テスラ「モデルX」の衝突事故、オートパイロット使用中だった。直前の数秒間に運転手の操作痕跡なし

事故で死亡したドライバーは米Appleの従業員。

カリフォルニア州マウンテンビューで発生したテスラ Model X の事故に関して、テスラは事故発生時にこのModel Xが半自動運転機能「Autopilot」を使用していたことを明らかにしました。この事故ではModel Xの車体前半部分がなくなり、破損したバッテリーパックから炎があがるなど、ショッキングな写真や映像が伝えられていました。

ABC 7 Newsによると、事故で死亡したドライバーは米Appleの従業員で、2017年までの13年間はElectronic ArtsのプログラマーだったWalter Huang氏と確認されたとのこと。

テスラのブログに掲載された事故の詳細によると、事故は3月23日午前9時27分に発生。ドライバーはその前にAutopilotをオンにして、前走車に追従するクルーズコントロール機能を最短距離に設定して使っていました。事故直前には数度にわたってハンドルに手を置くよう催促する警告をディスプレイ表示および音声で出した履歴があるものの、すくなくとも衝突の瞬間に至る6秒間はハンドルを握った痕跡がなかったしています。

さらにテスラは、事故が高速道路の分岐点で現れるコンクリート障壁の前に置かれるバリアのへの衝突だったこと、そのバリアが以前の事故で新品に更新されず、つぶれたままそこに置かれていことが事故を深刻にしたこと、また車線の分岐点からバリアに衝突するまでには、車線をはずれて150m、約5秒間の時間があるはずですが、その間ドライバーは何の措置もとっていなかったことを説明しています。

ただ、テスラの報告では、なぜAutopilotが車線を外れて分岐の障壁に突っ込んだのかは示していません。Huang氏の兄弟は、事故を起こしたModel Xは以前より、Autopilot使用中に同じ分岐点で車線を外れ、障壁へ向かって走り出すことが数度にわたって発生していたと証言しています。Huang氏はディーラーに苦情を申し入れたものの、ディーラーの試験ではこの問題が再現できなかったため、対応が得られなかったとのこと。

テスラは、Autopilotがすべての事故を防止することはできないものの、ドライバーが運転する自動車に比べればAutopilotの事故発生率が低いことをアピール。いま世の中のすべての車がテスラ車になれば年間90万人の命が救われるという、以前からの主張を繰り返しています。

今回の事故は予兆があったのにそれに対応できなかったディーラーにも何らかの問題があるかもしれないものの、やはりこの3月にアリゾナ州で発生したUberが歩行者を跳ねる死亡事故をみても、自動運転の最中にセンサーがきちんと動作できていない状況が事故の引き金になっている可能性は否めません。

もちろん、Uberは完全自動運転システムの開発中であり、テスラもAutopilotが完全自動運転ではないことを認めています。半自動運転機能を使用する場合は、非常時にはすぐに人間が運転を引き継げることが前提条件とされています。こうしたテスト走行や半自動運転使用時に人間のほうが油断しきってしまわないようにするための、もう一歩踏み込んだ対策ももしかしたら必要なのかもしれません。

(2018年4月1日Engadget日本版より転載)

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