最近、中国の人権はどうなっている?! 内側から湧き上がる声が国際社会を動かす

中国国内では人権擁護運動が確実に盛り上がっています。これは、他国が干渉しているからではありません。

アムネスティ・インターナショナル 国際事務局東アジア地域事務所所長ニコラ・ベクラン ©Amnesty International

去る3月12日、東京・水道橋で開催されたアムネスティ・フェスティバルで、アムネスティ国際事務局東アジア地域事務所のニコラ・ベクラン所長が「最近、中国の人権はどうなっている?!」と題した講演を行いました。人権をめぐる中国の実情をぎゅっとつめこんだこの講演を、ご紹介します。

■ 中国は国連の常任理事国 それなのに...

国連安全保障理事会の常任理事国でもある中国は、多くの国際人権条約を批准しています。しかし最新のアムネスティ・レポート(年次報告書)2015/16に見られるように、中国は多くの人権問題を抱えています。

例えばノーベル平和賞受賞者であり「良心の囚人」の一人でもある劉暁波氏は懲役11年の刑を受けています。彼の妻である劉霞氏は起訴されていないにもかかわらず、監視され自由に外出することができません。

昨年7月以降、拘禁・逮捕された弁護士や人権活動家の人数は約250人にものぼり、現在アムネスティ日本では釈放を求める署名をオンラインで集めています。

その他、新疆ウイグル自治区やチベット自治区では宗教活動や母語の保護活動が厳しく取り締まられています。高度な自治権を持つとされる香港でも、最近では書店員の失踪事件に見られるような自由の抑圧の動きがあります。

このような中国の人権問題について憂慮する12カ国が、国連で共同声明を発表しました(2016年3月10日)。この12カ国の中には今まで声を上げることの少なかった日本も加わっており、これは評価に値することだと思います。

■ 盛り上がる中国国内の人権擁護運動

中国の人権状況が厳しいことは確かです。しかし今日お伝えしたい一番大事なことは、中国国内では人権擁護運動が確実に盛り上がっているということです。これは、他国が干渉しているからではありません。中国の人びとが自発的に人権を守ろうと努力しているのです。そしてそのために彼ら/彼女らは、拘禁、拷問など、多くの犠牲を払っています。このような人びとの支援をし、声を上げることはわれわれの道義的な責任なのです。これこそがアムネスティの使命です。

■ 中国の法律でも認められない人権侵害が起こっている

中国は、拷問等禁止条約、女性差別撤廃条約、人種差別撤廃条約、自由権規約など多くの国際人権条約を批准ないしは署名しています。人権侵害の訴えに対し、中国政府はしばしば、それは中国の法に則っており合法だと主張します。しかし中国が法治国家であると自負するならば、これらの国際人権条約に違反していないかもよく確認すべきです。

そしてさらには、中国の法律でも認められない、政府の役人の行為によって起こる「法律によらない人権侵害」も依然として存在するということを忘れてはいけません。

■ 拷問は中国法でも禁止されている

例えば、中国の法律でも拷問を明確に禁じています。しかし実際には、アムネスティが最近、国連の拷問禁止委員会に提出した提言書にもあるように、被拘禁者に対する拷問や自白強要は日常茶飯事で、人権活動家を弁護する弁護士が拷問されたケースも報告されています。

■ 死刑執行数が国家機密である理由

中国では毎年数千名が死刑執行されており、その数は中国以外の他の国々の死刑執行人数の合計よりも多いのです。法律上、死刑は認められていますが、その数は国家機密とされているのは何故でしょうか?

実は中国では死刑が執行された人の身体から臟器を取り出し、それを臓器移植に使用するということが行われています。中国政府は、このようなことはやめると、これまでも何回も言明しているのですが、なかなかやめられないようです。このことも、中国国内での死刑執行数を国家機密としている理由の一つだと思われます。

■ 「法の支配」

土地の強制収用や立退き、粉ミルクにかさ増しのためにベビーパウダーを入れる事などは、明らかに中国の法にも違反する行為ですが、そのことを告発するとひどい嫌がらせを受け、場合によっては逮捕されてしまいます。これらは中国国内で「法の支配」という意識が欠如しているために起こっているのではないでしょうか。

現在の中国は「法の支配」を確立するには程遠い状況にあります。しかし、人権保護のため、「法の支配」のために闘っている人びとが実際にいるのです。彼ら/彼女らは、政府や大企業も中国が定めた法律を正しく守ることを要求し、多大な犠牲を払いつつも確実に成果を出しています。

現在の中国では、中国共産党を批判するだけで国家を脅かすものと判断されてしまいますし、結社の自由もありません。独立した人権団体の設立が認められたこともありません。それどころか、人権活動家を懲らしめ罰し続けているのです。中国ではアムネスティのような人権団体は違法団体に認定され、私のような講演をするような人はすぐに捕まってしまうでしょう。

現在、習近平主席の下で今までにない数の人権活動家が逮捕されています。しかし、政府が脅威を感じるほど、こうした人権活動家の訴えが、多くの中国の人びとの間で共感を得ているということも、また大きな事実なのです。

■ 私たちは声を上げるべきか

今まで国際社会では、「中国の人権侵害についてうるさく言わないほうが良い」「経済状況が良くなれば人権状況も改善されるのではないか」などと言ってきましたが、それは大きな間違いです。現在の中国は世界的な経済大国となった一方で、今までにないほどの人権侵害が行われています。だからこそ人権侵害について大きな声を上げなければならないのです。中国国内で大きなリスクを抱えながらも、それに負けずに活動している人権活動家に対してもっと支援をすべきなのです。

私は中国で1000人近い人権活動家と話す機会がありました。そのたびに私は彼ら/彼女らに「あなたたちの活動に対して我々は声を上げるべきか、黙るべきか」と問いかけてきました。それに対しての回答はいつも同じでした。

「もちろん声を上げていただければ、こんなにありがたいことはありません」。

中国には彼ら/彼女らのような勇敢な人権活動家がいるのに、私たちが何もしないということはあり得ません。

■ 中国の人たちに連帯する活動を

「この地球上の生まれた場所にかかわらず、人権が尊重されなくてはならない」。

中国でもそう考える人びとが増えています。そのような中国の人たちに世界中の人たちは連帯しようではありませんか。アムネスティの会員になったり、アムネスティのキャンペーンに賛同するなど、何らかの活動を通して彼ら/彼女らを支援してほしいと思います。

(アムネスティ・インターナショナル日本)

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アムネスティ日本では、中国の弁護士への弾圧について、2015年7月に引き続き、オンラインの署名活動を行っています。拘束されている弁護士・活動家への不当な扱いをやめさせ、人権活動が理由で拘束されていることがないよう、今すぐ、あなたのご協力をお願いします!

署名:塀のなかで迎えた40歳の誕生日―終わらぬ、中国の人権派弁護士・活動家への弾圧

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