているのか、俄然興味が湧いてくるというものです。
制作者は「これは決して支離滅裂でアヴァンギャルドなものではなく、伝統的なミュージカルに仕上がっています」と自信満々に語っています。
あらすじを簡単に説明すると、ときは1982年、英国のグリーナムコモンにあった米英軍基地周辺が舞台。英国政府が建設しようとする巡航ミサイルや核ミサイル拠点に反対する女性たちのピースキャンプで生活する主人公メアリーとその娘。ある日当局に娘を奪われそうになったメアリーは理想を貫くことと娘のためを考え悩みます。そしてそんなときにひとりの米軍パイロットと出会うというもの。
『Beyond the Fence』はクリスマス明けから役者によるリハーサルを開始し、2016年2月22日から3月5日まで、ロンドン芸術劇場で上演予定です。
(2015年12月2日 Engadget日本版「機械が創ったミュージカルはおもしろい? 世界初のコンピューターが書いた作品、2016年2月に英国で上演」より転載)