これからの経済
2019年10月19日 12時00分 JST | 更新 2019年10月19日 16時19分 JST

ウィーチャット(微信)が手にした“スーパーアプリ”の座。月11億人が集まる秘訣は「1つで何でもできる」便利感

動画と記事で中国アプリを読み解く「中華アプリから覗く経済」。中国のビジネスや生活に欠かせない「ウィーチャット(微信)」を解説します

ハフポスト日本版では、中国のアプリ事情に詳しい専門家の解説を元に、スマホアプリを通じて中国経済を読み解いていきます。

第2回目は、深圳に拠点を置く巨大IT企業、テンセント(腾讯)のチャットアプリ「ウィーチャット(微信)」です。

まずは、1分動画をご覧ください。

■そもそも、ウィーチャットとは

ウィーチャットは中国で圧倒的な知名度を誇るチャットアプリ。仕様がLINEに似ていることから、しばしば「中国版LINE」とも呼ばれるが、アプリの開始時期はウィーチャット(2011年1月)の方がやや早い。

元々、開発元のテンセントが運営していたのは「QQ」というメッセンジャーアプリだ(QQは今も健在)。これはテンセントの創始者・馬化騰(ポニー・マー)がイスラエル発のチャットアプリ「ICQ」をモデルにしたもので、1999年にローンチされると人気が広がっていき、やがて中国人の生活インフラの一つとして定着した。

しかしその後、新浪(シンラン)ウェイボーといった他社製のミニブログが出現し、オンライン上でのコミュニケーション方法に変化の兆しが現れた。テンセントはこうした流れを受け、スマホで連絡を取り合い、なおかつユーザーが自分の日常を発信できるツールの開発を決意。完成したのがウィーチャットだった。

ウィーチャットは今も利用者数が順調に増加している。テンセントの公表資料によると、2019年6月末時点で、月間のアクティブユーザー数は約11億3200万人だ。なぜここまで成長が続くのか。ウィーチャットの機能とともに見ていく。

■ウィーチャットペイが一気に普及

「中国はキャッシュレス決済が進んでいる」というニュースも増えてきた。このキャッシュレス化を支えているのが、ウィーチャットの一機能「ウィーチャットペイ」だ。QRコードをかざすだけで決済でき、今やコンビニやタクシーの車内など、生活のほぼ全ての場面にキャッシュレス決済が広まっている。

時事通信社
ウィーチャットペイ(イメージ)

ウィーチャットペイがシェアを伸ばしたきっかけの1つが「お年玉大戦」だ。中国ではお年玉を包む袋を「紅包(ホンバオ)」と呼ぶが、アプリ上でお年玉を送ることができる「紅包機能」を実装。年末の大型番組とタイアップし、電子マネーを獲得できるキャンペーンを張るなどし、一気にシェアを獲得したのだ。

この機能は中国人の商習慣にもマッチした。上海でアプリなどの開発に携わった経験を持つクロスシーの又村深・執行役員「忘年会や新年会で、経営者や上司が従業員に金一封を配る文化が中国にはありました。ウィーチャット上で電子マネーの紅包をもらうためにはウィーチャットペイを開通する必要がある。そして、お金をもらったら使いたくなるので、電子マネー決済を体験する。使う体験をさせる足がかりとしては非常にいい戦略だった」と解説する。

 ■ミニプログラムとは?

ウィーチャットの特徴の1つが「ミニプログラム」という機能だ。中国語では「小程序(シャオチャンシュー)」。これはウィーチャットのアプリ上で使用できる簡単なプログラムのこと。

フードデリバリーや配車サービスなど、テンセントが出資した企業などのサービスはもちろん、動画サイトの閲覧なども可能。支払いが必要な場合、そのままウィーチャットペイのアカウントから払えるのが便利だ。

しかも、ミニプログラムはインストール不要なので、アプリの容量や更新は気にしなくても良い。1つのアプリで多くの用事が済んでしまう利便性から、ユーザーがウィーチャットを使用する時間が圧倒的に伸びた。このように、1つのアプリ内で複数のサービスを統合し、送客できることから、ウィーチャットは「スーパーアプリ」と呼ばれる。

又村さんはミニプログラムについて「基本的には、ウェブサービスと作りも内容もほぼ同じです。あくまでウィーチャット内で動くものなので、基本的には(利用したいサービスの)公式アカウントをフォローするようなイメージです」と解説する。

ミニプログラムは、日本企業も商機を見出している領域だ。例えば、化粧品メーカー「資生堂」は多機能な会員カードとしての役割を持たせている。資生堂のミニプログラムからクーポン券がもらえるほか、サロンの予約なども可能だ。

資生堂のミニプログラム画面

又村さんの元にも、ミニプログラムを通じて集客やブランドの浸透を目指す企業からの問い合わせが来るという。

又村さんは現状について「ミニプログラムは、アカウントさえ持っていれば誰でも提供できるのが大きい。日本企業がミニプログラムを提供するのはトレンドになっています。会員カード機能のほか、リッチな情報発信をしたいというお客様もいらっしゃいます」と話している。