「ジェンダーレス」制服を導入した韓国航空会社が反響呼ぶ。誕生の理由を聞いた

「綺麗な女性がサービスするのが良い」。かつてはそんな偏見がありましたが、時代は変わりました。話題の航空会社のマーケティング本部長に聞きました。

新型コロナで航空業界は困難に直面している。そんな中、肯定的な評価で注目を集めたのが韓国の「Aero K」という格安航空会社(LCC)だ。評価の理由には彼らが公開したユニフォームにあった。

VOGUEGQなどのファッション雑誌を通じて、最初に公開されたユニフォームは、今までのものと少し異なっていた。

ジャケットのボタンの向き以外で、女性乗務員と男性乗務員の制服の差がなかったのだ。

近年、女性の制服は乗務員たちの外見を商品化し、業務を妨げているという指摘を受けてきた。「Aero-K」の制服はそんな意見を参考にした姿だった。

なぜ「ジェンダーレス」な制服が誕生したのか。「Aero-K」職員たちへの書面、電話インタビューで聞いた。

「Aero K」の新ユニフォーム。性差を強調しない、ジェンダーレスなデザインとなっている。
「Aero K」の新ユニフォーム。性差を強調しない、ジェンダーレスなデザインとなっている。
Aero Kのインスタグラムより

ー乗務員たちの制服デザインが話題ですが、服は何種類あるのでしょうか?

(キム・サンボマーケティング本部長、以下同じ):冬服と夏服の2種類です。パンツはデザインを統一し、上着は夏服がベスト形態と半袖、冬服はジャケットと長袖で構成されています。ジャケットは移動中に着やすい服で、機内でサービスをする時には半袖、もしくは長袖のシャツを着ます。

ー「ジェンダーレス」と「快適さ」をユニフォームの主要コンセプトにした理由は何でしょうか?

私たちのように、小さな会社が競争力を持つには、「意識」の差を持っておかねばならないと思いました。会社を設立した頃(2015年)、航空業界にはいわゆる「ナッツリターン問題」や、「オーナーの資質」に関する話題(大韓航空を傘下に持つ財閥グループ会長の娘によるパワハラ事件を発端にした、財閥一族の資質に関する議論)が多くありました。そんな背景もあり、「人が中心」という企業文化になりました。制服のデザインは、航空会社では象徴的なものです。ですから、このキーワードを制服として表現することになったのです。

そもそも、航空業は軍隊から派生されたものと見なされています。制服を着て戦闘機に乗ることをそのまま引き継ぎ、民間航空会社でも機内でサービスを担当する人たちが制服を着るようになったと言われています。

最初に、民間機が誕生した時には、主に男性のビジネスパーソンが利用していました。この時代にあった偏見により、「綺麗な女性がサービスするのが良い」と考えられるようになりました。そのため、乗務員の多くが女性で、制服もそのようなデザインだったのです。

時代が変わった後にも、乗務員たちには引き続きこんな文化が維持されていたのです。

実用性の面では、乗務員たちの要望を反映し、様々なフィードバックを受ける過程で生地素材、ポケットの位置、ポケットの形態、サイズ、服の丈まで決めました。

また実は、男性の乗務員たちにも既存のユニフォームに関しては不満がありました。(女性乗務員の外見に対して)男性乗務員の服はデザインもかわいくないし、ネクタイをきつく締め、不便な靴を履かなければいけなかったのです。服装、ヘアスタイル規程に対する不満は女性、男性みんなにあったのです。

「Aero K」の新ユニフォーム。性差を強調しない、ジェンダーレスなデザインとなっている。
「Aero K」の新ユニフォーム。性差を強調しない、ジェンダーレスなデザインとなっている。
Aero Kのインスタグラムより

乗務員のタトゥーも大きくなければ許容するという話が出て、ツイッターで話題になっていましたね。本当ですか?

はい、合っています。大きさの規定はあります。しかし、「身体の特定部位、例えば指ひとつ、もしくは手の裏全体、腕全体、など部位全体をカバーするタトゥーを避ける」、「倫理的、政治的、性的で問題になる内容を含めたタトゥーは避ける」程度です。

浴場では、「嫌悪感を与える刺青をいれた方は入場不可」のような案内文が提示されていることがありますよね。しかし、この「嫌悪感」というのは、人によって水準が異なり、最初に基準を決めるのは難しいです。

ヘアスタイルは「男性の場合、後ろの髪が襟に達したらいけない」という規定を持った航空会社が多い中、私たちは、まず規程に男女の区分をなくし、過激にパンクな髪型をしたり、安全関連業務に妨害となるヘアスタイルでなければ、最大限個人の表現の自由を許容する方向にいます。

メイクアップも男女で規程がなく、内容は「本人の肌とユニフォームに似合うようにする」、「過度に華麗だったり、生気がないようにはしない」などです。

ーユニフォームを見た職員たちの反応はどうでしたか?

多様な反応が出てきました。デザインの方向性は理解するが、これまでなかったデザインなので不慣れに感じるという反応もありました。「これを本当に制服として着てもいいのでしょうか?」というような反応もあったのですが、今は快適に着ています。

「Aero K」の新ユニフォーム。性差を強調しない、ジェンダーレスなデザインとなっている。
「Aero K」の新ユニフォーム。性差を強調しない、ジェンダーレスなデザインとなっている。
Aero Kのインスグラムより

ーこのようなユニフォームが実際に安全の向上になるのでしょうか?

はい。まず、乗客の安全は乗務員の服が快適なことも重要ですが、全体的な企業文化と関連することも大きいと思います。先ほど、民間機のユニフォームが軍の制服から派生されたと申し上げましたよね。

航空業界には、今も軍隊式の文化が多く残っています。様々な職種で、階級や位による秩序と、上司の命令には必ず従うという組織形態が厳しく守られている場合が多いのですが、その理由はそのようにすれば安全運航できると考えられていたからです。

しかし、調べてみると1990年代にむしろこのような文化が、叱責を恐れて過ちを隠す行動に表れ、事故が起きたケースもあったのです。そして(コミュニケーションを重視し、平等を目指した文化とユニフォームが)安全性の向上につながると判断しました。

「Aero K」の新ユニフォーム。性差を強調しない、ジェンダーレスなデザインとなっている。
「Aero K」の新ユニフォーム。性差を強調しない、ジェンダーレスなデザインとなっている。
Aero Kのインスタグラムより

ー新しいデザインを公開する初のチャネルとしてファッション誌を選んだのが印象的でした。なぜそのような選択をしたのか気になる方もいましたが。

(ナ・ヘミコンテンツマネージャー):ブランドを象徴する衣服の特徴がよくわかる方法だと考え、消費者と一番自然に出合える方法だと考えました。話題になったVOGUEの映像は軽快で、感覚的にとても合い、私たちにとっても面白い経験になりました。

ーコロナウイルス時代の就航計画はどのようになっていますか?

(キム・サンボマーケティング本部長):私たちは新生の航空会社で、まだ保有飛行機は一台だけ、そんなに費用がかからない方です。

清州空港を拠点にし、8月の清州ー済州路線の就航を目指して準備しています。年末までに飛行機は2台追加保有となる計画で、新型コロナの状況が収まったら、国際線も就航予定となっています。

*インタビューは、一部を要約・編集しています。

ハフポスト韓国版の記事を翻訳・編集しました。

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