高齢者が支える経済――『大脱出』―宿輪純一のシネマ経済学(24)

シルヴェスター・スタローン(67歳)とアーノルド・シュワルツェネッガー(66歳の)の二大超ベテランが共演した"アメリカン"アクション映画。洋上にあるタンカー型監獄からの脱獄がテーマ。日本題がかつての名作『大脱走』(1963年)とダブるのは筆者だけだろうか。

『大脱出』(2013年米国:『Escape Plan』)

シルヴェスター・スタローン(67歳)とアーノルド・シュワルツェネッガー(66歳の)の二大超ベテランが共演した"アメリカン"アクション映画。洋上にあるタンカー型監獄からの脱獄がテーマ。日本題がかつての名作『大脱走』(1963年)とダブるのは筆者だけだろうか。

トップランクのセキュリティーコンサルタントであり、自らが設計した巨大監獄からの脱出を企てる男をスタローンが、彼の前に立ちはだかる囚人のボスをシュワルツェネッガーが演じる。はっきり言って、年齢を感じさせない激しいアクションが見どころ。近未来の話であるがSFではない設定で、陸から離れた海上に存在する、通称墓場と呼ばれる"タンカー"監獄がそのメインの舞台。シルヴェスター・スタローン演じるブレスリンは、世界でもトップレベルのセキュリティーコンサルタント。ある日、身に覚えのない罪で捕まり投獄。ブレスリンは自らが設計に携わったこの監獄から脱出することを決意。対するアーノルド・シュワルツェネッガー演じるロットマイヤーは囚人たちのボスで、当初ブレスリンの前に立ちはだかるが、一緒に行動する・・・・。かなりアメリカンなアクション映画である。

スタローン(Sylvester Gardenzio Stallone)は米国ニューヨーク出身で、イタリアのシチリア系移民の子。いろいろあってポルノ映画等にも出演し長い下積みを送る。モハメッド・アリの試合にインスパイアされて、三日間で『ロッキー』(76年)の脚本を書き、自身の主演を条件に売り込んで大ヒット、その後、一時落ち込むも復活。たまに日本にも来るが、この歳でこのムキムキは驚き。作品ではシリーズものでは『ロッキー』と『ランボー』を持っており、それぞれ、6本と4本ある。作品数は非常に多い。一方、シュワルツェネッガー(Arnold Alois Schwarzenegger)はオーストリア第2の都市グラーツ出身。幼いときは病弱で、15歳でボディビルを始め、20歳でミスター・ユニヴァースに。82年『コナン・ザ・グレート』で注目を集め84年『ターミネーター』が大ヒットし4作のシリーズに。俳優出身ではレーガンに続き2人目のカリフォルニア州知事も就任。知事の期間には、さすがに出演作品は少なかったが、こちらも多い。日本でも「シュワ」ちゃんとして人気がある。監督は『シャンハイ』などのスウェーデン出身(最近、米国映画では海外出身が多くなってきた)のミカエル・ハフストローム。

この2人は米国映画界のトップスターであるが、67歳と66歳と高齢者に入り、日本では年金受給年齢を超えている。でも映画界では大活躍である。しかもアクション映画である。これは素朴にすごいと思う。

日本の経済規模を示すGDP(国内総生産)の個人消費の割合は約6割で、そのうち60歳以上の消費(シニア消費)がその約5割に近い。株式等の有価証券の約7割を保有。日本経済の中心は高齢者なのである。しかし、彼らは勤労という意味での経済の中心ではなく、消費であり財産を使って消費している。逆に若い世代の消費はそれほど伸びていないことが気になる。少子高齢化の流れと経済の成熟化の2つの流れは止まらない。人口増加の面では、出生率を上げるか、移民を増やすというのが主たる解決策だがなかなかうまくいかない。移民はすぐに労働人口になるのであるが、日本では移民受入政策はやや抵抗感があるようである。ちなみに、筆者の海外駐在や国際業務の経験からいうと、国際化という観点からは、色々な意味で早いうちからある程度外国の方に慣れておいた方が良いとも感じるが。

「宿輪ゼミ」

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたにも分かり易い講義は定評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。まもなく150回を迎え、2014年4月で9年目になります。

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