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「残業代ゼロ法案」、残業時間が長い企業ほど否定的(調査結果)

今回の調査では、人事業務担当の方に「時間外労働(残業)」について伺いました。平均残業時間は、約半数の方が「21~40時間」と回答。
Yagi Studio via Getty Images

人事担当者向け中途採用支援サイト「エン 人事のミカタ」上でサイト利用者の382名を対象に「時間外労働(残業)」についてアンケート調査を行いました。

■アンケート調査からわかったことは?

政府が2014年6月にまとめた「日本再興戦略」(新成長戦略)では「働き方改革」として「時間ではなく成果で評価される新たな労働時間制度の創設」が話題に。現在も、産業競争力会議で検討されています。新制度により、日本の長時間労働の是正・労働生産性の向上が期待される一方、本制度の導入により、無報酬な長時間労働の合法化・常態化を招くのではという懸念が絶えず、賛否を巻き起こしています。

今回の調査では、人事業務担当の方に「時間外労働(残業)」について伺いました。平均残業時間は、約半数の方が「21~40時間」と回答。残業の理由は、業務量に集約されました。「ホワイトカラー・エグゼンプション制度(正式名称:日本型新裁量労働制、通称:残業代ゼロ法案)」に対する見解は、残業時間が20時間以内の企業では賛成が反対を上回り、 20時間を超える企業では、反対が賛成を上回りました。時間ではなく成果で評価する点については賛同があるものの、制度の目的やそれに合った風土が浸透しない限り、悪法になりかねないという指摘が寄せられています。長時間労働が是とされる、という意見は多くはなかったものの、実際に残業代を前提とした生活設計をしている従業員も多く、残業削減の取り組みには消極的な企業が散見されました。ただ、8割の企業では「従業員の健康」維持を目的に残業削減に取り組んでおり、取り組みやすさと効果のバランスがもっとも高いのは「業務分担やフローの見直し」が挙げられています。

■調査結果をもっとくわしく...

1:最多の平均残業時間は「21~40時間」。(図1・図2)

「平均残業時間(1ヶ月)は何時間程度ですか?」と伺ったところ、もっとも多かったのは「21~40時間」(46%)。次いで「1~20時間」(36%)、「41~60時間」(13%)という結果になりました。「残業が発生する主な理由」を質問すると、第1位は「仕事量が多い」(63%)、第2位は「取引先からの要望にこたえる(納期など)」(54%)でした。しばしば問題視されている「長時間労働を評価する風土がある」という回答は、10%に留まっています。

【図1】平均残業時間 (1ヶ月) は何時間程度ですか?(時季・部署や職種により差がある場合、年間平均・全社平均でご回答ください)

【図2】図1で、1時間以上の残業が発生していると回答された方に伺います。残業が発生する主な理由はなんですか?(複数回答可)

2:残業時間が長い企業の人事ほど、日本型新裁量労働制には否定的。(図3・図4)

「"日本型新裁量労働制"(通称"残業代ゼロ法案")についてご存知ですか?」と人事の方々に伺いました。「よく知っている」(16%)「大まかには知っている」(67%)という意見が8割を超え、広く認知されている制度と言えそうです。知っていると回答した方々に「"日本型新裁量労働制"の導入について、どのように思われますか?」と伺うと、現在の残業時間状況によって異なる傾向が見られました。残業が20時間以内の企業の方は、「賛成」(11%)「どちらかと言えば賛成」(34%)が計45%、「反対」(32%)「どちらかと言えば反対」(8%)が計40%となり、賛成が反対を上回りました。一方で、残業が20時間を超える企業の方は、「賛成」(8%)「どちらかと言えば賛成」(26%)が計34%、「反対」(33%)「どちらかと言えば反対」(15%)が計48%となり、反対が賛成を上回っています。

賛成派の方のコメントは、『時間に管理されず成果をあげる特定のポジションには有益』(残業時間1~20時間の方)『高額年収限定の制限を設けている場合と自分の裁量で仕事ができる職種に絞るなら賛成。すべての労働者に適用されるなら反対』 (同1~20時間) 『成果もなしに長時間会社にいる人が評価されるという現状に違和感』(同21~40時間)『仕事は時間ではなく、成果で評価されるべき(労務面での残業制限は従業員の健康のため、引き続き行われること前提に)』 (同41~60時間)などがありました。

反対派の方からは『大企業のための制度で中小企業にはなじまない』 (同1~20時間) 『現在の日本の風土ではサービス残業が増える』 (同21~40時間)『長時間残業による健康不調や過労死などが増える』 (同21~40時間)『労働時間に関する規制がなくなった場合、企業は同じコストで最大限の利益を得ようとするのが当然のため、過度な長時間労働につながることになりかねない』 (同21~40時間) 『結果的に企業、経営側に有利な運用がなされるだけではないか』 (同41~60時間)『残業代は払わなくても良いと勘違いする経営者が多いと思う』 (同41~60時間)などのコメントが寄せられています。

【図3】"日本型新裁量労働制"(通称"残業代ゼロ法案")についてご存知ですか?

【図4】図3で「よく知っている」「大まかには知っている」と回答された方に質問です。"日本型新裁量労働制" の導入について、どのように思われますか?

3:残業の削減に取り組む企業は約8割。取り組み理由は「従業員の健康」。(図5・図6・図7・図8)

残業の削減に取り組まれていますか?」という質問には、「取り組んでいる」という回答が79%にのぼり、ほとんどの企業が課題意識を持って残業削減に取り組んでいる様子がうかがえます。内訳を残業時間別に見ると、「取り組んでいない」という回答が残業時間が20時間を超える企業では20%、20時間以内の企業では12%と少し差が見られました。

(残業の削減に)取り組まれている理由はなんですか?」と伺うと、第1位は「従業員の健康」(77%)、第2位は「残業費削減」(60%)、第3位は「生産性向上」(48%)という結果に。ホワイトカラー・エグゼンプションに関連する議論で「コスト削減」「労働生産性向上」は話題に上がりますが、それら以上に企業活動の継続性を支える「従業員の健康」が重視されているようです。

実際に残業の削減に取り組んでいる企業へ「実施し、効果的だと感じたものを教えてください。」と伺いました。もっとも多かった意見は「業務分担やフローの見直し」(53%)、次いで「管理職への教育(時間管理)」(48%)「残業を事前申請制に」(45%)となりました。人員を増やして物理的な個々への負担を減らすのではなく、現状業務を見直して生産性を高める方法は取り組みやすく、かつ効果を発揮しているようです。残業削減に取り組まれていない企業に「(残業の削減に)取り組まれていない理由はなんですか?」と伺いました。6割の企業が「事業・仕事の特性上、これ以上の短縮は難しい」と考えているようです。また「収益拡大のためには、残業はやむを得ない」(27%)「経営者の理解が得られない」(27%)といった声も上がっています。

【図5】残業の削減に取り組まれていますか?

【図6】図5で「取り組んでいる」と回答した方に伺います。(残業の削減に)取り組まれている理由はなんですか?(複数回答可)

【図7】図5で「取り組んでいる」と回答した方に伺います。実施し、効果的だと感じたものを教えてください。(複数回答可)

【図8】図5で「取り組んでいない」と回答した方に伺います。(残業の削減に)取り組まれていない理由はなんですか?(複数回答可)

4:残業削減に積極的な企業は約6割。(図9)

「今後、残業時間の削減についてどのような対応をお考えですか?」と質問をしたところ、「削減に向けて積極的に取り組む」(57%)という回答が最多となりました。理由としては『従業員の健康管理上の問題と業務品質確保のため』『社員が健全な環境下で、最大のパフォーマンスを発揮し続けることができるようにする為。恒久的に長時間残業が続いては、心身ともに疲弊し、パフォーマンスが発揮できない』などのコメントが寄せられています。「状況を見て取り組むかを検討」(31%)「積極的には取り組まない」(5%)と回答した方からは、『現在、それほど残業は多くないため』という声もある一方で、『残業代を糧にしている者もおり、すぐに対処できない』『ある程度の残業は、社員の手取り給与を増やす意味でも必要』などの現状が伝えられています。残業を前提とした報酬体系が根強く残っている会社も多いようです。

【図9】今後、残業時間の削減についてどのような対応をお考えですか?

【調査概要】

■調査方法:インターネットによるアンケート

■調査対象:「エン 人事のミカタ」を利用している人事担当者 382名

■調査期間: 2014年7月7日 ~ 2014年8月19日

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