「COP26」の焦点は?「人類にとってのターニングポイント」とも評される気候変動対策の国際会議が開かれます

イギリスのグラスゴーで10月31日、気候変動対策を話し合う国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開幕します。

気候変動対策を話し合う国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が10月31日、イギリス北部のグラスゴーで開幕します。約200の国と地域が参加する予定です。

COP26は、議長国イギリスのジョンソン首相が9月の国連総会で「人類にとってのターニングポイントになる」と呼びかけたように、気候危機の行方を左右する重要な国際会議です。

COP26について、押さえておきたいポイントは?また、日本にとってはどんな意味を持つのか?専門家に聞きました。

ベルギーの首都ブリュッセルでは10月10日、COP26に向けて、気候変動対策を訴えるデモ行進が行われた
ベルギーの首都ブリュッセルでは10月10日、COP26に向けて、気候変動対策を訴えるデモ行進が行われた
Yves Herman via Reuters

そもそもCOPとは?

1992年、国連で「気候変動枠組み条約(UNFCCC)」が採択され、すべての国連加盟国が気候変動対策に世界全体で取り組んでいくことに合意しました。これに基づいて、1995年からほぼ毎年開かれているのが「国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)」です。COP26は、その名の通り、26回目の会議となります。

2015年にフランスで開催されたCOP21では、2020年以降の気候変動対策の国際的な枠組み「パリ協定」を採択。世界の平均気温上昇を産業革命前から2度未満、できれば1.5度に抑えることが掲げられました。それに伴い、すべての国は2015年以降、温室効果ガスの削減目標を5年ごとに見直し、国連に提出しなければならないと定められました。

パリ協定採択から5年目となるCOP26は2020年に開催予定でしたが、新型コロナの影響で1年延期。したがって、今回のCOP26は、各国が更新した目標をもとに、世界全体の削減計画が協議される初めての場となります。

パリ協定が発効した2016年11月16日、フランス・パリのエッフェル塔には「パリ協定が発効された」とライトアップされた
パリ協定が発効した2016年11月16日、フランス・パリのエッフェル塔には「パリ協定が発効された」とライトアップされた
Chesnot via Getty Images

温室効果ガス削減の「強化」が打ち出せるかが焦点

COP26では何が注目ポイントとなるのでしょうか?

国際NGO「WWFジャパン」の気候エネルギー・海洋⽔産室⻑の⼭岸尚之さんは「温室効果ガス削減目標を強化していくというメッセージが打ち出せるかどうかが最大の焦点」と話します。

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、世界の平均気温上昇を「1.5度」に抑えるためには、主要な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の排出量を2030年までに10年比で45%減らすことが必要とされています。

しかし、国連気候変動枠組み条約事務局は9月、各国の削減目標を分析した結果、今の目標のままだと2030年の排出量は10年比で約16%増えると発表。パリ協定の目指す水準には到底届かないとし、さらなる排出削減を強く呼びかけています。

山岸さんは「次に各国に削減目標の見直しが求められるのは2025年ですが、COP26の決定文書で『2025年の目標を待たずして各国に目標を引き上げを要請する』など削減目標の強化が盛り込まれるかが勝負どころです」と指摘します。

しかし、合意にはすべての締約国の賛同を得ることが必要です。合意にこぎつけるためのポイントはどこにあるのでしょうか。

山岸さんは、先進国がいかに途上国との溝を埋められるかが鍵を握ると見ます。

「途上国には『気候変動を招いてきた先進国が率先して対策をしなければならないのに、それが不十分な状況でなぜ自分たちにも同じ目標が課されないといけないのか』という主張があります。また、先進国は途上国に対して、2020年までに官民合わせて年間1000億ドルを供与することを約束していましたが、動員額は2019年時点で800億ドルにも達していません。COP26では2025年以降の資金動員も議題とされますが、この交渉の進展が、排出削減交渉にも関わってくる可能性があります」

COP26、日本にとっての意味は?

石炭火力発電所のイメージ
石炭火力発電所のイメージ
Schroptschop via Getty Images

COP26は日本にとってどんな意味を持つのでしょうか。

山岸さんは、日本が温室効果ガスを2030年までに13年度比で46%削減し、50%の高みに挑戦するという目標を打ち立てたことは国際社会から一定の評価はされるとしつつ、脱石炭に踏み切れていない点で批判の矢面に立たされる可能性があると指摘します。

議長国のイギリスはCOP26を前に「先進国は2030年まで、発展途上国は2040年までの石炭火力発電の廃止」を呼びかけましたが、日本は応じていません。10月に閣議決定したエネルギー基本計画では、2030年時点でも、電力の19%を石炭火力発電でまかなうとしています。

山岸さんは日本の脱炭素の遅れを次のように指摘。

「COP26では、デンマークやコスタリカなど一部の国々が“Beyond Oil and Gas Alliance”(=脱石油・ガス同盟)を発表する見込みです。国際社会はすでに『石炭は撤退して当たり前、次はいかに石油や天然ガスからの撤退を進めていくか』という議論に入っています」

その上で、COP26に出席する岸田首相と山口環境相に対して、こんな期待を寄せます。

「COP26では、日本国内での議論とはまるで違うレベルのプレッシャーを感じられると思います。日本の脱炭素に向けられる国際社会の視線の厳しさを感じて帰国して頂くのが非常に大事だと思います」

岸田文雄首相
岸田文雄首相
Anadolu Agency via Getty Images

炭素クレジットの取引に関するルールも話し合われる

COP26では、排出削減目標だけではなく、その他にもいくつもの重要テーマが議論されます。

そのうちの一つが、「市場メカニズム」(パリ協定第6条)のルール作りです。他国で削減された二酸化炭素排出削減量(炭素クレジット)を自国の削減量に算入する際に必要となります。パリ協定で詳細なルールについて合意に至らず、積み残されていました。

COP26では、削減実績の⼆重計上(ダブルカウンティング)を防ぐ仕組みをいかに作るかや、京都議定書のもとで得た過去の炭素クレジットをパリ協定に持ち越せるか、などの争点が話し合われます。

自社の排出量削減のため、産業界の一部からも炭素クレジットの取引に関するルール成立への期待は大きい一方、炭素クレジットの購入に頼った排出量削減には慎重な声もあり、COP26でどこまでの合意に至るかが注視されています。

10月1日にイタリアの都市ミラノで行われた気候ストライキ
10月1日にイタリアの都市ミラノで行われた気候ストライキ
Flavio Lo Scalzo via Reuters

注目記事