「 自分の身は自分で守る。」??

3・11以降、人々の意識はいやが上にも変わってきた、と思う。電気、水、ガス、石油といったライフラインもあっけなく止まってしまう都市生活の不安、どこか遠くから運ばれてくる物に頼っている不確かさを思い知った結果はやはり大きな変化を運んできている。

台風26号の被害が思いがけなく大きくなってしまっている!

被害に遭われた方には心からお見舞いしたいと思う。亡くなられた方が何人になるのか、行方のわからない方の捜索も終わっていない。大島町では、土石流の発生時に避難勧告を出しておらず、住民の通報で動き出した時すでに、被害は発生していたという。自分自身の判断で避難した人、間一髪の判断で脱出できた人など、助かった人たちは自分で身を守る積極的な行動を取れた人たちだったということだ。

17日の朝、NHKの番組では、台風26号で土砂崩れのあった伊豆大島や、日野市の話を締めくくった言葉が「自分の身は自分で守る」だった。一瞬、それはわかるけど、ちょっとひどすぎるんじゃない?と叫びたくなった。

「自分の身は自分で守る」っていうのは嫌いじゃない方だけど、街の中の宅地開発で作られたコンクリート壁の安全まで、自分で守れ、って、それどう言うこと??

例えば、コンクリートの壁に水抜きのパイプがいれてあるが、あれが葉っぱで詰まっていたりすると水が溜まって壁が崩れる。こういう場所はほとんど管理されていなくて安全の確認を誰もしていない、のだそうだ。

少し前、10人の方が亡くなられた病院の火災の時も、防火扉がしまっていれば良かったのに、扉がゆがんでいて閉まらなかったことが被害を大きくした。その防火扉の点検は、消防署の管轄ではなく、建物の管理者が自主的に行わなくてはいけないそうで、この病院では30年、一度も行っていなかったと言われている。

3・11の震災、津波、原発事故で、あっという間に安全神話が崩壊する事に身震いするような恐怖を知ったのだったが、同じようなことがもっともっとこの時代の生活の土台を根本から揺るがせているのを感じる。地形を大きく変えたりした土地や、コンクリートやパイプで築かれた構造物の脆弱さは、机上の設計では考慮に入れられてないのか、と訝るほど、次々とボロが出てきている!福島第一原発の汚染水の問題にしても、素人が見ていてもお粗末過ぎる後手後手のやっつけ仕事。見ていて本当にいても立ってもいられない。けれど私たちに何ができるだろうか?

私たちは、「自分の身を自分を守れる」社会に生きていない!

できることなら「自分の身を自分で守れる」社会に生きていたい。

3・11以降、人々の意識はいやが上にも変わってきた、と思う。電気、水、ガス、石油といったライフラインもあっけなく止まってしまう都市生活の不安、どこか遠くから運ばれてくる物に頼っている不確かさを思い知った結果はやはり大きな変化を運んできている。

そんな折もおり、NHKの取材班と研究者の共著、「里山資本主義」という本がベストセラーになっている。普通の新書版で出版されたところ、あっという間に10万部を越え、カラー印刷のカバーがかけられて今や、大売り出し中というわけだ。

中味は読んでいただけば良いので要点だけをかいつまむと、これまで無価値とされてきた里山の資源をプラスに置き換えて行くことで、マイナス傾向だった地域が続々復活の喜びに燃えている、という話。

森林の木や製材した時の木屑を活用したバイオ発電、ペレットストーブの普及、それらの産業化による雇用の拡大、農業の充実、地産地消による地域文化の発信など、ワクワクするような実際の例が紹介されている。中でもそんな森林の産業を国の基幹産業に据えたオーストリアが、経済不調のヨーロッパで一人勝ちしている、という現状に驚きだった。

「マネー資本主義」に対する「里山資本主義」は、古い時代への回帰ではなく21世紀産業である、とする著者の自信がびんびん伝わってくる。

台風や自然災害の被害が大きいのも、私たちの暮らし方に自然との調和という意識がすっかり失われていること、この暮らしが自然のデリケートなバランスの上にやっと成り立っているものだということへの配慮がなさすぎることに起因している。「自分の身を自分で守る」ことの出来る暮らしをどうすれば作れるのか、これこそが大きな課題なのだ、と思う。

2011年の秋、私と林良樹の共著で出版した「スマイル・レボリューション」もそんな思いから、自給農業を基本にした田舎暮らしに生き方を転換した思いや、現状を伝えるために書いた。この数年、農村への関心の深さは、いよいよ本格的な地殻変動になってきたのではないか、と思う。

そして、いよいよこの次の日曜日は、日比谷公園で「土と平和の祭典」。オーガニックの農業者や、流通の人達の出店、いろんなブースでのトーク、メインステージでのライブ、、、

今年は「未来(種)を守る」。

放射線との戦い、遺伝子組み換えの不安など、命を脅かすものと、ちゃんと向き合って行こうというテーマだ。東京から地方へ移住した若い農業者たちも、たくさん来ます。是非遊びにきてください!

【編集部註】台風26号の被害拡大を受けて、冒頭部分が追加されました。

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