NEWS
2019年05月18日 16時22分 JST

別府温泉でお湯の温度をめぐる対立が続く。解決策は?

「修行のように熱い」と言う人もいれば、「熱いのが温泉」と言う人もいる

朝日新聞社
「熱湯」(左)と「ぬる湯」に仕切って2槽化した浜脇温泉=2019年3月9日午前10時50分、大分県別府市浜脇1丁目、加藤勝利撮影

熱く!いや、ぬるく! 別府温泉の温度めぐり論争沸騰中

 日本一の源泉数と湯量を誇る大分県の別府温泉郷。点在する市営温泉は誰でも気軽に安く利用できる一方で、観光客と地元住民らを交え、湯温を巡るトラブルが絶えなかった。対策に苦慮した市は昨年10月、人気施設の一つ、浜脇温泉の浴槽を「熱湯(あつゆ)」と「ぬる湯」に分割した。それから半年余り。それぞれの支持者の間には、思いやりと我慢する心が育ち始めている。

 週末の午後、浜脇温泉の男湯は20人近い入浴客でにぎわっていた。かつて一つだった浴槽は、設定湯温が43度の「熱湯」と、40~42度の「ぬる湯」の2槽に仕切り板で分けてある。

 山口県下関市から来た「ぬる湯派」の60代男性は「少し狭くはなったけど、気兼ねなく水を入れ、ゆったりできた」。もう一方の「熱湯派」を自認する別府市の70代男性は「客の笑い声が増えたよう。慣れですねえ」と浴槽の2分化を歓迎している様子だった。

 「もっと熱くして!」。2槽化の工事が始まる直前の昨年9月下旬、浜脇温泉で常連の80代男性の不機嫌そうな声が響いた。番台の熟練した女性が広い浴室の隅に走り、源泉からためておいた高温の湯を湯船に流し込む。当時の設定湯温は42~44度。市の指導で1時間ごとに計測と調整をしていた。女性は「常連さんと、顔も分からない家族連れのそれぞれから『ぬるい』『熱い』と要望が多くて困る」とぼやいた。

 浜脇温泉は国道10号そばにあり、市営としては珍しく深夜午前1時まで営業する。年間入場者約16万人は、市営温泉16カ所のうち3番目に多い。入浴料は100円と安く観光客の姿もよく見られる。

 ただ、子どもや若者らの中には熱い湯が苦手な向きも多い。金沢市から初めて別府に来た男性(43)は「修行のように熱い」と苦笑。「熱すぎて足もつけられない」「水を入れたらにらまれた」という声も市や施設に寄せられていた。

 実はここ、45度を超すような「熱湯」を好む常連が集まる場でもあった。ある男性(82)は「水を足せば、痛みが和らぐ温泉の効能も薄まってしまう」。子どもの頃から通う別の男性(88)は「熱いのが温泉。俺たちは熱いのを我慢して入りながら温泉を覚えた」とむしろ誇らしげだ。

 市によると、両派の溝は埋まらず、にらみ合いが口げんかに発展することもしばしば。そこでコンクリート製タイル張りの仕切り板による「2槽化」の導入が決まった。思い切って1カ月休業。390万円をかけて浴槽を2槽に分けた。

 ここを含め、5カ所の市営温泉が「熱湯」「ぬる湯」に浴槽を分けている。だが、2槽化は広い浴槽でなければ難しく、残りの温泉で計画している所はない。

(朝日新聞デジタル 2019年05月18日 12時08分)

関連ニュース