米国のライス大学が、室温では液体で、人間の体温ほどに温まると固化し、その後は徐々に分解するヒドロゲル(水ベースのゲル)を開発しました。
このゲルを骨の欠けている場所に注入すると、骨が再生するまでの土台として働くとともに、本来の骨の再生に合わせて分解されるため、新たな骨組織の再生方法として期待されます。
従来の、温度によって液体から個体に変化するゲルが含むポリマーは、一度固化するとその後は急速に水分を放出しながら崩壊するため、骨が再生するまでの隙間を埋める用途には合わないという問題がありました。
ライス大学の研究チームは、固化後も安定して形状を保てるようにする化学的な「クロス・リンカー」(架橋剤)を加えることでその問題を解決。長期的な骨再生の土台として利用できるようになったとしています。
クロス・リンカーはリン酸エステルボンドでゲルに添加されますが、このボンドは人間の体内に存在する「アルカリホスファターゼ」という酵素で分解される性質があります。
アルカリホスファターゼは新しく生まれた骨組織から多く放出されるので、新しい骨の周囲にあるゲルはより早く分解され、再生を妨げません。
なお骨の再生速度には個人差があるため、それにゲルの分解速度を合わせる必要があることについて、ライス大学は「速度調節は可能」としています。
しかし「その調節は容易ではなく、またバイオテクノロジー企業向きの内容だろう」とし、今後はヒドロゲルとその分子構造の研究に注力すると述べています。
再生医療技術については、先日「動画:性行為もできる人工膣の移植に成功、生体組織から培養&手縫いで成形」という記事を掲載していますのであわせてどうぞ。
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(2014年5月12日Engadget「溶けて骨に置き換わる「骨組織再生ゲル」、米大学が開発。体温で固化・体内酵素で分解」より転載)