フェミニズムの本は売れない?(前半 本を売ることで地域に寄与する――埼玉県朝霞CHIENOWA BOOK STORE)

出版だってマスコミだ

出版だってマスコミだ

"5つの「支配の手口」1.いないものとする 2.笑いものにする 3.情報をわざと与えない 4.どちらを選んでも罰する 5.責任を押しつけ、恥をかかせる"『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』 / "北欧の児童書を使って考えるーー伊..." https://t.co/E9Ao7hmFub

— akupiyo (@akupiyocco) 2018年3月6日

レイプ被害を受けた女性の声がテレビで十分に報道されない現状に、「マスコミは一体何をやっているんだろう」と憤っていた私はふと気が付いた。テレビだけがマスコミだろうか? いや、違う。新聞、ラジオ、雑誌、それに本だってマスコミだ。出版の世界の隅っこに身を措きながら、出版不況で弱気になって、本の役割がすっかり頭から抜け落ちてしまっていた。

フェミニズムの本は売れない?

日本の文化に #metooやフェミニズムは合わないという声も漏れ聞こえてくるが、日本にだって、男女平等を求め活動している人達はいる。そういう人達の活動を知り、胸を熱くさせた後で、出版社の人達の「フェミニズムの本は日本では売れない。余程飛び抜けた本でないと、出版は難しい」という言葉を聞くと、温度差にがっくりさせられる。

ビジネスで利益を追求するのは当然のことだとは分かっている。でも本で言論をつくろうとは思わないの? 女性の悩みや苦しみは、取るに足らないものだと言うの?

悲しく思っていたところに、こんな嬉しいニュースが飛び込んできた。

CHIENOWA BOOK STOREフェミニズムの本フェア

5月21日、埼玉県の朝霞市にあるCHIENOWA BOOK STOREフェミニズムの本フェアがはじまった。フェアで選ばれた作品のリストはこちらで見られる。 塩澤広一店長にお話をうかがった。

参考:店長が過去に登壇したイベント『家族が幸せになる 「オトン・スタイル」―子育ても住まいも、てまひまかけて面白く!』(写真 三輪舎サイトより 左から2番目が塩澤店長)

Q1なぜフェアをはじめようと思ったのでしょうか?

『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』訳者の枇谷さんとの出会いがきっかけです。当店の近くのhana cafe という地元の方に人気のカフェで以前文学食堂というのを開催しました。本に登場するメニューを再現してカフェで提供する事で普段本に関わりが少ない方に本をより身近に感じてもらおうという意図でした。そのイベントにお越し頂いたのが枇谷さんでした。

お店のお近くにお住まいというのと、『おおきく考えよう』『ドコカ行き難民ボ-ト。』のようにとても大切な事を伝える本を翻訳されている事がわかりました。地元の本屋としてぜひ応援させて頂きたいと思ったんです。

そんな中で『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』が出版される事を知りました。正直フェミニストってあまりピンときませんでした。言葉としては知っているけど実体験としては理解できていない。というような。ふわっとしていて掴みどころがないという感覚でした。

少し話がずれますが、書店という場はつくづく不思議な場所だな常々思っています。目的が無くても誰でもふらっと立ち寄れ、何も買わなくてもどれ位いても後ろめたさも感じない。(実際私もプライベートでよく他の書店にふらっと行きます。初めて訪れる土地で地元の書店に入るのは本当に楽しいです)

小売業でこんなにも公共性の高い場は他にないのではないでしょうか?

今地域から街の書店が次々に姿を消していますが、地域にはこの公共性の高い書店という場が必要だとすごく感じています。

先日も代々木上原の幸福書房さんが閉店されました。お店に伺ったことはなかったのですが、良い本屋だというお話はよく聞いていました。 その閉店セレモニーには、多くの方が訪れたそうです。 そういう多くの方に愛されていたはずの書店が閉店してしまうというニュースを聞くたびに、リアル書店を取り巻くうまくいっていない環境に何とも言えない気持ちになります。

そんな少しずれてしまっている書店業界に一石を投じる企画を先日始めました。

1 Book for Asaka」と言うプロジェクトです。

店舗で本を1冊購入頂くと、1円を地域の行政を通じ地域の児童館に寄付させて頂くという取り組みです。 地域の書店で買い物をする事で、同時に地域貢献ができ、長期的には地域の方々に恩恵が還ってくる。

将来的には地域で書店以外にもこの活動を広げていきたいと思っています。居酒屋なら「1 Beer for Asaka」パン屋なら「1 Bread for Asaka」のように地域の方にも多様な選択肢があり、買い物が地域振興に繋がり地域の方がより住みやすい街になっていく。そんな未来をイメージしています。

長くなってしまいましたが、駅ナカという幅広い年代の方が立ち寄る当店で、フェミニズムにあまり馴染みがない方に向けてフェアを行う事はすごく意義があるように思えたんです。

フェミニズムを僕は 「FEMINISM FOR EVERYBODY」 一部の人の思想、活動ではなく、全ての人が自分らしく生きやすい社会を創る為のもの と考えています。 地域、社会、人、仕事等様々なことを考えるきかっけの一つに今回のフェアが多少でもなれば嬉しいです。

Q2.選書で留意した点は何ですか?

今回の選書で一番留意した点は、普段フェミニズムにあまり興味がない人でも関心を持ってもらえるような本を多く入れた点です。

これからの時代にしっくりくるフェミニズムって、いろんな要素が絡んでくるのだと思っています。社会、仕事、生き方などなど。

FEMINISM FOR EVERYBODY 全ての人が自分らしく生きやすい社会を創る為に考えるきっかけになる本。そんな位置づけで選書しました。

(直接的にフェミニストについて書かれた本)

を中心にして

(女性としての強さを感じる本) 『茨木のり子詩集』『好きか、嫌いか、大好きか。で、どうする?

のように分けて考えました。

Chienowa book storeフェミニズムの本フェア選書https://t.co/cfZvPQ5nBb 『青鞜』の冒険 女が集まって雑誌をつくるということ 集英社文庫 @shueishabunko 森まゆみ 2017年03月https://t.co/wONHu9CNwr(谷根千ネット) pic.twitter.com/qMJNc2Ol8f

— 北欧語翻訳枇谷玲子(5/21~Chienowa book storeフェミニズムの本フェア応援中) (@trylleringen) 2018年5月21日

特に当店のようにもともとフェミニズムに関する本の扱いが少ない店では、ゆるやかにフェミニズムにつながる本を大事にします。フェミニズムに詳しい方にはちょっと違うんじゃないと怒られそうですが・・・そんな気持ちも含め選書と読書体験を楽しんで頂ければ嬉しいです。

今当店では企業の中に図書館を作るサービスカフェスペースに設置する本の選書も行っています。 企業の中に図書館を作るサービスの選書内容は、ビジネス書中心というわけではないんです。働く人の福利厚生として位置づけで、ビジネス書、小説、料理書、児童書、コミックなど幅広く選書しています。

カフェでの選書は本の内容に加え、装幀などモノとしての魅力も加味して選書しています。

本は書店、図書館、児童館だけでなく日常的に立ち寄る場所にもっとあっても良いと思います。台北の地下街には無人の図書館があるそうです。

一方で、図書館と出版社、書店の関係は非常に難しい部分もあるのですが、書店の立場からですと、図書館の本の仕入れは地元の書店を通して頂きたいなというのはあります。

実際、当店では、近隣の学校の司書の方が店頭で本を選ばれ当店が納品させて頂く、『高校司書が選ぶイチオシ本フェア』を当店で開催するなどの取り組みをしております。

FEMINISM FOR EVERYBODYフェミニズムは一部の人の思想、活動ではなく、全ての人が自分らしく生きやすい社会を創る為のものと考えています。

地域、社会、人、仕事等様々なことを考えるきかっけの一つに今回のフェアが多少でもなれば嬉しいです。

各地の書店、学校図書館にも広がるフェミニズムの輪

CHIENOWA BOOK STORE以外にも、今回の『北欧に学ぶ小さなフェミニスト』の本や他のフェミニズムの本、女性にスポットライトを当てた本をまとめて並べてくれる書店も出てきている。

はい、どーんと届きました!『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』(岩崎書店)今、この本を売らないわけにはいきません。「世の中の大事なことを決めるのは、どうしてスーツ姿のおじさんばかりなの?」男女差別、不平等、ハラスメント。いつまでそんな事、やってるんですか?https://t.co/cTFCdU4iVnpic.twitter.com/L7CjthamiC — 谷中・ひるねこBOOKS (@hirunekobooks) 2018年5月23日

文教堂書店中山とうきゅう店

小さなフェミニストのための本棚。『世界を変えた100人の女の子の物語』『世界を変えた50人の女性科学者たち』『問題だらけの女性たち』の三冊。わたし自身もフェミニズムとは何か、ちゃんと説明出来ないので、これから勉強しながらコーナーを構築していくつもり。 pic.twitter.com/Xc8H9DC4MD

— 山口将 (@yamaguti_masaru) 2018年4月25日

『北欧に学ぶ小さなフェミニスト』を中心としたフェアを行なう小学校図書館もあるようだ。

次回、後半では、くまざわ書店ペリエ千葉本店磯前大地さん企画のフェアについてお話をうかがう。

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