最後のオスが去ったキタシロサイの受精卵作成に成功。絶滅回避に期待

"生存可能"、とは記したものの実際にはまだ多くのリスクが残されます。

キタシロサイは今年3月に生き残っていた最後のオスの個体が死亡し、残りはいずれも生殖能力がないとみられるメス2頭だけになりました。当然、自然の摂理に従えば絶滅が確定したとも言えるわけですが、研究者らは種をなんとか生きながらえさせるべく、ミナミシロサイの卵に凍結保存していたオスの精子を受精させ、胎内で生存可能な胚の作成に成功しました。

"生存可能"、とは記したものの実際にはまだ多くのリスクが残されます。研究者らはミナミシロサイを代理母とすることを選択しましたが、そのために母体は2時間もの麻酔に耐えなければなりません。また凍結保存している精子も限られた量しかなく、そう何度も卵子を受精させられるほどではないとのこと。

もしこれが流産や死産になったり、残る精子が尽きてしまうようなことになれば、それはキタシロサイが絶滅を逃れられなくなるときになります。もし無事に子供が生まれてきたとしても、種を維持できるほどにするにはおそらく1度の出産成功だけでは足りないはずです。

もちろん希望もたくさんあります。研究チームは現在、幹細胞技術を利用してキタシロサイの皮膚の細胞から卵子と精子を作り出し、それらを供給するだけでなく遺伝的な多様性をも増やそうとしています。しかも、少なくとも3年以内にはそれを成功させて新しいキタシロサイを生み出そうとしています。これはサイが抱える16か月の妊娠期間を含めての話です。

もしこの計画が成功するならば、研究チームはいったんは去りかけた種をふたたび増加に転じさせるとともに、ひっそりと世界から消えゆきそうになっている他の絶滅危惧種の保存のために技術を提供する意向です。

キタシロサイに限らず、サイを絶滅に向かわせている原因は内戦や政情不安による生息地の減少と、そこへ密猟が追い打ちをかけているのが主な原因とされます。消えゆく種を技術の進歩で復活させられるなら、それは良いことにちがいありません。しかし根本的には、人類のエゴで動物が犠牲になる構図を改めなければ、いくらでも同じことが繰り返されそうです。

(2018年7月5日「Engadget日本版」より転載)

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