囲碁と回転寿司が最高のビートを刻む ズズンズズンズン

2月末に東京にオープンしたRed Bull Music Studioで、囲碁をインターフェースにした斬新なリズム・シーケンサーIGO MASCHINEが披露されました。

2月末に東京にオープンしたRed Bull Music Studioで、囲碁をインターフェースにした斬新なリズム・シーケンサーIGO MASCHINEが披露されました。

IGO MASCHINE は碁石が置かれた碁盤から、画像認識によりNative Instrumentsのサンプラー/リズム・シーケンサーMASCHINEをコントロールするシステム。ベース、リードの3トラックに加えて、ループ再生やエフェクトまで制御できます。モーリー・ロバートソン氏が興奮状態で演奏する動画は続きからどうぞ。

使用されている碁石は白と黒のみですが、どんなサウンドをトリガーしているのかを分かりやすくするために、画面上では碁石が色分けされています。

まず碁盤の左上、縦16マス×横16マスはドラムとメロディーを制御するシーケンサーになっており、このエリアに黒い碁石を置くとMASCHINEの1グループ内に含まれる16個のドラムサウンドを16分音符単位でトリガーできます。

また同じエリア内に白い碁石を置くと、MASCHINE内に読み込まれたソフトウェアMASSIVEのポリフォニック・リードシンセが日本の音階(いわゆるヨナ抜き音階)で演奏され、碁盤の上の方に置けば高音が、下の方に置けば低音が鳴る仕組みです。

碁盤下部の縦3マス×横16マスではMASSIVEのモノフォニック・ベースのサウンドがトリガーできるようになっています。

碁盤右側の縦16マス×横3マスではサウンドやエフェクトのパラメーター、例えばフィルターのカットオフやリードシンセのリリース、Transient Masterプラグインのアタック、リリースやFrequency Shifterプラグインのパラメーターなどのコントロール、残りの右下の縦3マス×横3マスは数種類のパーカッション・ループをトリガーします。

IGO MASCHINE の開発にはNative InstrumentsのメンバーMichael Hlatky氏とBram de Jong氏、そしてバウハウス大学のKristian Gohlke助教授が協力。オープンソースのコンピュータビジョン向けライブラリOpenCVと.Net用のラッパー・ライブラリーOpenCVSharpを組み合わせ、メインのプログラムはC#で書かれています。

画像の取得には、主に産業用で使われる Allied Vision社のカメラMako をPCとイーサネット接続して利用します。採用の理由は状況に応じてレンズの種類を変えることができ、どんな場所でも設置がしやすい点から。

Native Instrumentsのプロトタイプ制作チームは昨年夏にレゴと画像認識を使ったシーケンサーを披露して話題になっていました。

その後、東京で開催されたイベント Red Bull Music Academy では何か日本に関係したものを作ってほしいと依頼を受け、回転寿司のベルトコンベアを流れる寿司ネタでループをシーケンスさせる寿司シーケンサーを発表します。今回のIGO MASCHINEはその寿司シーケンサーのフレームワークを生かして開発されました。

まるで年中こんなものばかり開発しているようですが、もちろん本業のプロトタイピングの余技で、このIGO MASCHINEもイベント直前に約4日間をかけ完成させています。

寿司に続いて日本の文化を取り入れたIGO MASCHINEは、リズム・パターンを考えている姿が囲碁の対局の様子と重なり、ライヴ・パフォーマンスや音楽制作の上でより面白くかつ実用的なツールになりそうです。しかし Native Instrumentsのメンバーによると、残念ながら一般に公開する予定はないとのこと。

寿司や囲碁だけでなく、例えば石庭や障子、和彫の刺青など、日本の文化には画像認識技術によってシーケンサー化したら面白そうなネタがまだ残ってそうです。今後もあらぬ方向で日本文化をテクノロジーと結びつける発明が現れることに期待したいところです。

(2015年3月16日engadget日本版「動画:囲碁でビートを作るリズム・シーケンサーIGO MASCHINE」より転載)

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