コールドブリューコーヒーはどうしてホットブリューと味が違うの?ただの冷たいコーヒーではなかった

温度以上に奥深い違いがありました
コールドブリューラテ
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コールドブリューラテ

近年人気のコールドブリューコーヒー。

自宅でこのコーヒーを作ろうとした人の中には、温かいコーヒーを冷ます、もしくは氷の上に温かいコーヒーを注いでも、コールドブリューにはならないと気づいた人もいるのではないだろうか。

ホットブリューとコールドブリューコーヒーの明らかな違いは温度と味だ。

しかしその違いはもっと奥深い。研究者たちは今、この二つのコーヒーの化学的な違いを調べ始めている。

アメリカのトーマス・ジェファーソン大学で化学を教えるニニー・ラオ教授は、コールドブリューは比較的新しいトレンドであり、ホットブリューほど研究されていないと話す。

ラオ氏は同僚のメーガン・フラー氏と、コールドブリューの研究をしている。きっかけは、自分でうまくコールドブリューを作れなかったことだったという。

「自分でコールドブリューを作ってみようとしたのですが、なかなかうまくいきませんでした。そこでフラー博士を説得して、コールドブリューを作るときに何が起きているのかを一緒に調べることにしたのです」

ふたりは、コーヒーの抽出方法やコーヒー豆の焙煎方法が、カフェインや酸味、そして出来上がったコーヒーに含まれる抗酸化特性へのどう影響するかを調べ始めた。

コーヒーは科学だ

「コーヒーの抽出はとても複雑なプロセスです。コーヒーそのものがとても複雑な飲み物なのです」とラオ氏は話す。

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スペシャルティコーヒー協会の主席研究官でコーヒー科学財団エグゼクティブ・ディレクターのピーター・ジュリアーノ氏も、「ほんの少しの科学の知識で、自宅で作るコーヒーの味がぐんと良くなります」と述べる。

コーヒー科学財団はコールドブリューコーヒーメーカーのToddyと共同で、コールドブリューの化学的、知覚的な一面を調べる研究プロジェクトを立ち上げた。

「水の温度や挽いた豆の大きさ、抽出の時間、フィルターのタイプなど、コーヒーの抽出に関するすべての要素が味に影響を与えます」とジュリアーノ氏は話す。

抗酸化物質を多く含むのはどっち?

国際食品情報協議会のメーガン・メイヤー氏によると、コーヒーにはポリフェノールの一つであるクロロゲン酸など、多くの抗酸化物質が含まれている。

クロロゲン酸には抗糖尿病や抗がん、抗炎症の効果があるとされ、いくつかの慢性疾患のリスクを下げることが過去の研究からわかっている。

この抗酸化物質についていえば、コールドブリューとホットブリューのどちらに多く含まれているのだろう。

2018年に学術誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された研究によると、ホットブリューだ。

コーヒー豆の焙煎方法も、抗酸化物質の量に影響を与える。

ラオ氏たちの最新研究によると(まだ発表されていない)、浅煎りの豆を使ったのホットブリューとコールドブリューでは、含まれる抗酸化物質の量はほとんど変わらなかった一方で、深煎りの場合、ホットブリューにより多くの抗酸化物質が残っていた。

これだけで、ホットブリューがコールドブリューに比べて健康に言えるわけではない。しかし抗酸化物質が摂りたくてコーヒーを飲むのであれば、深煎りの豆を使ったホットブリューがお勧めかもしれない。

熱は苦味と酸味をうむ

その一方で、苦味や酸味が苦手な人は、コールドブリューを好むかもしれない。

スタンプタウンコーヒーで、教育&トレーニングディレクターを務めるエミリー・ローゼンバーグ氏は、「クロロゲン酸は苦味に影響を与える」ハフポストUS版の過去の取材で語っている。

コーヒー豆をローストすると、コーヒー豆に含まれるクロロゲン酸は、キナ酸とコーヒー酸という強い苦味と渋味を含む酸にわかれる。

豆に長時間熱を加えれば加えるほど、この二つの酸が作られて苦味や渋味が増す。それはつまり、同じ豆から抽出されても、ホットブリューはコールドブリューに比べてより苦味や渋味、酸味が強くなるということでもある。

また、コールドブリューの方が酸味が少ないことを示す科学的な調査結果もある。

ラオ氏の研究では、ホットブリューとコールドブリューのpHレベルは4.85〜5.13(0が最も酸性が強く、7が中性)とほぼ同じだった一方で、ホットブリューにはより高い濃度の酸性が含まれていた。

また、豆のロースト方法に関して言えば、深煎りの方が浅煎りに比べて酸性度が低かったとラオ氏は話す。

苦味や酸味が少ないコールドブリューには、胸焼けや消化の問題を引き起こしにくいという利点がある。

「もし酸味が少ない方を飲みたいのであれば、深煎りした豆のコールドブリューがいいかもしれません」とラオ氏は言う。

カフェインのレベルはほとんど一緒

カフェインについても見てみよう。コーヒーにはどのくらいのカフェインが含まれているのだろうか。

メイヨー・クリニックの研究では、8オンスカップのコーヒーには96mg、1オンスのエスプレッソには64mgのカフェインが含まれていた(カフェイン含有量はコーヒーのブランドや種類によって大きく変わる)。

メイヤー氏によると、1日あたりのカフェインの適度な摂取量は400mg、コーヒーではカップ3〜4杯だ。

カフェインの量は、コーヒーのいれ方より、コーヒーと水の割合に左右される。水の量が少ないエスプレッソには、多くのカフェインが含まれる。
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カフェインの量は、コーヒーのいれ方より、コーヒーと水の割合に左右される。水の量が少ないエスプレッソには、多くのカフェインが含まれる。

適度な量のカフェインは、心や頭、身体能力を研ぎ澄ますとメイヤー氏は話す。その一方で、取りすぎは頭痛や不眠、不安、消化不良などの問題を起こす可能性がある。

カフェインの割合を決めるのは、コーヒーと水の割合だとジュリアーノ氏は言う。水が少ないほど、カフェイン量は多い。

「エスプレッソとドリップコーヒーの違いを考えてみてください。それぞれ1杯に含まれているカフェイン量はほぼ同じですが、同量に含まれるカフェイン量を比べると、エスプレッソにかなり多く含まれています」

ホットブリューとコールドブリューの抽出方法の違いが、カフェイン量に大きな影響を及ぼすことはない。その一方で、抽出の時間はカフェインや酸、抗酸化物質の量に影響を与える。

2017年にサイエンティフィック・リポーツに掲載された研究によると、中煎りと深煎りの豆を使ったコールドブリューコーヒーでは、カフェインのほとんどが400分後に抽出された。

ロースト方法について言えば、ラオ氏はローストの仕方の違いによるカフェイン量の違いはほとんどない、と話す。

「粉と水の比率を考えると、コールドブリューの方が多くのカフェインを摂取できるかもしれません。しかしそれは、コールドブリューの方がホットブリューより多くのカフェインを含んでいるからではありません」

コーヒーの科学を知って、より美味しい一杯をいれよう

水と粉の割合は、コーヒーの濃度や味にも影響を与える。だから自宅で理想のコーヒーを見つけるためには、粉の量や水の量を変え、異なる抽出方法を試してほしいとジュリアーノ氏は勧める。

「自宅でコーヒーを作るときに一番やってしまう失敗は、粉の量が足りないことだと思います」

ジュリアーノ氏によると「ゴールドカップスタンダード」と呼ばれる理想のホットブリューコーヒー抽出の基準は、18オンス(510cc)の水に対して1オンス(28.4グラム)のコーヒーだ。

コールドブリューの場合、コーヒー科学財団はまだ理想の割合を探している最中だが、ニューヨークタイムズは、1杯作る場合の割合を、カップ3分の1の粉に対して1.5カップの冷水としている(アメリカは1カップが約237cc)。

もっとたくさん作りたい場合は、料理サイトThe Kitchnが参考になるかもしれない。同サイトには、スターバックスと同じ8オンス(226.8グラム)の粉に対して8カップ(1920cc)の水を使うように書かれている。

ラオ氏は、定期的に自宅でコーヒーを作るのであれば、粉の量をきちんとはかって自分の好みの割合を記録すること、そして抽出の科学を知ることを勧める。

「コーヒーにどのような物質が含まれているかを知ると、知的そして化学的に自分が好きなコーヒーを作ることができます」

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。