今度はトニー賞で“子宮ドレス”。ビリー・ポーターの装いが、再び話題をさらう

真っ赤なベルベット素材は「キンキー・ブーツ」で使われていた、カーテンでした

タキシードドレスで、アカデミー賞の話題をさらった、俳優で歌手のビリー・ポーター。

ニューヨークで6月9日(現地時間)に開かれたトニー賞授賞式に、今度は“子宮ドレス”で登場し、注目を集めた。

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ハリウッドリポーターによると、ドレスのトレーン(ドレスの引き裾)に、子宮が刺繍でデザインされている

子宮をデザインしたのは、中絶禁止への反対を支持するためだ。

「今、女性の権利が攻撃されています。わたしは、権利を奪われている全ての人たちを擁護します。全ての人が自由にならない限り、私たち全員が自由になることはありません」と、ポーターはハリウッドリポーターのインタビューで語った。

アメリカでは、ジョージア州やルイジアナ州など南部の州を中心に、妊娠中絶を禁止する法案が次々と可決されており、女性の権利団体などが激しく抗議している。

ドレスのデザイナーに「女性の権利擁護のために、ドレスに子宮を刺繍しないか」と尋ねられた時、「素晴らしいアイデアだと思った」とポーターは話す

元々、カーテンだった

ドレスは、ポーターにとって思い入れのある素材から作られている。

大ヒットミュージカル『キンキー・ブーツ 』のローラ役で、2013年トニー賞ミュージカル主演男優賞を受賞したポーター。

実はドレスは元々、『キンキー・ブーツ 』の舞台で使われていたカーテンだった。

キンキー・ブーツはブロードウェーで2507回公演されたのち、4月7日に幕を下ろした

ニューヨークタイムズによると、カーテンはその後、舞台の素材をリサイクルするバッグブランド、「シーナリー・バッグ」に持ち込まれた。

同ブランドのジェニファー・カーンCEOから、「このカーテンでバッグを作らないか」と持ちかけられたのが、ポーターのスタイリストのサム・ラテッレだった。

ラッテレは、バッグではなくドレスにするアイディアを思いつき、エシカルな取り組みで知られるファッションブランド「セレスティーノ」のデザイナーである、セルジオ・グアダラマらに相談。

グアダラマらの手によって、6年間キンキーブーツの舞台にかかっていたカーテンは、女性の権利擁護を訴えるドレスに姿を変えた。

「男らしさ」に疑問をなげかけたい

2月のアカデミー賞でタキシード・ドレスを着た時に、「女性がパンツを履くのは良くて、男性がドレスを着るのはダメというのはおかしい」と語ったポーター。

大きな話題になった、タキシードドレス。
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大きな話題になった、タキシードドレス。

今回の子宮ドレスには「男性らしさ」を求める風潮を変えよう、というメッセージも込められている。

デザイナーによると、子宮ドレスは「ジェンダー・フルイド(性自認や性指向が、男性と女性の間で流動的なこと)」を表現している

ポーターはニューヨークタイムズに、「男性とは何か、という疑問を投げかけたかった」と話す。

「男らしさ、その中でも私たちが主演俳優に対して期待するような、異性愛の男性らしさは、なくしていかなければいけないと思います」

「そういった男らしさが、悪い影響を及ぼします。かつて私も男らしくあるべき、と思ったことがありました。でもそれを克服しました。もう男らしさにとらわれたくはありません」