「消費のリベンジ」がやってくる。我慢から解き放たれた中国人の購買欲は、日本にもチャンスだ。

報復性消費(リベンジ消費)とも呼ばれるこの現象は、55%の消費者が実行するという調査結果も。

日本ではまだ終息が見えない新型コロナウイルスだが、流行が始まった中国では、一部で仕事が再開されるなど、段階的にではあるが、普段の姿を取り戻し始めている。

長く外出制限が続いた地域も多く、暇と体力を持て余した中国人たち。ウイルスの終息後を見据えた、消費の「リベンジ」が話題になっている。

■5リットル入りのミルクティー

この現象は「報復性消費」と呼ばれている。買いたいものも買えず、我慢を続けてきたことの反動で、購買欲求が急激に高まることを指す。

中国メディア「環球時報」によると、「報復」のターゲットの一つとして話題になったのは5リットル入りのミルクティー。青島市の商店が営業再開とともに発売したところ、ネットで注目を集めている。

価格は持ち帰りで88元(約1340円)。ネットでは「買い込みたい」「タピオカはどこだ」など反響が相次いでいる。

ミルクティーのイメージ(タピオカ入り)
ミルクティーのイメージ(タピオカ入り)
Getty Images

こうした動きはデータにも裏付けられている。投資銀行の華興資本(チャイナ・ルネサンス・ホールディングス)が発表した資料によると、サンプル1000人のうち55%が「報復性消費に走る」と回答したという。

この「報復」に走る人には特徴がある。まずは元々一定以上の経済力があることだ。中国経済も新型コロナの影響を強く受けているため、「報復」には消費の余力を残していることが重要だ。

一方で、新型コロナの影響で収入が減ったとする人たちも「報復」には前向きで、資料では「報復性消費は理性に基づく購買行動ではなく、感情的に行われるものだ」としている。

■何に「報復」?

「報復」の向かう先はどういったものになるか。1000人のサンプルに1点から5点まで点数をつけてもらったところ、一番は「食べる」が2518ポイントでトップ。「街やショッピンセンターを歩く」が2272点と続いた。

ほかには「映画/展覧会/コンサート・演劇など」「旅行」が人気。家族や友人など、これまで会うことが憚られていた人たちと楽しめることが共通点になっているという。

親族が一堂に会しての食事会は需要がありそうだ
親族が一堂に会しての食事会は需要がありそうだ
Getty Images

「報復」の開始時期は、感染が収束してから「半月後」と答えた人が多く、財布の紐が緩むのは「4月末に終息したとして、5月中旬になるだろう」としている。

■日本の企業も期待

この動きを心待ちにしている日本企業も多い。

クロスシー(東京台東区)は、インフルエンサーなどを通じて中国へ日本の製品や観光地などをPRするサービスを提供している。これまで、新型コロナの影響で小売業などを中心に広告配信を取りやめる顧客も出てきていた。

「(収入は)増えたか減ったかでいえば、減りました」と山本達郎執行役員は話す。一方で、外出制限が続いた中国では、SNSなどに触れる時間が大幅に増加。宣伝効果を見越して、当初の計画通りにPRを続ける企業もいたという。

やがて訪れるかもしれない好機に、山本執行役員は「終息後の“リバウンド”に期待しています。むしろ忙しくなりすぎるくらいがいいですね」と期待を寄せている。

「日本の製品が売れやすい環境が整ってきている」と指摘するのは、中国のネット空間に強いインフルエンサーをまとめる速報JAPAN(東京新宿区)の賀詞(が・し)社長だ。

賀詞社長(速報JAPAN)
賀詞社長(速報JAPAN)
Fumiya Takahashi

その原因の一つが、日本と中国の間で行われたマスクや防護服などの支援だ。中国では感染拡大当初、日本から支援物資が届けられる様子が大々的に報じられ、ネット空間では日本へ好意的な反応を示すユーザーも増えてきた。

「これですぐに日本製品の売り上げが上がるとは思えません。ですが、将来的なインバウンド(日本への旅行)に繋がるかもしれないし、日本製品のプロモーションはしやすい。日中関係が悪化した時と比べると、こうした環境はすごく大事です」と賀さんは解説する。

中国の国家統計局は3月16日、消費の動向を示す小売業の売り上げが、前の年の同じ時期と比べて20.5%減少したと発表した。新型コロナが中国経済に与えたダメージは大きく、「報復性消費」が巻き起こったとしてもその影響は限定的とみられる。一方で、中国と関わる企業にとっては、限られたプラス材料を活用することがダメージを抑えるカギにもなりそうだ。

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