「現時点で緊急事態を宣言する状況ではない」安倍首相が会見(新型コロナウイルス)

新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正に伴い「緊急事態宣言」を発令するのか注目が集まっていました。
3月14日に官邸で記者会見する安倍晋三首相
3月14日に官邸で記者会見する安倍晋三首相
CHARLY TRIBALLEAU via Getty Images

安倍晋三首相は3月14日午後6時に官邸で記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「緊急事態宣言」を現時点では発令しない考えを明らかにした。

■「我が国では増加のスピードを抑えられている」

この会見で安倍首相は「現時点において感染者の数はなお増加傾向にあります。しかし、急激なペースで感染者が増加している諸外国に比べて、我が国では増加のスピードを抑えられている」と専門家の見解を紹介。人口1万人当たりの感染者数について、日本が「0.06人にとどまっている」と指摘。「韓国、中国のほかイタリアをはじめ、欧州では13カ国、イランなど中東3カ国よりも少ないレベル」とした。

そうしたことから、「爆発的な感染拡大に進んでおらず一定程度持ちこたえている」という専門家の見解を紹介。「現時点で緊急事態を宣言する状況ではないと判断しています」と話した。

ただし、刻一刻と状況が変化しているため、「必要であれば手続きに則って、法律上の措置を実行する考えであります」とした。

2012年に制定された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の対象に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を追加した改正案が衆参両議院で可決し、14日から施行されていた。この特措法で規定された「緊急事態宣言」を安倍首相が発令するのかが注目されていた。

■東京五輪は「予定通り開催」と強調

質疑応答では、記者団からは「東京オリンピックの延期や中止があり得るのか」と質問が出た。

安倍首相は「我々としてはとにかく、感染拡大を乗り越えてオリンピックを予定通り開催したいと思っています」として、変更がないことを強調した。

■「緊急事態宣言」のポイントは?

今後、「緊急事態宣言」が発令されると都道府県知事が住民に外出の自粛を要請したり、学校や映画館・劇場など興行場の使用制限、イベント開催の停止などを要請したりできるようになる。

また、所有者の同意が得られない場合にも、臨時の医療施設を開設するために土地や建物を使用できるようになる。

特措法の条文を元に、生活に影響が大きそうなところをまとめた。

01.外出自粛の要請

都道府県知事は、「生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないこと」を期間と区域を決めて住民に要請できる。(第45条)

02.学校、社会福祉施設、イベント会場の使用制限

都道府県知事は学校、社会福祉施設、興行場(映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸などの施設)の管理者に対し、施設の使用制限もしくは停止を要請できる。また、イベントの主催者にイベント開催の制限もしくは停止を要請できる。(第45条)

03.臨時医療施設のための土地使用

都道府県知事は、臨時の医療施設を開設するため、土地、家屋または物資を使用する必要があると認めるときは、当該土地等の所有者および占有者の同意を得て、当該土地等を使用することができる。また、正当な理由がないのに同意をしないとき、同意を得ないで、土地等を使用することができる。(第49条)

04.医薬品や食品など物資の売渡しの要請

都道府県知事は、緊急事態措置の実施に必要な物資(医薬品、食品その他の政令で定める物資に限る)であって生産、集荷、販売、配給、保管または輸送を業とする者が取り扱うものについて、その所有者に対し特定物資の売渡しを要請することができる。正当な理由がないのに要請に応じないときは、特定物資を収用することができる。(第55条)

05.生活関連物資等の価格の安定

指定行政機関の長らは、国民生活との関連性が高い物資などが価格の高騰や供給不足が生じたり、生じる恐れがあるときは、法令の規定に基づく措置などを講じなければならない。(第59条)

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