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1世紀を経てなお進化を続けるアイコン時計、カルティエ「サントス ドゥ カルティエ」

1904年に発表され、11年に市販された「サントス」は、カルティエのみならず、時計業界を象徴するアイコンだ。ではなぜ、このコレクションが今なお第一線にあるのか。それは、本質を変えることなく、完成度を磨き続けたカルティエの姿勢にある。

内外装の進化が可能にしたマルチパーパスなキャラクター

長らく外部からのパーツを組み立てていたカルティエは、2001年の新工場落成を皮切りに、マニファクチュール、つまり自社一貫生産へと舵を切った。同社は、Cal.8000 MCと、そこに加える付加機構の設計を手掛けていたが、生産体制は持っていなかった。技術とノウハウを蓄積したカルティエは、ラ・ショー・ド・フォンに工場を新設。09年には自社製ムーブメントのCal.1904 MCを発表し、翌年からは外装の内製化に着手した。その集大成と言えるのが、18年の新しい「サントス ドゥ カルティエ」である。

カルティエ「サントス ドゥ カルティエ」

2018年に発表された「サントス ドゥ カルティエ」にはふたつのサイズが用意された。こちらはサイズの大きなLMモデル。といっても、ケース幅は39.8mmしかない。簡単にブレスレットやストラップを交換できる「クイックスイッチ」と、ブレスレットの長さ調整が可能な「スマートリンク」システムを搭載する。自動巻き(Cal.1847 MC)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SS×18KYG(縦47.5×横39.8mm、厚さ9.08mm)。10気圧防水。交換可能なカーフスキンストラップ付属。151万8000円(税込み)。他にもMMサイズ(縦41.9×横35.1mm、厚さ8.8mm)のモデルがある。

そのデザインは、1978年の「サントス ガルベ」を受け継いだもの。しかし、カルティエの成熟を反映して、時計としては別物になった。大きな違いはまずムーブメント。汎用のCal.ETA 2892A2を改良したものから、自社製のCal.1847 MCへと置き換わった。歯車ではなく「爪」で巻き上げるマジッククリックにより、自動巻きの巻き上げ効率は大幅に改善され、デスクワークでも十分に巻き上がるようになったのである。また脱進機の素材を変更することで、耐磁性も強化された。

カルティエ「サントス ドゥ カルティエ」クロノグラフモデル

ムーブメントは既存のCal.1904-CH MCをベースにしているが、ワンプッシュに改良されたほか、プッシュボタンは9時位置に移動された。ベゼルは傷の付きにくいADLC処理が施されたほか、インデックスと針にも夜光塗料が塗布される。薄いケースは本作でも不変だ。自動巻き(Cal.1904-CH MC)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約47時間。SS+ADLC(縦51.3×横44.9mm、厚さ12.4mm)。10気圧防水。アリゲーターストラップ(交換可能なラバーストラップ付属)。128万400円(税込み)。

クロノグラフも同様だ。搭載するCal.1904-CH MCは、文字盤側にモジュールを加えたものではなく、カルティエによる一体成型のムーブメント。クロノグラフを作動させても性能の落ちにくい垂直クラッチを持つほか、長期間の熟成でより信頼性を高めた。加えて「サントス ドゥ カルティエ」の美観を邪魔しないよう、ワンプッシュクロノグラフに改められた。

カルティエ「サントス ドゥ カルティエ」スケルトンモデル

マニュファクチュールとなったカルティエが得意とするスケルトンは当然、新しい「サントス ドゥ カルティエ」にも採用された。シチュエーションを問わず使えるモデルだけあって、ケースはSSに変更。また、インデックスと針には、蓄光塗料のスーパールミノバ®️が塗布される。手巻き(Cal.9612 MC)。20石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS+ADLC(縦47.5×横39.8mm、厚さ9.4mm)。10気圧防水。ダークグレーアリゲーターストラップ(交換可能なセミマットダークグレーアリゲーターストラップ付属)。394万6800円(税込み)。

もっとも、より進化したのは外装である。かつてカルティエは外装部品の製造を外部に委託していたが、ラ・ショー・ド・フォンの工場で、まずはケースを、続いてはブレスレットを製作するようになった。結果、「サントス ドゥ カルティエ」は、簡単にブレスレットやストラップを交換できる「クイックスイッチ」と、ブレスレットの長さ調整が可能な「スマートリンク」システムを搭載するようになった。

クイックスイッチも、スマートリンクも、扱いは実に簡単だ。前者はケースの裏側にあるボタンを押すだけでブレスレットやストラップが外れる。後者もブレスレットのコマに内蔵されたボタンを押すだけで、固定するピンが抜け、容易に長さを調整できる。普通、簡単に扱えるものは、取り付け部の精度がゆるめだ。対してカルティエは、一体型のような剛性と扱いやすさを両立したのである。

カルティエの成熟を示すのが、簡単にブレスレットやストラップを交換できるクイックスイッチシステムだ。ケースの裏側にあるボタンを押すと、ブレスレットやストラップがすぐに外れる。ケースとのかみ合わせ部は精密に加工されており、左右に動かしても無駄なガタはほとんどない。

容易にブレスレットの長さを調整できるのがスマートリンクシステムだ。全く新しいシステムではなかったが、カルティエは採用にあたって一層の洗練を加えた。加工精度が高いため、コマに内蔵されたボタンはほとんど分からない。精度を高めることで、全部分解できるブレスレットにもかかわらず、左右の遊びは抑えられた。

進化はまだある。10気圧防水にもかかわらず、ベーシックな「サントス ドゥ カルティエ」のケース厚は、LMサイズで9.4mm、MMサイズでは8.8mmしかない。クロノグラフも、同じ10気圧防水でありながら、厚さはわずか12.4mm。自社で製造するだけでなく、性能を大きく高めたところに、今のカルティエの底力がある、と言えるだろう。

Vincent Wulveryck © Cartier

カルティエ「サントス ドゥ カルティエ」

長年、モノトーンの文字盤を好んできたカルティエ。しかし、近年はさまざまな色にも挑戦するようになった。「サントス ドゥ カルティエ」も例外ではなく、鮮やかなブルー文字盤のモデルも展開されている。自動巻き(Cal.1847 MC)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SS(縦47.5mm×横39.8mm、厚さ9.08mm)。10気圧防水。SSブレスレット(交換可能なネイビーブルーカーフスキンストラップ付属)。99万8800円(税込み)。

「サントス」、その1世紀を超える歩み

今でこそ当たり前になった「腕時計」というアイテム。その在り方を定めたのが、1904年に発表され、11年に市販されたカルティエの「サントス」だった。もちろん、それ以前にも腕時計らしきものはあったが、懐中時計を改造しただけの腕時計が、腕時計というひとつのジャンルとなったのは、「サントス」以降のことである。このモデルが、しばしば「世界初の腕時計」と称されるのは当然だろう。

Archives Cartier © Cartier

「サントス」コレクション生みの親が、起業家にして飛行家のアルベルト・サントス=デュモンである。これは1907年の3月に、パリのサンシールで撮られた写真。自製の15型飛行機に搭乗している。飛行船を操縦する際に使える時計が欲しいという彼の要望は、1904年の「サントス」に結実した。

「サントス」というコレクション名は、依頼主の名前に由来する。ブラジル出身の富豪にして伊達男、そして何よりも飛ぶことが好きだったアルベルト・サントス=デュモンは、飛行船を操縦する際、簡単に時間を確認できる時計を望んだ。というのも、両手で重い操縦桿を支えていた当時のパイロットに、服から懐中時計を引き出す余裕はなかったためだ。彼はその切実な願望を、友人のルイ・カルティエに話した。名門宝石商の三代目に生まれながらも、稀代の新しいもの好きでもあったルイが、サントスの話に触発されたのは言うまでもない。果たして彼は、ケースとストラップを一体化した腕時計「サントス」を完成させたのである。

Vincent Wulveryck, Collection Cartier © Cartier

カルティエ「サントス リストウォッチ」

1911年、サントス=デュモンは自らのために作られた時計を、カルティエが顧客に販売することに同意。同年の2月16日、「サントス」初の量産型がカルティエの販売台帳に記された。写真のモデルは、12年に市販された個体である。同時代の腕時計と一線を画す、ケースと一体化したラグを備えていた。手巻き。18Kゴールド製。カルティエ・パリ製。

「サントス」の新しさは、今までにないケースにあった。あえて時計を四角くすることで、「サントス」の文字盤は大きくなり、視認性が高まった。またストラップを固定するラグは、当時は一般的だったワイヤ状から、ケースとの一体型に改められたのである。あえてひとつにまとめたのは、強い衝撃を受けてもストラップを外れにくくするため。もっとも、飛行機を操縦するためだけでなく、パリの一流レストランでも使えるようなデザインに仕立てあげたのは、ルイ・カルティエのセンスだった。どこでも使える腕時計を目指した「サントス」とは、今や当たり前になった万能時計の先駆け、と言えるかもしれない。

そんな「サントス」は、1978年の「サントス ガルベ」でカルティエのメインコレクションに返り咲き、以降ラインナップを増やしていった。シーンを選ばず使える性格を強調した新しい「サントス ドゥ カルティエ」。対して「サントス」の持つエレガンスさを打ち出したのが、「サントス デュモン」だ。

サントスのいわば原点回帰「サントス デュモン」

© Cartier

カルティエ「サントス デュモン」

初代「サントス」の精神を今に受け継ぐモデル。7.3mmという非常に薄いケースと、ドレスウォッチとスポーツウォッチを折衷させたディテールを備える。搭載されているのは新規開発されたクォーツ。バッテリー寿命が6年もあるため、普段使いに最適だ。クォーツ。SS(縦43.5×横31.4mm、厚さ7.3mm)。3気圧防水。ネイビーブルーアリゲーターストラップ。54万4500円(税込み)。他にも小径のSMサイズ(縦38×横27.5mm、厚さ7.3mm)のモデルがある。

1980年代以降、「サントス」が持つもう一面を打ち出してきた「サントス デュモン」。マニュファクチュールとしてカルティエが成熟するに伴い、このコレクションも大きく進化を遂げた。2019年にリリースされたのが、クォーツを搭載したモデルである。ケース厚は「サントス ドゥ カルティエ」よりさらに薄い7.3mm。また、新規開発のクォーツムーブメントは、6年ものバッテリー寿命を持つ。もちろん、ケースはカルティエの自社製だ。

1904年に発表された「サントス」の特徴が、ケースと一体成型されたラグにある。その伝統は、最新の「サントス デュモン」も同じだ。自社製のケースは角が立ち、面もよりフラットになった。ケースサイズに比べてラグが短いため、時計の装着感は極めて優れている。

加えて22年には、手巻きモデルもレギュラーコレクションに追加された。搭載するのは薄形ムーブメントの傑作として知られるCal.430 MC。しかし、これは過去の「サントス デュモン」のリバイバルではない。なんとこのモデルのケースに対して、カルティエは色を施したのである。ケースの一部が黒く見えるのは、ケースの一部がツヤのある黒いラッカーで塗装するため。最新のスポーツウォッチを思わせる色使いだが、あえてツヤを残すことで、本作はむしろタキシードに映える時計となった。ちなみに、外装にラッカーを埋め込んだ時計は過去にも存在する。しかし、カルティエのような老舗で、こういった試みを行った例は極めて珍しい。自社で製造するケースの質に、絶対の自信があればこその試みだろう。

© Cartier

カルティエ「サントス デュモン」

2022年に新しく加わった機械式モデル。黒い外装は、ケースの一部を彫り、そこに塗料を流し込むシャンルベという技法で仕上げられたもの。色を流し込み、乾燥させた後に磨くことで、ケースの表面は極めて滑らかになる。薄い手巻きムーブメントの採用により、ケースの厚さは7.3mmに留まった。手巻き(Cal.430 MC)。18石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(縦 43.5mm×横31.4mm、厚さ7.3mm)。3気圧防水。ブラックアリゲーターストラップ。予価81万4000円(税込み)。

しばしば、その歴史の長さが注目される「サントス」コレクション。しかし、より意味を持つのは、「サントス」のたゆまぬ進化だ。シチュエーションを問わず使用できる時計として製作された「サントス」は、その本質を変えることなく、時代に応じて変わり続けてきた。なぜ「サントス」が、カルティエのみならず、時計業界のアイコンであり続けるのか。最新の「サントス」を手にすれば、理由は言わずと分かるに違いない。

奥山栄一:写真 Photographs by Eiichi Okuyama
広田雅将(クロノス日本版):文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

このコンテンツは「クロノス」からの転載です。

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