武漢に単身乗り込み取材の市民ジャーナリスト・陳秋実さんが連絡取れない状態に。検査名目で隔離の情報も

武漢の現場を動画でリポート。検査体制の不足などを訴えていた。

新型コロナウイルスによる肺炎の感染が広まっている問題で、中国・武漢市に単身で乗り込み取材を続けていた市民ジャーナリスト・陳秋実(ちん・しゅうじつ)さんの連絡が途絶えている。

陳さんは入院患者らが収容されている医療施設の様子などを動画に収め、YouTubeやTwitterで発信していた。友人らによると、検査の名目で隔離された可能性もある。

陳秋實さんのYouTube動画より
陳秋實さんのYouTube動画より
陳秋實さんのYouTube動画より

■現地の動画を投稿

陳秋実さんが武漢に入ったのは1月24日。以前は弁護士を名乗っていたが、動画内では「市民ジャーナリスト」を名乗り、武漢の感染拡大が収まるまで現場に留まり、現状をレポートするとしていた。

また自身が感染するリスクについて「その時は自分の命です。たとえ病死しようとも武漢を離れません」と語っていた。

陳さんはその後、相次いで動画を投稿。現地の病院を取材し、治療を待つ人でごった返す様子などを伝え「少なくとも2人分の死体が廊下から見られた」などと証言していた。

陳さんが撮影した病院の様子
陳さんが撮影した病院の様子
陳秋實さんのYouTube動画より

1月末ごろに投稿した動画では、病院内部や医師らへ直接取材ができないことを嘆いたほか「元が小さなケーキでは分けようがない」などと検査体制の不足を訴えていた。また、自身が呼吸しにくくなっていることに触れ、涙ながらに「死ぬのは怖くない。共産党を恐れてなるものか」と叫んでいた。

そのほかにも、関係者が多く感染した海鮮市場や、感染者を収容するため急ピッチで進む病院建設の現場などを訪れていた。

■強制隔離か

陳さんが支援者らと連絡が取れなくなったのは2月6日。支援者は陳さんのTwitterアカウントを通じて情報提供を呼びかけていた。

その後、陳さんの友人で、格闘家の徐暁冬(じょ・ぎょうとう)さんは陳さんの両親から得た情報として「多くの病院を訪れ、感染の危険があるため強制的に隔離された。携帯は没収された可能性がある」と説明している。この時、陳さんは発熱していなかったという。

徐さんは、陳さんは14日間の隔離ののち、感染が認められなければ解放されるはずだとし「14日で解放されなければ事態を重く見る必要がある」としている。

陳さんは北京で弁護士活動をしていた2019年8月、香港デモの現場を訪れ、今回と同様に動画で現地をリポートしていた。しかしその際も所属事務所などに当局から圧力がかかり、急遽北京へ戻ったところ一時行方不明になっていた。

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