【魅惑の海・パプアニューギニア・ 古見きゅう 連載第3弾!】

日本での出現記録がないため和名はまだないのだが、フィリピンやインドネシアなど東南アジアに広く分布していて、特別珍しい種の魚という訳ではない。

「あぁ、哀しき囚人魚」

世の中にはたくさんの魚がいるもので、僕たちは彼らを識別するために名前をつけている。いわば僕たちと同じように名前がつけられているわけだ。僕たちが普段日本国内で呼ぶ魚たちの名前は、そのまま和名という。例えば和名がシロザケというサケの仲間も、シャケとかマスとも呼ばれたりするように、地方によって呼び名は若干の違いがある。つまりあだ名のようなものか。当然海外には海外の呼び名があり、それは英名と呼ぶ。サケの仲間は「Salmon」(サーモン)と呼ばれているということは言うまでもないだろう。というような形で、同じ魚でも様々な呼び名があるのが面白い。今回は、この魚の名前の流れから、ちょっと可哀想な名前のお魚「Convict Blenny」(コンビクト・ブレニー)を紹介しようと思う。

日本での出現記録がないため和名はまだないのだが、フィリピンやインドネシアなど東南アジアに広く分布していて、特別珍しい種の魚という訳ではない。幼魚の時は、こちらの写真のように数千匹の単位でソフトコーラルなどの周辺に群れを形成しているところをよく見かける。幼魚の体長は3cmほど、おおよそ魚らしくない姿は、例えるなら細長いオタマジャクシのような感じだ。

細長いオタマジャクシのような Convict Blenny

こちらのコンビクト・ブレニーは親が棲む巣穴で、幼魚たちを保護するという生態が知られている。魚の世界では卵から孵化した子供を育てるという魚は多くない。なかなかに興味深い生態だ。僕もパプアのミルン湾で過去に一度だけ、たくさんの幼魚たちが巣穴に出入りを繰り返している現場を目撃しているのだが、未だに親の姿を確認したことがない。いつかその親の姿も見てみたいものである。

ちなみに以前この「Convict」という英名の意味が気になり、辞書で調べたところ、なんとなんと「囚人」という意味なのだとか。たしかに黒と白の縞模様はそう見えないこともないし、成魚は見事なまでの白黒のボーダー柄になるらしい。ある意味的を射た名前ではあるが、なんだかちょっと可哀想な気がしてならない囚人魚なのでした。

◯ Text by 水中写真家 古見きゅう

東京都出身。本州最南端の町、和歌山県串本にて、ダイビングガイドとして活動したのち写真家として独立。 現在は東京を拠点に国内外の海を飛び回り、独特な視点から海の美しさやユニークな生き物などを切り撮り、 新聞、週刊誌、科学誌など様々な媒体で作品や連載記事などを発表している。著書に海の生き物たちのコミュニケーションをテーマとした写真集「WA!」(小学館)などがある。 2012年には自身初となる海外での個展も開催した。

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パプアニューギニアは、赤道のすぐ南に位置しており、日本から直行便で約6時間30分の距離にあります。世界で2番目に大きな島、ニューギニア島の東半分をはじめとする600の島々からなり、南太平洋最後の楽園と言われ、そこには美しい海と、山々の深い緑、長い歴史の中で受け継がれた伝統の文化が息づいています。自然と触れ合う旅、文化を探訪する旅など、パプアニューギニアでは、様々な旅の楽しみ方が皆様をお待ちしています。

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